白騎士のアンサンブル
目が覚めた私。無邪気な風に、揺れているカーテン。それに引き寄せられるように近寄る。カーテンの先はベランダになっている。私はベランダに出る。
「おはようございます。サキお嬢様。」
私は二階のとても見晴らしが良い部屋で寝ている。いつもベランダに出る私を出迎えるのは花の手入れをしているボーダという青年だ。とても広い花畑を毎日一人でせっせと働いている姿は、見ている私でも気持ちが良い物だ。「おはよう、ボーダ。毎日大変だな。」
私は自然と笑みが出ていた。
「いいえ。戦場に出ている皆様に比べたら、このくらい楽なもんですよ。」
私を笑顔にするその笑みがとても清々しい。
しかし、それは一時の夢であった。
ノックの音が部屋中に響き渡った。その激しさに嫌な気を覚えると共に現実に引き戻された喪失感が入り雑じった。
うるさいドアを無造作に開けた。 そこには真っ赤な瞳を眼鏡で隠したインテリな男がいた。
「サキ様、会議室に。」
まだ朝ごはんは食べていないのに呼び出しだ。
「わかった。着替えてから行く。先に行っててくれ。」
赤い瞳の男は一つ会釈しすぐに歩き出した。
私は大きな鏡を見ながら着替えていた。腰まである長い白髪を解かし、無駄に大きい胸を無理矢理押し込めて着替えを終えた。
着替えの時にしか自分を女だとは思えなくなっている。
体全体が見える鏡をみて思う。とても悲しい。
女の私を忘れ、すべての甲冑を白でまとい会議室へと足を向けた。
会議室に入ると重い空気が肌を撫でる。会議室には先の赤い瞳の男の他に三人いる。この四人は私の親衛隊であり、この国の最強者である。
赤い瞳の男はクレス。人付き合いはよろしくないが冷静沈着で軍師を受け持っている。軍では一番偉い奴だ。
隣に座っている短髪で緑色の瞳の男はハルマ。
少し荒いが四人のなかでは一番の力持ち。
その隣で寝ているピンク髪の少女はプレセラ。空気を読まないが、魔術に関しては右に出るものはいないといわれるほどの実力者である。
最後は淡い青の髪に青い瞳の少女ミク。私と同い年だ。三人ほど富んだ能力はないが、おかしいほどに強い。
「朝早くにすみません。」
「用件はなんだ?朝食はまだなのだ。」
クレスは表情を一つ変えない。それには怖ささえ感じる。
「バタビア砦が落とされました。」
「そんなはずがない。優勢だったのだぞ。負けるはずがない。」
ハルマが勢い良く立ち上がり大声で叫んだ。
「落ち着け、ハルマ。しかし私も気になるぞ。ルビアの軍事力では…」
「それが、生き残った者がいないと。ただ砦が跡形もなく消えた…と。」
私は言葉を失った。ルビアが他の国と同盟を組んだのか、それとも大量の援軍を当てたのか。それでも、跡形もなく砦が消える事はあり得ない。
「バタビアの後はここです。時期に来るでしょう。」
「信じていいな、」
クレスは首を縦に振った。
「臆さず。私にはヴァルキリアがついている。どんな手を使ったか知らないが我らの敵ではないぞ。」
会議が終わった。私は遅くなった朝ごはんを食べ、太刀を研いていた。
「訓練ですか?」
間抜けな声が後ろからかかった。
「プレセラ、戦争に行くのだよ。」「プレセラ、戦争嫌い。」
プレセラは戦争で親を無くした子だった。戦場に泣きながら親の名前を叫んでいた。そこを私が無理矢理ここまでつれてきた。それからだ、心を途絶したままだ。私のせいなのだろうか。罪悪感があり私はこの子を育てる事にしたのだ。
「戦争嫌い。」
「しかし、戦わないと殺されてしまうのだよ。」
プレセラはそれっきり喋らなくなった。ただ研いている太刀を見ながら。
【サキ クル】
私の頭の中に巡る不吉な声。
「プレセラ、行こう。」
プレセラは何も言わず頭をふった。
プレセラからあの時に貰ったガラス玉が踏まれて粉々になっていた。
「なんだ…」
城を出てからの光景を見た感想。城自体は丘の上にポツンとあり、丘を下ると城下町が所狭しとある。が今日は家が見えなかった。全て消えて無くなっていた。
