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覚醒してください、勇者(魔王)。  作者: 安泰
動き出す勇者と魔王。

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2-6-2

 ダグラディアス卿との顔合わせは成功し、今後の魔界統一に有利な状況となったものの、いまいち喜びきれないままオリマの家へと帰宅した。そこには随分と焦燥した様子のライライムとメンメンマの姿が。まあライライムに顔はないからメンメンマの表情が主だけど、ライライムも随分と疲れているような感じはあるのよね。

 二人はオリマの姿を見るや、泣きつきつつも人間界で起きた出来事を説明した。

 ざっくりとまとめると、勇者の村の村長と接触していたところ、勇者とその仲間に遭遇。カムミュの存在がないことから仕掛けようとするも、コックンと名乗る人物に一方的に拘束されてしまった。その後接触しようとした住人の恩赦により、バーベキューを一緒にしたあと無事逃げ帰ることができたって感じ。

 いきなり村長に接触してたり、一緒にバーベキューしてたり、ツッコミどころはあるけど大変だったようね。


「サッチャヤンに祝福を施した聖職者か。また随分と厄介な仲間がいたものだね」

「カムミュがいる時点で厄介とかどうでも良くない?」

「いえ、純粋な戦闘力に秀でているだけならまだしも、アンデッドに祝福を施す聖職者ですからね。並の技術ではありませんよ」


 ああ、うん。これまで真面目に考えてこなかったけど、サッチャヤンって呪いをバラ撒くカースアンデッドだったわね。そんな種族を祝福して聖剣への耐性を与えるって普通ならないわよね。


「オリマ様、いかがなさいますか?」

「んー、一応予定通り勇者のところに挨拶にはいくよ。いくつか確証を得たいこともあるし」

「――あの方のことでしょうか?」


 オリマは静かに頷く。キュルスタインは誰のことを言っているのかさっぱりなんだけど、なんだかケーラでさえも分かっているような顔をしているわね。


「ねぇ、キュルスタイン。あの方って?」

「四魔将最後の人物のことですよ」

「ああ、それでケーラでも分かっているような顔をしていたのね」

「私でも……?」


 ここまで散々はぐらかされてきたけど、ついに四人目の素性が明らかになるようね。そろそろ触れなくても良いんじゃないかなって思い始めてきたんだけど、こうやって触れられるとやっぱり気になるわよね!


「その件については後ほどまとめてお話しますよ。それよりもキュルスタイン、人間界に向かう準備を頼めるかな。彼を除く四魔将全員と、僕の四人で向かいたい」

「えぇ……」


 そろそろ強引に食いついた方が良いんじゃない?このまま知らないままで終わるのは流石に嫌なんだけど?うーん、でも勇者のところに向かう準備を邪魔するのはちょっとねぇ……。


「ラ、ライライム達はお留守番していても良いスラ?」

「そうだね、お願いするよ」

「ほっ、良かったメン……」


 オリマの為なら命を投げ出すことも恐れなさそうな魔物怪人の二人がここまで安堵するなんて、余程怖い目にあったのかしら?まあカムミュみたいなのがまた別にいたとすれば気持ちも分からなくないけど。


「随分と怯えているね?そんなにもコックンって男は恐ろしかったかい?」

「それはもう……ライライム先輩が雌であることすら見抜いていたメン……」

「えっ、雌だったの!?てか性別あったの!?」

「ええ、人格的な設定として、性別は組み込んでありますから。ただ見た目では絶対に分かるはずがないので、些細な立ち振舞いや匂い、魔力の質等を参考に推察したのでしょう」


 立ち振舞いって、ぷるぷるしてるだけよね?別に内股とかじゃないし。匂いもちょっと美味しそうな匂いなだけだし、魔力は……ラムネ味だし。


「あの人間はヤバいスラ。きっと何にでも欲情できる超特異性癖の持ち主スラッ!」

「落ち着くんだライライム。まだ人型なら何でも良い許容範囲の広い人物なだけの可能性もある」

「それはそれで特異性癖だと思うわよ?」


 キュルスタインが手早く準備を整え、ケーラとサッチャヤンも合流。早速人間界に向かうことになった。魔王がレンタルワイバーンに二人乗りしての人間界進出って、歴史上初めてよね?


「遅いですわねぇ……でもオリマ様と一緒に空の旅を楽しめるのは嬉しいですわっ!」

「ケーラの背中に乗ればあっという間だけど、それはそれで寂しそうよね」

「ドラゴンの血を引いている立場としては、そちらも魅力的ではありますわ」

「ドラゴニュートでもそう思うんだ……。ねぇオリマ、向こうはキュルスタインとサッチャヤンだけど、この組み合わせってオリマが決めたのよね?」

「ええ。サッチャヤンに長時間触れていると、僕やケーラでは呪いの影響を受けてしまいますからね」

「あ、そういう理由なのね」


 もうちょっとケーラにとって嬉しい理由だったら良かったのに。でも当人は楽しそうだからいっか。

 暫く飛んでいると、魔界の木々にちょっと明るすぎな緑が混ざり始めてきた。人間界の森って夜は悪くないんだけど、日中は眩しすぎるのよね。

 更に進むことで、魔界に生えている木々が見えなくなった。あっさりと人間界についちゃったわね。ま、このへんって魔界にとっても、人間界にとってもド田舎だから互いの監視はほとんどないにも等しいのよね。


「そろそろ勇者のいる村の近くですね。高度を下げて行きましょうか」

「ええ、そうですわ――っ!?」


 突如衝撃が襲ってきた。ワイバーンが姿勢を崩し、急降下していく。一体何が起こったの!?


