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私を好きすぎる勇者様を利用して、今世こそ長生きするつもりだったのに(多分、また失敗した)  作者: 琴子
第一章 再会という名の出会い

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質素すぎるティータイム



「……僕と、リゼット様が、ですか?」

「味の保証はできないけどね」

「リゼット様に出していただけるのなら、泥水だろうと何だろうと喜んで飲み干します」

「怖いよ」


 お茶を飲まないかと誘っただけなのに、彼は信じられないという表情を浮かべ、これ以上ないくらいに喜んでいる。


 そんな彼を私は初めて家の中へと案内した。おばあちゃんは朝から、近所の友人の家に行っているようだった。


「ここが、リゼット様の部屋……」


 狭くボロボロな自室へと通すと、いつ壊れてもおかしくない椅子のひとつを勧めた。


 ギイイと大きな音が鳴る椅子に腰を下ろし、室内を見回したラルフは、何故かショックを受けたような顔をしている。


「どうかした?」

「いえ、その……ただ、うちの犬の方が余程いい暮らしをしているな、と思っただけで」

「喧嘩売ってる?」


 感想が素直すぎる。どうやら今の彼は、かなりいい暮らしをしているようだった。ちなみに私は前世でこんな暮らしにも慣れているから、辛くはない。


「僕が贅沢な暮らしをしているのに、リゼット様がこのような生活をしているなんておかしいです」

「本当に、好きでしてることなの。気にしないで」


 私がそう言っても、やはりラルフは納得していないような表情を浮かべている。


 私は安物の茶葉で紅茶を二杯淹れると、ラルフと自身の前にことりと置いた。先日、お隣さんに貰った砂糖も添えて。


「こんなに美味しいお茶は、初めて飲みました」

「またまた」

「本当です。命を賭けられます」

「ええ……」


 今や高級なお茶を飲み慣れているはずなのに、ラルフは何度も何度も美味しいと言ってくれるのだ。まるで子供のように嬉しそうにしているものだから、つられて笑みが溢れた。


「……この部屋にね、一緒に暮らしているおばあちゃん以外の人を入れたことなかったの」

「本当ですか?」

「うん。ラルフが初めてだよ」


 そう答えれば、彼は「こんなに幸せでいいんでしょうか」「好きです」なんて言い、照れたように笑った。


「おばあちゃんの孫もたまに来るんだけど、いつも入りたがるのを必死に止めてるくらいで」

「……それは、男性ですか?」

「うん。私と同い年の貴族令息なんだ」

「そうですか。殺した方が早そうですね」

「ころ……?」


 時折ラルフは、こうして綺麗な顔に似合わない物騒な冗談を言うのだ。もしや都会で流行っているのだろうか。


 やがて彼は真剣な表情を浮かべると、私を見つめた。


「リゼット様は、今の生活をどう思っているんですか」

「……平和で、幸せだなと思ってるよ」


 もちろん、満足していると言えば嘘になる。こんな生活に慣れてはいるものの、死ぬまでここにいては憧れの恋やら結婚なんて程遠いだろう。99%が老人なのだ。


 けれど死なない為には、ここで生きて行くしかない。


「本当に、この場所が好きだからなんですか」

「…………」


 そんな私の心の中を見透かしたように、ラルフは続けた。


「今後、貴族として暮らすつもりはありませんか?」

「ないよ」

「貴族は嫌い、だからですか?」


 一ヶ月前、貴族が好きじゃないと言ったのを覚えていたらしい。あれは言い訳のようなものだし、義母や義姉のような人間が嫌いなだけで、貴族自体は好きでも嫌いでもない。


「嫌いというか、なんというか……それに私には、貴族としてのマナーも教養もないもの。こんな状態で社交の場に出れば、笑い者にされるだけだろうし」

「もしも貴女を馬鹿にする人間がいたら、僕が消します」

「……なんて?」

「ですから、二度と愚かな真似ができないよう僕が全員殺しますので、安心していただいて大丈夫ですよ」


 またもや、ラルフの形のいい唇からは物騒すぎる言葉が飛び出した。聞き間違いかと思いきや、余計に物騒になって返ってきたものだから、驚きだ。


 彼は柔らかな笑みを浮かべ続けているから、尚更怖い。


「僕が貴女を、どんなことからも守ってみせます」

「……ラルフ?」

「絶対に、一生苦労はさせません。リゼット様が望むものは全て用意します。僕に出来ることなら、何でもします」

 

 なんだか、プロポーズの台詞みたいだ。そんなことを他人事のように思っている私に、彼は「ですから」と続けた。


「僕と一緒に、王都で暮らしませんか?」



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