そこにクレスとハルマとミクが合流した。
「街が消えてる…」
ハルマが呟いた。確かに何も無かったかのようにそこには荒野がいるだけなのだ。
「ハルマ、そんなことない。全ての物は無にはならない。」
クレスは冷たい表情で言った。
急に世界の光が消えた。違う、空が得体の知れない黒い物に覆われたのだ。
「やばい」
ミクが呟いた。
「凄い大きい魔力。危険、逃げないと。」 プレセラが言った。
しかし、逃げると言っても私には四人が見えない。真っ暗闇なのだ。
「皆、私によるんだ。」
一か八か、私はかけて見ようと思う。守りきる。
【聖なる主よ、大いなる杯に入りし孤独の狼を素の盾で守りたまへ】
空が轟々と唸り、その音がだんだんと大きくなってくる。
「怖い。」
プレセラが呟く。不安が全員によぎる。
城が崩れる音がする。ギシギシと唸り上げる。
になにかわからない重いものが乗っかる。五人の入るドーム型のガラスを作りなんとかしのいでいるがいつまでもつか…
「わかった。プレセラ、すぐに水魔法を。とびきりのやつを黒のにぶつけて。」
ミクが発作的にいう。それを了解したプレセラはぶつぶつ言い始めた。
「もうもたないぞ。」
ガラスにひびが入り始めた。
【自然の精霊よ。今ここに天の恵みを与え、天害と成せ】
黒い物が一瞬にして消えた。
「風の塊だったのよ。地面を冷やせば空と同じ温度になり風は止まる。」 空には虹が架かり視界が開けた。
「すごいすごい。」
子供の無邪気な声しかし回りには人一人どころか建物事態が跡形もなく消えている。
「こっちだよ。おばさんたち。上。」
声のとおりに上を向いた。
【悪魔の槍】
なにか黒い物体が地面に向かって落ちてきた。地面と接触した瞬間ものすごい衝撃で私たちは四方八方に飛ばされた。それを見た子供は甲高く笑う。「弱いねオバサンたち。なにが王妃だ、軍師だ、賢者だ、剛腕だ、魔物使いだ、所詮はただの人間じゃないか。」
その声は尖っているようだった。
「油断をしていればほざけ。」
いつの間にかハルマは子供の後ろにいる。子供はハッとしたように後ろを向いたが、その瞬間ハルマの蹴りによって地面に打ち付けられた。
【精霊よ、命の源の封印に位置ずけん】 その後即座にプレセラは魔方陣を空に描きそれを子供に放った。子供の所までいくと水が円を型どりその中に子供を閉じ込めた。
「放せ。」
近づいた。とても、かわいい女の子だった。右腕には悪魔の契約印が書かれていた。
「なぜこんな事をした。」
「お前らがしてきた事をそのまんまお返ししたのさ。」
私たちがしてきたこと、そこにはどんな意味があるのだろうか。
「サキ!」
刹那、私の目の前にはプレセラが飛んでいる。
「プレセラ!」 ミクの声がこだまする。プレセラはゆっくりゆっくり、地面に落ちていく。ドサッと鈍い音がした。
「プレセラ!!」
胸は朱に色付いていた。
【魔界の扉よ開け】
近くの森の中に洞窟がある。私たちはそこで休暇していた。今洞窟の中にいるのは私とミク、あの女の子、そして今だに目を覚まさないプレセラだけだ。他の二人は食料や飲み水を探しにいった。
少女は今はすっかり大人しくなったがここに連れて来るまでに苦労させられた。
ここに来てもう3日が終わろうとしている。私は私の部屋から眺められた景色を瞼の裏に描きながら一息ついた。
「サキ様、」
沈黙を破るようにぼそりとミクが言った。
「様付けはやめてくれ、私はそんなに偉くない。」
私は父上のために戦争を続けてきた。父上の世界を平和にする戦争という言葉を信じて。しかし今更ながら戦争の先に平和はないと思い初めていた。今回の件もそうだ。私が戦争で殺してきた人の子供なのだろう。この子は。私はあの言葉が頭に蛇の如くまとわりつき離れない。
「いいえ、サキ様はサキ様です。」
プレセラの致命傷を応急措置したのはミクだ。魔物を呼びだして治してもらったのだ。
