不幸の手紙
俺は教室の私物入れの中に差し込まれていた手紙を読んで困惑していた。
俺は基本授業はきちんと受けている。だから私物入れに余計なものは入れていないし盗まれて困るようなものも入れていない。
それに周りはなんだかんだと言ってお坊ちゃん、育ちがいいので嫌がらせに私物を破ったりということもなかった。だから施錠を忘れることもたまにある。
もちろんこの手紙を出したのは俺の知り合いなんかじゃない。知り合いなら用事があれば直接俺に言ってくる。
その手紙は俺の名前だけが書いてあった。
そして書かれていた内容は、それに俺は困惑する。
俺の夜遊びを知っている、ばらされたくなければある場所に来いというものだ。
はっきり言って俺の夜遊びは芝居だ。
だからばらされようが言いふらされようが痛くもかゆくもない。
跡取りになりたくないので素行不良を装っているだけだ。だが相手はこれが脅迫できる内容だと思っているのだろう。
どうしたもんだろう。
俺としては言いふらしてもらった方が都合がいいのだが。
それで勘当でもしてもらえれば願ったりかなったり。
まあ最低学園を卒業するまで待ってもらいその後勘当が理想的なんだが。
「どうしたんだ?」
レオナルドが俺の手元を覗き込んできた。
そして真顔になる。
「どうするんだ?」
「どうしようかと迷ってる」
レオナルドの言葉に俺は気弱そうに答えた。
「行くんなら一人で行ったらだめだ。わかってるか最近お前の周りで物が落ちすぎているってこと、そんなときにこういう呼び出し状だ。どう考えても狙いは脅迫じゃない」
レオナルドの言っていることを俺は漸く思い出した。
あの花瓶が身体すれすれに落ちてきたあの事件。
あと少しでもずれていたら死ぬか大怪我をしていた。
「お前さ、命を狙われている自覚を持てよ」
持ちたくないわ、そんなもん。
俺の困惑は恐怖に変わった。
俺を呼び出して、呼び出してからどうするつもりなんだ?
「あのさ、この深夜にいわくつきの鐘楼の下まで来てくださいって、なにこれ?」
いわくつきの鐘楼。昔その鐘楼で首つり死体がぶら下がっていたとか、後、大昔だがあのあたりが内乱で死体置き場になっていたとか。深夜に死んでも近づきたくない場所だ。
ちょっと荒れ果てていて、撲殺にちょうどいい石なんかがゴロゴロしていて、絞殺死体を自殺に見せかけてつるす場所も完備されている。
「かなり重い殺意を感じるぞ」
殺す気確定。
「どうすんだ、三日後なら俺とルーファスと三人で行くか?」
「お願いします」
状況もそうだが、場所もひとりで行けるとこじゃねえわ。