「ケーラ、何があった?」

「地上から手斧のような物が飛んできて、ワイバーンの首が飛びましたわ!」

「うっそぉっ!?」


 ここって雲が掛かっている上空よね!?地上から投げるにしたって見えないし、当たるわけないわよね!?あ、でもなんかそれができそうな存在に心当たりはあるのだけれど……!

 ワイバーンから飛び降り、オリマを抱きかかえるようにケーラが宙に浮く。異常に気づいたキュルスタイン達の乗るワイバーンも近づいてきたけど――って首が吹き飛んだ!?


「金槌でしたわね、今の」

「なんでこの距離で当てられるのよ!?しかも投擲で!?ってキュルスタイン達落ちてるわよ!?」

「あの二人ならこの高度から落下しても大丈夫ですよ。それにしてもこの距離で補足されましたか。余程優れた目を持つ者がいますね。ケーラ、攻撃に注意しつつ地上へ」

「わかりましたわ!」


 ワイバーンとは比較にならない旋回性能と、速度。それでいてオリマに負担の掛からないように結界を展開するケーラ。こうしてみると本当に頼りになるわよね、この子。道中急な旋回が二度ほどあったけど、特に命中することはなく地上が見えてきた。

 地上には既にキュルスタインとサッチャヤンが待機しており、こちらの方へ手を振っているのがわかった。


「オリマ様、ご無事で何よりです。しかしワイバーン二頭は……弁償しなくてはなりませんね」

「そうだね。もう少し手前から歩いていけば良かったと反省しているよ」


 いやいや、雲と同じ高さにいる相手に手斧や金槌を投げてくる奴とか、想定してたらキリがなくなるわよ?というかワイバーンを一撃で潰すとか、どう考えてもあの女よね?あの女に常識的判断を求める事自体無茶だと思うの、私。


「反省をするのであれば、この地に近づこうとした事自体を反省したらどうかしら?」

「わー、でた……」


 ぬらりって感じで木々の影からカムミュが姿を現した。項垂れているかのような立ち方、両手にはそれぞれ長さの異なる包丁が握られている。……怖っ!大抵の魔族相手じゃ驚くこともないけど、これは怖いわっ!?


「やぁ、臨戦態勢のところ悪いけど、今日は勇者に会いに来たんだ」

「……言っていることの意味が分からないわね?」

「わかっているはずだよ。勇者――エルトも僕が来ることは予測していただろうからね」

「え、そうなの?」


 ケーラの実家でそう決めて、帰るなり真っ直ぐに人間界に来たのよね。それを勇者が予測していた?


「僕らは人間界に入ってすぐに攻撃を受けた。天使を含めた高い精度の観測者がいたとしても、そう都合よく君が居合わせるとは思えない。それに手斧ならまだしも、金槌を持ち込むのはおかしいからね。君は最初から対空用の装備として投げられそうなものを複数持参して森で待機していたんだろう?」

「あ、それもそうか。即補足されることはあっても、迎え撃つ準備をしていたのは来るってわかってないとできないわよね」


 これが砦などで、見張りの兵士とかがいるような状況ならおかしくはないんだけど、カムミュは村人なのよね。魔界に包丁一本で乗り込むような奴が、色々と準備をして待機しているなんて、こっちの行動が読まれてないとおかしいわよね。

 ……ってそれはそれでまずくない?このヤバい奴を事前に武装させて配置してるって、迎え撃つ気満々じゃない!?


「ついでに言えばこの襲撃は君個人が計画したものだろう。もしも勇者が本気で迎え撃つつもりなら、超遠距離からワイバーンを狙うよりも僕らの分析を優先できる状況を作り出しているはずだ。大方無理のない範囲でなら好きに挨拶するといいとか言われているのだろう?」

「……本当に厄介ね、貴方」


 カムミュの反応からして、どうやら図星のよう。えーっと、つまり勇者はオリマが近いうちにやってくることを見越しつつも、カムミュには迎撃したければ好きにしろって放任しているってこと?

 勇者にはもう魔王であるオリマの情報はある程度伝わっているはず。イリュシュアだって側にいるんだから、警戒して当然のはずなのに……。舐められてる?ううん、カムミュの反応からして、そんな感じじゃないわよね。


「こちらはしっかりと戦力を整えて来ています。もしも戦うのであれば、貴方にとっても結構な無理となるでしょう。エルトとの約束を破っても構わないと言うのであれば、貴方個人の意図を汲み取ってお相手します。どうしますか?」

「――いいわ。エルトに会いたいって言うのなら、ここから少し北に作られている小屋で待ってなさい。そこでなら会ってやってもいいって話よ」

「わかりました。それじゃあ皆、ワイバーンの死体を処理したら移動しよう」


 オリマの合図でケーラとサッチャヤンが二匹のワイバーンの死体を集め、ケーラが炎で燃やして処理した。二人ともカムミュとは対峙した関係なのに、随分と落ち着いているわね。今回は最初からキュルスタインがいるからなのか、それともオリマが落ち着いているのならと判断しているのか……両方かしら。








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― 新着の感想 ―
[一言] ただこれ不安要素をあげるならダブル女神によるポンコツ汚染だよね…
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