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0.1.奇妙な戦争


広大な平原に戦闘音が聞こえる。


南西にベネルク王国と北東にプロジャー帝国との中間に位置し、北西は深い森、南東は海が望める草原である。


その草原では奇妙な戦闘が繰り広げられている。


大きな盾を持った戦士3人に弓兵2人で1チーム構成が弓の射程7mギリギリを相手チームと対峙して、その距離を詰めて弓を放っては後退を繰り返してる。


これは両陣営共同じチーム構成の数百チームが一列に対峙してるので、まるで大規模な花いちもんめかフォークダンスを踊っている様だ。


花いちもんめには歌、フォークダンスには音楽が付き物だが、ここでは銅鑼の音がその代わりを果たしている。


ごく少数の弓スキルが3レベルの射程が10mや弓スキル4レベルの射程20mの強者がいるチームがお互いの兵の陣形を壊していく。


ある程度兵の陣形が壊れると一旦引いて陣形を整えて又攻めるという繰り返しだ。


中にはこの状況に痺れを切らして、盾剣士だけで突っ込む輩もいる。


プロジャー帝国第23チーム

剣士1「おらーこんなのは突っ込めば切り崩せるんだ、行くぞー」

剣士2「おおよ」

剣士3「いけいけ」

と攻めこんで行った。

弓兵4「俺たち後衛は、弓矢を放てないじゃ無いか、味方に当たる」

弓兵5「手出しが出来ない」


プロジャー帝国第24チーム

剣士1「俺らはどうする?」

剣士2「行けそうなら行く、やばそうなら手を貸す」

剣士3「命令違反じゃないのか?」

弓兵4「弓矢を射ると第23チームに当たるじゃないか」

弓兵5「だな」


プロジャー帝国第22チーム

剣士1「う、バカが突っ込んで行ったぞ」

剣士2「陣形に穴が開いた」

剣士3「どうすんだ?」

弓兵4「第23チームの剣士ごと弓矢で殺していいのか?」

弓兵5「この場合は矢を放つ事は出来ない」


対する相手は、


ベネルク王国第208チーム

剣士1「うわ、定石を無視したやつがこっちに向かって来た」

剣士2「どうするんだ?」

剣士3「最初はこちらも2~3歩出て相手する、その後徐々に引く、後は弓兵が片付ける」

弓兵4「おれらはどうするんだ?」

弓兵5「最初は剣士に付いて行かないと恰好の的になる」


ベネルク王国第209チーム

剣士1「隣の所にバカが突っ込んで来ている、弓兵やれ」

弓兵4「好機到来」

弓兵5「偶にいるんだよなー」


ベネルク王国第207チーム

弓兵4「隣が引いたら、やつらの後ろから矢を打ぞ」

弓兵5「ああ、分かってる」


こうしてプロジャー帝国第23チームの剣士3人はベネルク王国の弓兵6人と剣士5人に袋叩きで死亡した。


散発的にそういう事が起こるが全体的にはフォークダンスの様だ。


少数だが魔法部隊も存在する、が、第2位階の放出系魔法の射程が7mなので、弓兵と変わらない、もっぱら衛生兵の如くヒール専門になっている。


第3位階の魔法が使える少数の兵は特殊部隊として敵陣形の崩し役をしている。



〔--- プロジャー帝国 ---〕


こうした膠着した戦線の打開策として砦を築いていた、これは戦争が始まる前から作っていた砦なのでこれが強みになるはずだった。


しかし、戦闘が始まったのはその砦から数百メートルも前方の地点だった。


何故なら相手側のベネルク王国兵がそこに陣取って動かなかったから、こちらの兵を進めた結果だった。


プロジャー帝国の砦の中にいる指揮官はボヤいている。


プロジャー帝国軍将、軍務指揮官アロイス・フォン・キースリング「やつらは何を考えてるんだ、何故攻めてこないで、何故こちらが向こうの待っている戦場まで出向かなければならない」

<178cm程度、小豆色あずきいろの髪、ブラウンアイ、キザっぽい丸顔、金刺繍入りの黒のズボンに金刺繍入りのダークワイン色の貴族服>


指揮官「これではこの砦が役に立たないでは無いか」


プロジャー帝国軍佐、軍務補佐官ファビアン・フォン・ビュッサー「戦争を仕掛けたのは我々でして、ベネルク王国側は守りですので、わざわざこの砦迄攻める必要が無かったのでは?」

