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マキシミリアン視点

 美しいまるで静かに降る雨のような銀糸の髪、そしてまるで黄昏が終わりかけたような藍色の瞳。それをうるませて泣いている僕の愛する人。まるで天の化身のような美しい人。

 しかし彼女は僕の前に来るとその美しい瞳からまるで水晶のような涙を流す。

 僕は目の前で泣きじゃくる恋人を見ていた。

「何があったの?」

 僕はそう尋ねた。いつだって柔らかな笑みを浮かべて僕に寄り添ってくれる可愛い人、なのにどうしてこんなにも悲しんでいるのだろう。

「妹のルナが大変なことに」

 涙ながらにそう訴えるその言葉に僕はすうっと青ざめた。

 うちの弟がルナ嬢を引っかけた。ルナ嬢がこんなことに巻き込まれた理由はたった一つだ。僕のせいで巻きこんでしまったのだ。

 うちの弟は大変印象の薄い男だ。ただ見栄えはそれほど悪くないので女を引っかけることは難しくないだろう。

 それ以上のことは言えないが。

「しかし、確か弟には付き合っているという女がいたような」

 確か貧乏子爵令嬢で、お世辞にも上品とは言えない女だ。そんな女と付き合っているような。にもかかわらずディアナの妹にそんなアプローチをかけたとしたらとてもじゃないが許すわけにはいかない。

「とにかく調べてみる」

 そう言った。普通なら弟を問いただすというところだが、弟と最後に口をきいたのはいつだったかすら思い出せない。

 お互いに顔を合わせないようにしている。

 貧乏子爵令嬢の友達だがいるということは知っているが顔も名前も知らない、他の人間から噂で教えられただけだ。あの弟の交友関係など一度も考えたこともない。そのことに自分でも驚く。

 僕が弟に話をしたこともないし弟が学園でどう過ごしているか知ろうとしたことは無い。

「そういうことなら」

 アンリがそう言って協力を申し出てくれた。

 弟のクラスに知り合いがいるという話だが。たぶんアンリのほうが僕より弟のことを知っているようだ。

 レオナルドとルーファス。それが弟と一番親しくしている友達の名前だそうだ。

 その二人がどこの誰だかすら僕は知らない。

 アンリが調べたところ弟は徐々にだが身を持ち崩しつつあるらしい。

 怪しげな交友関係も見て取られた。とてもじゃないがディアナに安心しろなどとは言えない。

 意を決して弟にかかわるものを見ることにした。

 幼いころから父の後妻にはろくな思い出がなかった。母親として認める気は毛頭ない。だが間違いなく弟なのだ。

 だからアンリに任せず自分であの弟に話をつけなければならないのだ。

 僕はアンリに弟と話し合ってみるとだけ言った。

「だが、素直に聞くと思うか?どう考えてもお前への嫌がらせの可能性が高いぞ」

 それはわかっていた。だがディアナを巻き込んだ以上どうあっても弟に言うことを聞かせなければならない。

「ディアナはもう一度ルナと話し合ってみると言っていた。何とか二人を引き離さないと」

 あの女の血を引く弟がルナをどんな目に合わせるか。背筋に冷たいものが走る。

 ディアナを僕は救いたいのだ。



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