幸せなぬくもり
冬が近づいてきたある日の晩、広間でナディアとお茶をしていたところ、もじもじとした様子のラルフがじっとこちらを見ていることに気が付いた。
「どうしたの? ラルフ」
「……その、実はリゼット様にお願いがありまして」
ラルフが私にお願いごと、というのは珍しい。お世話になり続けている身だし、「私にできることなら」と返事をする。
するとラルフは目をきらきらと輝かせ、嬉しそうに頬をほんのりと赤く染めた。
「実は、この続きを作っていただきたいんです」
そう言って彼が取り出したのは毛糸でできた片方だけの靴下で、ものすごく見覚えがある。
よくよく見るとそれは、ラルフの元から逃げ出した際に森の小屋の中で編んでいたものだった。
あのまま意識を失い連れ去られたため、まさか残っていたとは思わず驚いてしまう。
「あの後、しっかり回収させて大切にとっておいたんです。リゼット様があの日のことを許してくださった後に、お願いしようと思っていて」
「そうだったの」
「それにこの色は僕の瞳と同じ色なので、もしかしたら僕のために作ってくださったのではないかなと」
「……そ、それは」
あの時はもうすぐ死ぬと思っていたため、誰にも渡すつもりなんてなかったけれど、無意識にラルフの色を選んでしまっていたのも事実だった。
本人にそれを言われると、なんだか恥ずかしくなる。
とは言え、彼ならどんな高級なものだって買えるはずなのに、私が編んだ片方しかない靴下を大切にとっておくなんて。ラルフらしくて、思わず笑みがこぼれる。
「私もラルフに相談しなかったのが悪かったし、怒ってなんていないわ」
「では、いいんですか……!?」
ええ、と頷こうとした瞬間、隣に座っていたナディアが私の腕にぎゅっと抱きつき、ラルフを睨みつけた。
「お兄様、私の瞳の色でもあるんです! 私に作ってくださったのかもしれません!」
「はっ、勘違いだろう」
「それはこちらのセリフです」
「わ、分かったわ。二人ともに作るね!」
今にも喧嘩を始めそうな二人に慌ててそう声を掛けると、ラルフとナディアは声を揃えて「ありがとうございます!」と言い、眩しい笑顔を向けてくる。美形兄妹の満面の笑みに、目が眩む。
やがてナディアは「リゼット様」と名前を呼ぶと、上目遣いで私を見上げた。
「あの、さらにわがままを言っても……?」
「もちろん」
「お兄様と二人でお揃いというのも気持ちが悪いので、リゼット様の分も作っていただきたいのです」
「僕だってお前とじゃなくリゼット様とお揃いがいい」
「わ、分かったわ! 3人でお揃いにしましょう!」
再び今にも言い争いを始めそうな二人を落ち着かせようとそう言えば、やっぱりラルフとナディアはよく似た嬉しそうな顔をした。
◇◇◇
それから一ヶ月後、私は三つの完成した靴下を前に、うんうんと頷いていた。我ながら良い出来だ。
そのまま二人を広間に呼んで渡せば、ラルフとナディアはいたく感激した様子で靴下を受け取り、まるで宝物を眺めるような眼差しで見つめている。
「リゼット様、本当にありがとうございます! 死ぬまで、いえ、死んだ後も墓に入れてもらい身につけます」
「ええ、季節を問わず毎日」
「本当に落ち着いて、今年の冬の間だけでいいからね」
早速履いてみては子どものようにはしゃぐ二人があまりにも可愛らしくて、幸せな笑みがこぼれる。
「ですが、せっかく作ってくださったのに……」
「その代わり、来年もまた作らせて」
「いいんですか!?」
「ええ、もちろんよ」
当たり前のように未来の話ができることが嬉しくて幸せで、心が温かくなっていく。
「リゼット様、本当にありがとうございます!」
「大好きです!」
「ふふ」
次は手袋あたりを作って贈ったら、ラルフやナディアは喜んでくれるだろうか。
そんなことを考えながら、私は大好きな二人に「こちらこそいつもありがとう」と笑顔を向けた。
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