<181cm程度、青碧せいへき色の髪、イエローアイ、おとなしそうな美男子系、濃紺とライトグレーに金刺繍とラインの貴族服>


指揮官「五月蠅い、これでは陛下に何て言えばいいんだ」


補佐官「これを考えた指揮官がアホだから」

と誰にも聞こえないようにつぶやいた。


指揮官「何か言ったか?」


補佐官「いえ、何も」


指揮官「まったく、この状況をどうしてくれよう」


補佐官「この砦は補給の要になっていますので重要かと」

補佐官はこれしか使い道が無いのに・・・という思いを込めていた。


指揮官「お前は中々良い事を言う」


補佐官「お褒め頂いて光栄です」



〔--- ベネルク王国 ---〕


ここベネルク王国側、後方の補給基地ではある作戦を準備中だ。


空を飛んで補給基地の一角に着地した者がいた。


宮廷魔導士マデロン・デア・フーフェン「お待たせー、ちょっと遅くなったかな」

<158cm程度、菜の花色ベリーショートヘア、イエローアイ、全身皮鎧の戦闘装備、ほの甘系聡明顔>


ベネルク王国軍将、軍務指揮官フスターフ・デア・アーンストート「待ちかねたぞ、フーフェン卿」

<180cm程度、躑躅色つつじいろの髪、ダークグリーンアイ、肉質豪快な顔、あごを長く見せる髭、金色刺繍入り、下が黒、上が赤の軍服>


フーフェン卿「戦闘はー、どんな感じ?」


軍務指揮官「いつも通りの膠着状態じゃな、そこでフーフェン卿の出番と言う事じゃ」


フーフェン卿「あははー、出番ですか」


軍務指揮官「用意したこの盾でどうかな」


大きな鋼鉄製の盾が立て掛けてある、普通の盾と違って、片手で持つのではなく肩と腰からぶら下げる為の革紐が付いていた。


フーフェン卿「これでー、大丈夫だと思う」


フーフェン卿「これ装着するとー、魔法が使えなくなるから、先にフライの魔法を使うから装着手伝って」


軍務指揮官「うむ、任せてくれ」


フーフェン卿「≪フライ≫」

ホヮンと言う音と共に、浮き上がった。


軍務指揮官「フライの魔法を使うところを初めて見たのじゃ」


フーフェン卿「飛んでる所はー、見てるじゃないですか」


軍務指揮官「いや、魔法は音が重要なんじゃ、飛んでる時は音がしないから駄目じゃ」


フーフェン卿「そうな・・・」

ドタッ、ガン、50cmの高さから落ちた。


フーフェン卿「痛っいー、落ちちゃった」

頭を撫でている。


軍務指揮官「何で落ちたのじゃ?、きちんと草は短く刈っといたんだけど」


フーフェン卿「草じゃないー、盾を付けるてる最中に足の爪先が盾に当たった」

落ちた時に盾が頭に当たったので、しきりに頭を気にしている。


軍務指揮官「足の裏に何か当たるとフライの魔法が解除されるんじゃったな、爪先もダメか」


フーフェン卿「頭にー、たんこぶが出来てる」


軍務指揮官「ちょっと休むのじゃ、お茶でもどうだ」


フーフェン卿「大丈夫ー、やる」


軍務指揮官「ストラウケン卿、敬も手伝うのじゃ」


宮廷魔導士、軍務補佐官ロンバウト・デア・ストラウケン「畏まりました」

<173cm程度、赤橙あかだいだい色の髪、グレーアイ、真面目顔、もみあげがないあご髭と、トリミングされた口髭、濃い灰色にブルーのラインのローブ風の魔導士服>


フーフェン卿「≪フライ≫」

ホヮンと言う音と共に、浮き上がった。


フーフェン卿「慎重にー、おねがい」

大きな盾を持ち上げ、繋がってる革紐を慎重にゆっくりと頭から被り縛ってもらう。


フーフェン卿「結構ー、重い」

うつ伏せで宙に浮き、その下に大な盾を吊るす形だ。


ストラウケン卿「これだと、下からの弓矢の攻撃は防げます」


フーフェン卿「そうだけどー、下が見えにくい」


軍務指揮官「まだまだじゃ、盾にこの壺を吊るす、ストラウケン卿一緒に持つのだ」


ストラウケン卿「はっ」

二人で、緑色のスライム燃料をタップリと満載してる陶器製の大きな壺を、盾の中央のフックに吊り下げた。


フーフェン卿「ひゃー、重い、革紐が肩と脇腹と腰に食い込む」


軍務指揮官「なんとかこれで行けるか?」


フーフェン卿「がんばるー、次は革紐をもっと太くして下さい、数も増やして」


軍務指揮官「分かったのじゃ、最後にこれを持て」


小型の壺に燃料とロープが入れてあって、ロープの先に火が付いていた、火炎瓶そのものだ。


フーフェン卿「行って来るー」


マデロン・デア・フーフェンは上空に舞い上がりそのまま敵陣へと飛んで行った。


ストラウケン卿「この作戦効果有るのですか?」


軍務指揮官「どうじゃろ?、別に大した効果なんて無くても良いのだ」


ストラウケン卿「えっ?、どういう事です?」


軍務指揮官「簡単な事じゃ、もし、ストラウケン卿が相手の指揮官だったら、どうする?、砦は食料とか物資とかの集積地になっているらしいし、そこを燃やされたら」