「クレス殿とハルマ殿の帰りが遅くありませんか。」 確かに遅い。もう少しで日が落ちると言うのにクレスが戻って来ないのはおかしい。
「今帰った。」
私は驚いたように後ろの洞窟の入り口を見た。ハルマが薪を大量に担いで帰ってきた。
「どうした、驚いちまって。」
「すまない、クレスが遅くてな。」
ハルマは薪を一つ火の中に入れると、空になっていた袋に他の薪を入れた。
「道にでも迷ったんじゃないか。」
私はそうかと聞こえないように呟いた。
「どうした、元気ないな。」
ハルマの言葉が胸に突き刺さる感じがした。ミクはハルマの頭を殴り何か耳打ちした。殴った手を痛そうにふりながら。
「誰か来る、」
子供(シラサキと言うらしい)がいきなり声をあらげて言ったから私は外の方を見た。
人影、私はそれがクレスでは無いことがすぐにわかった。すぐさま太刀を手にし、斬りかかった。
「切り株!」 人影ではなかった。気付いた時にはすでに私の背中は鋭い物で殴られた。そのまま目の前の木に腹からぶち当たり地面に倒れこんだ。
「これが姫様かい、失望したよ。」
意外と若い女性の声だった。私の髪を無造作に掴み無理矢理頭をあげてきた。
「さようなら。」
鋭い物、刀が首に触れた。
【迷い子よ】
「誰!」
刀が首から離れた感触がしたが髪は掴まれたままだった。
【我は魔王】
「さっさとかかってきなよ!」
女性は声をあらげている。
【そなたの力見せて貰おう】
とてつもない風が髪をさらう。
出血が止まらなかった。頭がぼーっとし始めてきた。
目が覚めた。
「やっと起きましたか。」
辺りは暗く、月光だけが辺りを明るくしていた。私の隣にクレスがいた。
「起きないで下さい。傷つが深いです。」
ここは洞窟近くの川辺だ。
「私の話を聞いて下さい。」 いきなりの申し出に驚くも私は頭をふる。
「これからルビアに落ちます。その許可を。」
「ふざけるな。なぜ聖なるハサウェイの国の者が、獣々なるルビアに落ちなければならない。」
敵国に落ちる事など出来るはずがない。落ちたら殺されるだけだ。
「私はハサウェイが聖とは思いません。」
その言葉に思わずクレスの喉元に刃先を向けた。その状況をもろともせずクレスは喋り続ける。
「シラサキに聞きました。我が国がルビアの民を虐殺していると。」
「そんなわけないだろ。シラサキが嘘を言っているに違いない。これ以上変な事を言うと切るぞ。」
「私もそんな事が行われていた事を噂に聞いていました。」
「噂に過ぎないのだろ。父上がそんな命令を許すはずがない。」
「貴女を襲ったのがその父上の親衛隊と知ってそんな事をおっしゃるのですね。」
持っている太刀を落とした。カランとむなしく響いた。川の流れる音がやけに激しい。
クレスは私に近いてきた。
「私も信じられません。しかし、本当の事なのです。サキ。」
クレスは私を包むように腕を腰にまわした。
「私を信じて下さい。」
再び頭をふる。
クレスの唇が私の頬にふれる。次に私からクレスの唇を奪った。
翌日にはルビア目指し南下。3日歩いた所でルビア首都のガイセンに着いた。そこにはほとんどの者がぼろぼろの服を着ており市場にはほとんど食料品はなかった。
街を歩いて城まで行く。私たちの白冑を見ている街の者の視線が痛かった。ルビア兵と共に城まで向かっているので捕まったハサウェイ兵とでも思われているのだろう。
ガイセン城。ハサウェイの飛龍兵からの爆撃によりひどい有り様だった。建っているのが不思議なくらいだった。
城内はいたって普通の城であった。私の城と同じほど。獣々しさはない。
「お初に見えます、ルビア総務軍師ジャミラスと申します。」
玉座にたどり着いた。
「我は国王ナフサ。」
国王を見て私は驚いた。
「失礼と存じていますが、姫君で御座いますか。」
ナフサは被っている薄いシルク布を自分で上げる。
「左様。私は女だ。」
