第8話 突き捨て(つきすて) 命を懸ける編
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突き捨て
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盤上の歩を前に進め、あえて相手に取らせること。
「1枚の歩を突き捨てる」ことを「1本突き捨てる」と言うこともある。
突き捨てた瞬間は1歩損であるが、相手の駒を上ずらせたり、あとで自分の攻め駒が進めるようにしたり、継ぎ歩をしたりと様々な場面で見られる。「開戦は歩の突き捨てから」という格言もあり、基本手筋の1つである。
(引用:「将棋ドットコム」https://将棋講座.com/手筋/突き捨て.html)
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命を懸ける。
人は生きているうちに何回命を懸けたような経験をするのだろうか。
全く初対面の相手から命を懸けると言われても、かけられたところで対応に困る。
相手はいくら本気だろうと、その本気を応えたいとこちらが思えない。
その人を知らないから。信用がなく、心が動かないからだ。
ならば、その期待に応えたいと思わせる、少なくとも相手を信用する何かを得させるにはどうすれば良いのか。
その人に好きになってもらうのが早いだろう。
好きになってもらうにはどうすればよいか。
これが難しい。
人は生まれてきた時、場所が違うばかりか、育った環境も違う。
成功体験も違えば、失恋の数も異なる。
それでも、皆が協力し、地域や国を支え、毎年たくさんのカップルが結婚し、子どもを育んでいる。
今、生きている人はどうやって人に好かれ、今を生きているのか。
だいたいの人は「わからないからぶつかってみる」のだろう。
もちろん、入試のように受験勉強のような入念な準備をする者や、宝くじのように、少々投資はしたが本当の運のみで勝負する者もいる。
命を懸ける、にはたいてい相手がいるものだ。
ドラマがなぜ面白いか、それも命を懸けなくてはならない状況に共感し、クライマックスで命のかけているさまを見て、それを我が人生のように疑似体験できるからだ。
ネット小説ではバトルモノが流行っている。
これも生と死がわかりやすいからだ。
ただ、リアルな人生においそれと命を懸けるわけにはいかない。
自営業者の方は本当にすごいと思う。
守られるものはなく、日々、己の命を懸けて削っているのだから。
私は歩。
戦場で幾多も敵駒を捕え、また捕らわれてきたが、私は死なない。
相手の駒のプレッシャーに恐怖し、死を感じることはあったとしても私は死なない。
きっと死ぬときは、私が割れた時で、その時にスペアがなければ、私以外が皆死ぬだろう。
将棋ができなくなり、ゴミとして捨てられるのだ。
さて、なぜこんなことを考えるのかということだ。
今はもちろん戦場にいる。
戦況は序盤、こちらは四間飛車という飛車を左から4列目に置く戦法を取っている。
一方、相手は居飛車であり、アマチュア同士の戦いでは、よく見られる盤面だ。
イメージとして、四間飛車は守り重視、居飛車は攻め重視である。
なるほど、今回の大将は守りを意識し、相手のミスを狙い打とうと考えているのだ。
この盤面では居飛車側に選択肢が2つある。
「急戦」と「持久戦」だ。
急戦を選べば、「攻略できる」という主張になり、四間飛車側が攻められ方を知らなければ一転不利になる。知っていれば、もちろん四間飛車の有利である。
一方で持久戦は、戦法に関わりなく、棋力勝負になる。その場合、居飛車の守りが完成する前に四間飛車が攻め切れば、四間飛車が勝つ。そうでなければ、さきほどの通りだ。
知識の急戦、棋力の持久戦。どちらも楽しい一番となりそうだ。
ある程度の囲いも互いに組み終え、居飛車の手番。
居飛車側は船囲いを選択した。
これは急戦だ。
そして、長考する。
「どうやって相手陣を崩していこうか」と。
攻めるなら、歩を進めてくる。
攻め駒である自分の飛車の前か、相手の弱点の相手の角の前か。
できれば、後者はやめてほしい。
そこにいる歩は私。
決断の一手。
これをもって中盤に入る。
相手が選択したのは、2四歩。
「うーん、また私か」
戦場に生きているものだから、戦うことは誉だろうと思われるかもしれない。
しかし、私は歩。
攻めてこられるということは捕虜になりやすいのだ。
今回は角将軍に守られているのですぐに捕まる心配はない。
しかし、相手は急戦を選択し、タダで歩を渡そうとしている。
これを意味するものは。
「この戦況は私の得意なんだよ」という露骨にアピールしているのだ。
まさに不退転の一手。
同歩を応じるしかない。
指令も私に下った。
敵歩兵を取り込む。
私にはまだ角将軍に守られているので、すぐに捕獲される心配はない。
しかし、敵飛車は美味しいものを見ているかのように私へ向ける視線が熱い。
私には美味しく頂かれる趣味はない。
けれども、角将軍がどかされたならば、たちまち、敵飛車に取り込まれてしまうだろう。
開戦は歩の突き捨てから。
駒たちの命を懸けた戦いがこれから幕を開ける。
様々な場所で戦闘がおこるだろう。
恐ろしいがありがたいことに死んだ駒はいまだひとつも見ていないことだ。
捕虜にはなるが。
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おかげさまで7日間連続投降ができております。
皆様におかれましても、ご健康でありますように。
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