ストラウケン卿「えーっと、使えそうな物資を運び出します」


軍務指揮官「ふむ、それだけか?」


ストラウケン卿「それと、物資の補給を本国に打診します」


軍務指揮官「他は?」


ストラウケン卿「又来るといけないので迎撃部隊を編成して守らせます」


軍務指揮官「それじゃ、迎撃部隊には弓の能力5以上の射程40メートル達人部隊じゃないと弓矢が届かないだろ、数が少ない上にそやつらは戦闘で何をしている?」


ストラウケン卿「相手の陣形を崩す重要部隊です」


軍務指揮官「じゃろ、その重要部隊を砦に戻らせて、守らなければならなくなる、狙いはそこじゃ」


ストラウケン卿「あっ、なるほど」


軍務指揮官「フーフェン卿の作戦が失敗しても成功してもどっちでも良いのじゃ、成功した方がもっと良いけど、失敗でも、成功なのじゃ」


ストラウケン卿「そこまで考えていたとは恐れ入ります」


軍務指揮官「なーに、昨日の夜思いついただけじゃ」


ストラウケン卿「フーフェン卿もよくそんな作戦思いつきましたね、流石この国随一の最強魔導士です」


軍務指揮官「最初は砦とは言ってなかったんじゃが、上から燃料を落として燃やすと言っていたから、砦なら屋根が無いしそこに落とせば効果が上がると提案したのだ」


ストラウケン卿「なるほど、フーフェン卿とアーンストート卿に敬服致します」


その頃、マデロン・デア・フーフェンの空飛ぶ盾と大型火炎壺は音も無く順調に飛行し敵前線の上空を通過しようとしていた。



〔--- プロジャー帝国 ---〕


前線部隊兵が異変に気が付いた。


弓兵5「変なのが空を飛んでいる」

弓兵4「ん?、おお盾と壺が飛んでいる」

剣士1「お前ら戦闘中だぞ、よそ見をするな!」

と言いながら上を見た。

剣士1「何だあれ?壺が飛んでる」

剣士2「前からも弓矢が飛んできている、盾を構えろ」

剣士3「上は、脅威ではない、前に集中」


戦闘中だという事もあり、空飛ぶ盾と壺は見逃されていた。


暫くしてプロジャー帝国後方の砦では


砦の見張り兵1「壺が来ます」

言ってる事は正確なのだが、意味が分からない。


砦の見張り兵2「指揮官、壺が空を飛んでます」


軍務指揮官アロイス・フォン・キースリング「こら、見張り兵、寝ぼけてるんじゃない、そんなのが飛ぶわけないだろう」


軍務補佐官ファビアン・フォン・ビュッサーは、何だろうという好奇心を抱いた。

補佐官「どっちの方向だ?」


砦の見張り兵1「北西の方向に飛んでます」


補佐官は見張り台に上る階段を上がりながら北西の空を見た。


補佐官「壺だな・・・あれは盾かな・・・確かに飛んでる、が、こちらに来る方向では無いな」


階段から降りて

補佐官「指揮官殿、壺と盾が空を飛んでますが、こちらに来る様子ではありません」


指揮官「お前たちは一体何を言ってる、壺や盾が飛ぶわけ無いだろう、俺が見る」

と見張り台に上る階段を上がる。


指揮官「うぉ、ほんとだ、盾と壺が飛んでる・・・何だあれは」


補佐官「何だあれはと言われましても、見た通りの盾と壺だと思います」


指揮官が階段を下りて来た。

指揮官「こちらに来る分けじゃないし、今はいい」


補佐官「確か、魔法辞典に空を飛ぶ魔法が有った様な気がしますが」


指揮官「補佐官、あの書物の文字が読めるのか?」


補佐官「いえ、読めませんが解説本の方で絵が付いてまして、そこに人が飛んでる絵がありました」


そんな会話の途中で異変が起こっていたが、見張り台にいる人達の視界には入っていなかった。


砦の見張り兵1「指揮官、前線が乱れています」


指揮官「何が起こった?」


砦の見張り兵2「前線の一部が崩壊してる様です」


補佐官「一旦兵を下げさせますか?」


その時には壺と盾が真上に来ていた。


砦の見張り兵1「壺が上にいます」


指揮官「何ー、どういう事だ?」


と、その時に空から壺が落ちてきていた。


ダーーン、ガシャ、ピャー、コン、バシャ、パン、ボッ。


落ちて来た壺が割れ、中の緑色スライム燃料が辺り一面に飛び散り広がった、運が悪い事に砦の中に兵の食事を作るためのスライム燃料入れた大型壺も置かれていた、その中の一つが落ちて来た壺の破片が当たり穴が開き中のスライム燃料が漏れだした。


次の瞬間、瞬く間に炎が広がり、燃料がぶちまけられた場所は業火に包まれた。

ゴォーー、ゴォーと燃え盛る炎の音に、阿鼻叫喚の叫び声は聞こえなかった。


【使用魔法】

無属性:第3位階:≪フライ≫:自身のみ飛行する、最大高度50m 最大速度50km/h

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