色白。右は青、左は銀のオッドアイ。金髪のロングヘアー。
「魔女ですね。」
ミクは言う。
「そうだ。」
ナフサは面白そうに言った。
「お前たちは面白いな。ハルベルトの子孫に、魔女擬きに、死霊使いに、魔王に、無の能力か。」
ナフサは笑った。
「それにしてもこいつの呪いは強いな。」
ナフサは玉座から降り、未だに寝ているプレセラによった。
「ナフサ様。まだ話の途中です。」
ジャミラスはそう言うが、いいじゃないかと軽く流されていた。
【呪いよ。消え去れ。】
そうナフサが呟くとプレセラの体から黒い何かが体の外に出て消えていった。
「よし、後は寝かせるだけだ。」
「さて話の続きをさせていただきます。」
ジャミラスは呆れたように言う。
「一番の謎はなぜルビアに下ったのですか。」
「私たちは裏切られこちらに逃げるしかありませんでした。」
クレスがすかさず言う。その言葉が胸を鈍く叩いていた。「普通に考えたらこちらに来れば殺される危険性があったのかもしれませんが。」
「それはないとわかっています。」
私はすかさず言う。
「この国は懐かしい匂いがします。」
そう言うとナフサは吹き出すように笑い始めた。
「面白い。変なことを言う少女よ。」
私は手で顔を隠したくなった。なぜあんな事を言ってしまったのだろう。
「信じよう。」
ナフサは言う。ジャミラスは驚いたように口を開くがナフサは聞き耳をたてなかった。
そのまま私たちをこの国に置いて貰える事になった。
翌日にはプレセラも目覚めた。数日は私たちに幸福と言う時間が流れた。プレセラとシラサキはまるで姉妹のように無邪気に遊んでいる。そこにハルマが入る。まるで父上のように。
「サキ様、」
「様付けはやめてくれミク。」
ベランダの塀に肘を付き、両手で頬杖をしている私を気にしてよってきた。
「私にとってサキ、あなたは主人なの。」
思わない言葉だった。
「サキ・ミクロ・クルロイド、何を悩んでいるのですか?」
彼女の目は綺麗に磨かれた鏡のようだった。
「本当にお父様は…」
私はポロリポロリと言葉が勝手に出てくる。
「なぜ私を見捨てたの?」 次第に肩に力が入るのが自分でもわかる。
「なぜ私を殺そうとしたの!」
この気持ちを誰にぶつければ良いか解らなかった。ただただ、彼女に当たってもしょうがない事だけは解っていた。しかし対象のない矢は何かに当たるもので、私は彼女の胸ぐらを掴んでいた。
冷静に戻りはっとした。すぐに手を話した。私はミクに顔を向けられず、後ろを向いてうつ向いた。
私の後ろから温かい、それは大きなものが私を包みこんだ。
「国王様に聞きましょう。真実を探しましょう。」
真珠のように煌めくものが目の前を落ちていった。
「明日、国王じきじきにルビアにせめこんで来る予定です。その時に、」
私は頭を降った。私は明日を待つことにした。
出てきた食事は喉を通らず、夜はベットにこもっても眠れなかった。
翌日、
天が真上にあるころ、ミクの言葉は当たった。その事もありルビアも準備を整えた。
空は飛龍が飛び交い、地面は馬が走り回る。始まる…
「王女、お前は敵将を目指して突き進め。」
ジャミラスの支持だった。
「私はあまりこんな作戦は好きではありませんが…」 ジャミラスは呟く。ナフサからの命令なのだろう。
「ありがとう。」
「礼ならば王妃に申して下さい。」
私とプレセラ、ミク、シラサキ、ハルマにクレス。小部隊となり敵陣に突き進んでいた。父上の所につくのに苦労はしなかった。
「ハルベルト!」
私は父の名を叫んだ。
「サキよ、」
低く落ち着いている声。私は泣きたくなる。
「なぜ刀を向けている?落とすべきはあっちだろぅ。」
「父上、私の質問に答えて下さい。」
「早く行け、」
「なぜ私を殺そうとしたのですか!」
時が止まる。
「リリ、マファエ、」
父上が呟くと強大な魔力を感ぜずにいられなかった。大きな火の玉。プレセラが弾いた。
