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第十六話 訓練施設

カーラからの情報で訓練施設なるものが開放されると聞き、

攻略に向けて特訓するアルとセルヴィア。

そしていよいよその時が……?





「ついに発表されたね」


 いつもの場所でランチタイム時。

 今朝から学院内は訓練施設に関する話題で持ち切りだったのだが、ここでも言いたいと言わんばかりにカーラがその話題を投下する。


「ええ、そうね」


 お弁当のウィンナーにフォークを突き刺したセルヴィアが真剣な表情で反応を返す。


「セルヴィア、やる気満々だねぇ」

「それはもちろんですとも」


 フォルテナ学院が管理している近隣の洞窟を幾つか開放し、そこを訓練施設として生徒達に探索させると言う院内行事の存在が発表されたのが今日。

 にも関わらず院内で二週間ほど前から五人組のチーム作りをする生徒達が急増していたのは、カーラを含む幾人かの生徒が上級生から得た情報を一年の間で広めたからだ。


「でも、五人チームには一人足りないのでは……」

「大丈夫。()()五人までのパーティーだからねぇ。四人でも二人でも、自信があれば一人でも入れるって事じゃない?」

「そんな……一人で洞窟に入る人なんて一年にはいませんよ~……」

「まぁ、そうだよねー」

「でも、何で五人なんだろうね?」


 ミリエールとカーラの話に加わったアルを、女性三人が一斉に見る。


「な……何……?」


「アル……、まさか気付いてないの……?」

「な、何をかな……」


 信じられないと言った顔をするセルヴィア。


「アル~。フォルティナ・ナイツって知ってる?」

「知ってるよ!」


 からかうように言うカーラにアルがムキになって返す。


「アル君……、フォルティナ・ナイツは知ってるんですよね……」

「ミリエールさんまで……。国のエリート魔法騎士部隊を知らない国民はいないと思うけど……」


「だったらそのフォルティナ・ナイツが5つの職位に分けられてるのは知ってる?」

「え……? ……よ、4つくらいなら分かるけど……詳しくは知らなかったかも……」


 カーラの問いかけに自信なさげに語尾が段々と弱くなっていくアルに、三人がため息をつくのを聞いて慌てて自分が覚えている事を思い出す。


「え、えっと……! まずは陣形の最前線で強力な単体魔法を撃って戦う騎士ナイトと、防壁魔法で敵の攻撃を防いだりして味方を守る守護者ガーディアン! 後は……長い詠唱で範囲魔法を撃つ法撃手シューター! それと、怪我人を癒す治癒者ヒーラーだよね……。あとは……」

調整者コーディネーター。騎士として立ち回ったり守護者になったりと全体を見渡さないといけない指揮官みたいなものだね」


「そんな役割があるんだね……」

「そうそう。だから五人まで、って制限があるんじゃないかなぁ?」

「ありがとう、覚えておくよ」


「でも、四人で大丈夫なのでしょうか……」

「うーん、ミリエールの不安も分かるけどここで今一人だけあぶれてる生徒を探すのは難しいんじゃないかな? 後、その人とチームワークが取れるか分からないし」

「チームに僕がいるしね……」

「チームに私がいますしね……」

「そういう面のチームワークはいらないからね? とにかく、参加しない事には始まらないからね! 各自でがんばってこ!」


 そう言い切ってカーラはトマトとチーズが挟まれたバゲットにかぶりついた。




 ・ ・ ・ ・ ・




「はい、四人の参加を受付しました。頑張って下さいね」


 放課後。

 普段は空部屋が並び閑散としている階が受付所となった事で今日は生徒達でごった返していた。

 そんな中やっとの思いで登録を済ませた四人。


「東洞窟の探索許可証、だってさ」


 カーラが受付の紙をヒラヒラと手でなびかせる。

 紙には「以下の者、東の洞窟の入洞を許可する」と書かれておりその下には四人の名前が書かれていた。


「カーラ、東の洞窟はどうなっていますの?」

「さぁ? 先輩は中の事は教えてくれなかったねぇ」

「そうなの……」

「でも、それでいいんじゃないかな……? やっぱり自分たちの力で挑戦しないと……」

「そっか……そうよね!」


 アルの言葉に、考え直したセルヴィアが拳を握り締める。


「甘えに甘えて挑戦してもそれは意味がないものね! やっぱり自分の力でクリアしてエイギルソン教官の鼻を明かさないと!」

「せ、セルヴィアっ……!? 声が大きいよ……!」

「あら、ごめんなさい……」


 アルにたしなめられ、両手で口を塞いで回りに教官がいないかを確認するセルヴィア。

 幸い生徒達の喧騒にかき消されて誰の耳にも入っていなかったらしく安堵のため息を漏らした。


「今、サラっと読んでみたけどさ、チャレンジ出来る時間は放課後か、授業が休講の時だけって感じだね」

「なるほどね。じゃあ、次の休講日に挑戦するのがいいのかしら?」


 カーラから許可証に添えられていた注意書きを受け取ってセルヴィアが目を通す。


「……どうせなら明日の放課後に一回行ってみない?」

「明日? でも放課後じゃああまり入れないんじゃ……」


 ニヤリと笑って言ったカーラの提案に、アルがもっともな意見を返す。


「明日は場所の確認と雰囲気を把握するのが目的だよ。どうせ多くの生徒は休講日に行こうって計画を練って混み合う可能性が高いからね」

「カーラってば、そういう事には頭が回るのよね……」

「ちょっとぉセルヴィア。そういう事っていうのは余計じゃない?」

「で、でもカーラさん凄いです……。そんな事まで考えを巡らせているなんて……」


 目を輝かせて尊敬するミリエールの視線を受けてカーラが「いやぁ……」と口を開く。


「下調べは放課後にしておいた方がいい、って先輩に言われたもんでね~……」

「……私の尊敬を返して下さい……」

「返却不可だよ」


 そんなやり取りをよそにアルとセルヴィアはというと明日の洞窟探索が決まった事によって気分を高揚させていた。


「明日は洞窟……! 初の冒険、ワクワクするなぁ……!」

「そうね! やっと練習の成果を試せるわね……!」

「上手くやれるといいけど……」

「大丈夫よ! このチームなら最深部だって行けるわよ!」

「おーい? 練習の成果って言うのはすっごく気になるけど、明日は本当に感じを掴むだけだからね……?」


 二人の会話を聞いたカーラが念を押すように会話に割って入ってくる。


「わ、分かっていますっ! 最深部というのは気持ちの話ですからっ!」

「分かってるよー。お二人さんの練習の成果、楽しみにしてるよ」


 そう言ってカーラはニンマリと笑った。


ここまでお読み下さり、ありがとうございました。

次回は洞窟探索編、になるといいなぁ。

そろそろ出番かな……。

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