冒険者登録 その2
奥の部屋へ入るとそこは中央にテーブルがあり6人分のイス、そして壁には見慣れない白い板が貼られていた。
既に先客がいたようで14、5歳と思われる少年と少女が離れて座っていた。
白い板の横には男性の大柄の男が立っている。
「今日はもう一人登録希望者が来たので規則説明をお願いねぇ。」
「うむ。了承した。」と白い板の横に立っている男が返事をする。
風貌はスキンヘッドの歴戦の戦士、といった感じである。
「では、先ほど少し話を進めてしまったが、受講者が増えたということでおさらいといこう。いや、その前にもう一度自己紹介からだな。ハンス君からお願いしようか。」
促された少年が話を始める。
「俺はハンス!家は鍛冶屋なんだけど父ちゃんが打つ前に使い方も覚えとけっていうから冒険者になりきたんだ!装備は全部父ちゃん特製だぜ!」
そういって腰の鞘から剣を抜いて見せる。剣を使えるというアピールのようだ。
まあ、なかなかに暑苦しいが元気があってよろしい。
装備の質も悪くなさそうだ。作った装備に自信があるからこそ息子一人で送り出せたんだろう。
「私はサータリア、サーシャと呼んでもらって構わないわ。得意な武器は弓よ。あなたが僧侶ならうれしいけどその恰好じゃ期待はできなそうね。」
こっちの娘は少し棘がある言い方をするな。
別にパーティを組むわけでじゃあるまいし、俺がなんであれ関係ないはずなんだが。
ともあれ次は俺の番か、しまった、名前が思い出せないんだったな...
さすがに見た目は少女なのだし、男っぽい名前ではない方がいいか、よし『ネム』だ、名前を短くしてネムでいいだろう。
忘れないだろうしな。
「俺はネムだ。体術が得意だが魔法も使える。」
「ふむ、体術か...、だが魔法が使えるなら魔法を主体にした方がいいだろう。
そして、私がガンザスだ。ギルド職員ではあるが現役の冒険者としても活動している。階級は『銅』だ」
ひとまず全員の自己紹介が終わりギルド冒険者の規則説明が始まった。
内容はギルドのシステムと違法行為についてであった。
ギルドの冒険者には階級があり
鉄→銅→銀→金→白金
の5段階に分かれている。
ギルドから紹介される依頼は星の数によるランク分けをし
鉄 ☆1~2
銅 ☆2~3
銀 ☆3~4
金 ☆4~5
白金 ☆5~8
が適正と決められており、低階級の冒険者が適正以上のランクの依頼を受けることは原則として禁止されている。
その他、一度受けた依頼を失敗もしくはキャンセルすると違約金が発生することや報告の仕方、各地のギルドと連携されていてどの町でも同じ階級として依頼を受けることができる等々、一通りの説明を受けた。
だが、説明中に一番気になったことは白い板の使い方だった。
ガンザスが木の棒で板を軽くなぞると、なぞった部分が黒く変わるのだ。
どのような原理なのかを考えてじっと見ていると、真剣に聞いていると勘違いをされ、よく聞いているな、と褒められた。
最後の説明は登録後の数回の依頼は必ずパーティを組むこと、パーティ人数は3~4人、足りなければ鉄か銅ランクの先輩冒険者が加わるとのことだった。
なるほど、それでサーシャという娘が落胆したのか。
先輩冒険者が入るところを俺が1枠無くしてしまったということだな。
「では、各自登録用紙に名前と年齢、そして魔力紋を写して提出してくれ。」
魔力紋とは魔力の波長のことで生まれてから変わることがない。双子であっても同じ波長にはならないといわれている。
親指を押しつけながらほんの少し魔力を流すだけで登録用紙に記録される。