「デュエ、ザラ、ヤジャ」 また呟く、殺那鉄と鉄との交わる音がする。クレス、ミク、ハルマ。
「サキ様、」クレス
「私たちに」ミク
「任せろよ」ハルマ
「お姉ちゃんは」シラサキ
「真実を」プレセラ
四方八方に飛び散った。私を信じて。信じて。信じて。
「父上!」
「この期に及んで父扱いか。」
バカにしたように笑う。
「確かにあなたは私の父と言う存在ではない。ただ教えて。私はあなたの、」
「駒だ。」
殺那、私はハルベルトに刃を向けた。
「生ぬるいぞ、ガハハハハ。」
あいつの斬波に私は数十メートル飛ばされた。そして目の前にはあいつが…
「この程度か。我が娘。」
薄汚い笑い声が辺りに響く。
私は駒じゃない。私はあんなやつの娘じゃない。
「ハルベルト!」
あいつの刃が降り落ちる。私の首求めて。
【私は欲す 自然よ 空よ 海よ】
あいつは吹き飛んだ。
「戻りましたよ。」ミク
「少しでも力になりたい。」シラサキ
「少しぐらい目立たせろ。」ハルマ
「守る」プレセラ
「あなたは一人ではない。」クレス
あいつは立ち上がった。
「面白いな。少し位遊びになるか、」
高く笑う。
まずはプレセラが氷の矢を放つ。ハルベルトは横に飛ぶがそこにはハルマがいた。ハルマに吹き飛ばされミクが空に上げる。すかさずシラサキがハルベルトを地面に勢い良く引き寄せクレスが差す。
「甘いな。」
クレスが地面にめり込む。私が斬りかかるが弾かれる。
【回れ】
ハルベルトの回りに白い虫が覆い隠すように飛ぶ。
「邪魔だ、」
ハルベルトは中でもがいているようだ。
【聖なるものの力】
プレセラの魔法で私の太刀が白く光る。
【ヴァルキリア】
一閃、ハルベルトに突き刺さる。あいつの叫び声が辺りに響く。
「強くなったな。しかし本気を出せば、」
「させないよ。」
指を鳴らす音がした。
「止めろ!」
何が起きたのがわからなかった。あいつは煙となった消えた。
「お疲れみんな。」
「ナフサ様!」
いかにも魔女と言う感じにホウキに乗ってきた。
「よし、帰ろう。もう終わったしね。」
その後私たちはルビア城に戻る。ハサウゥイは王を無くし実質ルビアの配下に入っていた。
そんなある一年後、私は18の誕生日を向かえる日、王妃に呼ばれたので玉座に向かった。
「やっときたか。」
ナフサが私によって来る。
「誕生日おめでとう。」
「ありがとうございます。」
正直に喜べない。まだ父の事を考えていた。
「私からの誕生日プレゼントなんだが、ジャミラス。」
王妃のプレゼントだった。私はこの国の階級かなにかと思っていた。
「私からのプレゼントは元ハサウゥイ領地を与える。階級は国王を命じる。」
唖然とした。
「私にそれは、無理です。」
正直な気持ちだった。
「何が無理さ。すでにルビアの民を魅了しやがって、この国には邪魔なんだよ。」
何か心が熱くなる。
「てか後ろにいるネズミども、出てこい。」
入り口からドタと重い音に驚き後ろを向いた。
「バレてましたか。」
「始めから反対だっ。」
「クレスのお兄ちゃんがきになるって言ったんだよ。」
「誤解するような、事を言うな、」
「誤解するような事はないですよ。」
「同感。」
「ミク、ハルマまで。」
私はにやけてしまった。
「うるさいぞ。ほらクレス来い。」
ナフサが言う。
「お前、あいつが好きだろ」
私の顔が赤くなるのがわかる。
「おかしな事は言わない、いや私からのお願いじゃ。奴と一緒になってくれないか。」
風が吹き通る。
「クレス、」
我慢が…
「あの…」
できない…
「私と一緒になってくれないか。」
支えが欲しかった。母は逃げ、父には裏切られ、私は守ってほしかった。
「私で良ければ、サキ。」 一年間私はルビア、いや世界の平和を求めてきた。しかしそれは世界の平和では無くて私に幸せをもたらした。
仲間しか信じられなくても仲間は世界のみんななのだから。
この小説読んで下さりありがとうございます。今後とも頑張りますのでどうぞご贔屓に。