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地道な仕事

 昼休みになったのでルーファスに俺は最近始めた内職の成果を渡す。

 ルーファスの実家が持っている店の仕事らしい。原稿を一通り読んで栞の入っている場所の状況を想定した絵をペン画で描くだけの簡単な仕事だ。

 ペン画なら三十分で描けるし、場面を想定するのがちょっと難しいが慣れれば何とかなる。

 そんなわけで十枚ほどのペン画と、預かっていた原稿をルーファスに返す。

「ご苦労様、締め切りを守る良い子で結構なことで」

 そんなことを口走りながらルーファスは原稿と絵を確認する。

「それじゃ、報酬は明日払います。多分描きなおしはないと思いますよ」

 仕事になるとルーファスは途端に丁寧な口調になる。将来のため友達だってビジネスライクに付き合うのだという。

 短時間でなおかつこちらの経費も少なくてまとまった金が入るこの内職は俺としてもありがたいので。あほらしくてもそれに付き合う。

 受け取った金は普段は鍵付きのクローゼットにしまっておき外出可能な日に俺の個人口座に貯金しておく。

 貯蓄はいくらあっても困らない。ルーファスの勧めだ。ついでにレオナルドもルーファスに頼んで口座を開いていた。

 こういう時商売貴族のルーファスは頼りになる。仕事を受けてもらったのでこれはフィフティフィフティだと言っていたが。

 俺は視線を感じて振り返った。

 あれ?なんであいつこっちを見ていたんだろう。

 俺は普段はこっちにかまってこないクラスメイトが何故かこちらを覗き込んでいたのを不思議に思った。

 薄手のカバンに俺が用意したものをすべてしまい込みそれをさらに別のカバンにしまう。

「厳重だね」

 ルーファスは笑った。

「この原稿をなくしたら怒られるどころの騒ぎじゃないんだよ」

 最近この辺では物語がよく売られている。

 ある程度裕福な一般庶民が通う学園というものがここ数年増えている。そのため識字率が上がり、書物を読む人口が増えているので本を出版するということが採算の取れる商売と認知されつつあるのだ。

 メイドでも掃除洗濯をやるようなものはともかくある程度令嬢のおつきなどをやるような立場のメイドはそうした学園を卒業していることが望ましいと言われている。

 物凄く裕福な商人は家庭教師を雇って子供を勉強させているそうだ。

 そうした社会のありようでこうして俺も内職ができているのはありがたいことだ。

「メアリアンもやっているんだろう?」

 メアリアンは少しデッサン力が弱い。そのため印刷された絵に彩色する作業の内職をやっている。

 色彩センスがあるそうで、メアリアンの彩色画は人気があるらしい。

 聖書などの彩色はある程度教養が必要なので学園に在籍しているメアリアンに白羽の矢が立ったらしい。

 聖人それぞれに決められた色彩があり、それに外れる色を塗ってしまうとその原画は没になってしまう。

 後でメアリアンのところに回収に行くというルーファスと別れ、俺は昼食を取りに行くことにした。



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