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第6話 連打の歩(れんだのふ) 意思疎通編

ご覧いただきありがとうございます。

このようなニッチな拙作にも5日でPVが100を越えました。

興味を持っていただき、重ねて、お礼を申し上げます。

連打れんだ

――――


相手の飛車(竜)または香の1つ前のマスに歩を打つ手を2回以上連続で繰り返すこと。「歩を連打する」のようにも言う。

歩打ちが飛車(竜)または香の駒取りになっているので、手番を握りながら相手の駒を吊り上げることができる。歩を損することにはなるが、相手の駒が近づいて受けやすくなったり、上ずって相手陣に隙が生じやすくというような効果がある。

(引用:「将棋ドットコム」https://将棋講座.com/手筋/連打の歩.html)

――――


コミュニケーションを取る。

得意な人もいれば、苦手な人もいるだろう。

あくまで一例だが、何故得意かと聞かれれば、人と話すのが楽しいから、と答えるかもしれない。

逆に何故苦手かと聞かれれば、昔のトラウマが残っている、と答えるかもしれない。

ここで共通しているのは得意な人も苦手な人も「コミュニケーションで失敗したことがある」ってことだ。

得意な人はいくら失敗してもあきらめずチャレンジし続け、ある時に自分なりの「楽な」コミュニケーションの方法に気づく。


一方で苦手だという人は、いまだチャレンジ途中であるのは間違いない。その中で、自分にしっくりくる「楽な」コミュニケーションがまだ見つけられていないのだ。おそらく。


子どもはコミュケーションの天才だ。

出会ってすぐに友だちを作るのだから。

子どもは「楽さ」より「楽しさ」を優先させる。

けれど、大人になるにつれてその才能も身を潜める。


将棋はわかりやすい。

負け=失敗とはいいきれないが、一応、負け=失敗としておく。

プロ棋士とは違い、アマチュアである我々が将棋に負ける理由はただ1つである。


「ミス(緩手ともいう)をする」からである。

この“ミス”は少なくとも対局中はミスだと気づけない。

一生懸命に指した手だから当然だ。

それがミスだと気づく瞬間はだいたい2つで「相手が次に指してきた時」と「感想戦」だ。

どちらも「相手が教えてくれる」のだ。


将棋の面白さはここにある。

お互いに一生懸命に指している。

双方ともに勝ちたいと思って指している。

一手一手で相手に勝る最高の一手を指している(つもりである)。

それでも、人はどうしても1局に5~10手ほど、ミスをする。

だから負けるのだ。


逆に勝つにはどうしたらいいか。

これも簡単である。

相手がミスをすれば勝つ。

アマチュアとプロの大きな違いはここにあるような気がする。


そんなことを考えていても、私は歩。

指令通り動くことしかできない。

いつか大将になり、指し手となることはあるのかと夢を見ることはあるが、サイズが違うので諦めている。


さて、本日の対局である。

どこかの学校の部活動か何かか、練習と題して二人が戦っている。

戦況は中盤の入り口、大勢は五分、良い間合いをそれぞれに感じ取っている。


私は当然のごとく駒台にいる。今のところそばに角将軍、歩兵が2枚がいる。

相手は将棋の超有名戦術【棒銀】で一直線に攻めてきた。

相手の歩がやってくる。

敵銀少佐のサポートが半端ない。その後ろに飛車将軍がチャンスを伺っている。

角将軍は序盤で相手角将軍と刺し違え、お互いに捕虜になっている。


「これはまずいな」

角将軍はいう。

「このままだと敵の銀が攻め込んでくる」

その言葉の通り、8六の地点に銀が入ってきた。

7七に自陣の銀少佐がいるものの、表情は少々険しい。

いわゆる棒銀成功の形である。


我が大将が飄々と歩を投入する。

場所は飛車のすぐ頭だ。

いわゆる「叩きの歩」。

敵にしたらなんのこともない。

同飛車とあえなく歩を捕獲。

大将は更に歩を投入。

もう一度、同飛車と捕獲される。

そして、私にも指令がかかってきた。


「お前の働きで戦局が少々変わる。頼んだぞ」

角将軍は私に激励を浴びせた。

私には見えない何かが、彼にはきっと見えているのだろう。


私にはわからない。

ただ指令を遂行するのみだ。

指令内容はもちろん、飛車の頭に陣取る。


これで歩の3連打だ。


相手は勢い余って私も取り込んだ。

「よくわかりませんが、後は任せました、角将軍」

その台詞と共に敵駒台へと運ばれた。


「よくやった、あとは任されたっ」

と、角将軍が陣取ったのは端っこの9六の地点であった。


よく見る。

銀と銀がぶつかっている。

一方で角は飛車を取ろうとしている。

相手は悩む。


飛車を捨てて、銀金と取る方法と、飛車を逃げて、8六銀、同銀、同飛車とする方法の2つがある、

前者ならば、銀で金を取った後、その銀が飛車将軍に取られ、飛車銀と銀金交換。

これは損である。

だから、相手は一度飛車を引く後者を選んだ。

先ほどの通り、8六銀、同飛車87銀。

そして、もう一度飛車を下げる。

次の狙いは、8六歩と銀を狙うのか。


大勢はこちらが苦しいのは変わりがない。

角将軍の位置が悪く、うまく機能できていない。

しかし、我々歩3枚の活躍により、状況をより複雑化させられたことは事実だろう。


後は間違えてくれることを祈るのみだ。

人と人との将棋は一手大逆転があるから面白い。

見た目、大逆転でも対局者たちは1手1手をを真剣に指しているのだから。


「けれども、勝つのは我が大将だ」

次の君主の下で私は着々と反撃の準備を進めている。

自分の手柄で自分の首を絞めかねないなぁと感じながら。

ご覧いただきありがとうございます。

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ブックマーク、評価していただいた方、ありがとうございます。

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