発覚
翌日十八時、事務所にいたキーノの携帯が鳴る。
「もしもしワイト君。もしかして昨日の件?」
『ああ。まずいぞこれは……』
「え?」
キーノの表情が曇る。
『悪い。余程の用事が無いなら、いや、余程の用事があってもすぐに来てほしい。昨日のカラオケボックスだ』
「分かったよ。すぐに向かう」
キーノは車を飛ばして、昨日のカラオケボックスに向かう。
到着すると、店員に話を通し、すぐに指定の部屋へと向かう。ワイトは先に入っており、部屋番号は既に聞いていた。
部屋のドアを開くと、ワイトとなぜかシロも座っていた。
「お待たせ。で、どういう事なの?」
「これを見てくれ」
そう言うとワイトは、ノートパソコンのモニターをキーノに向ける。
そこには報告書と思しきPDFファイルが映し出されていた。
「もう報告して来たの? どれだけ速いの……」
「言っただろ。こいつは腕はピカイチだ」
『毒島勇人に関する調査結果(一次報告)。今回、調査の依頼が極めて短納期であった事と、未だ調査途中ではあるものの、現時点での判明内容が極めて重大な影響を持つものと判断し、結論が出ていない段階ではあるが、一次報告を提出する。確定ではないが、信頼率九十パーセント程度の情報と思って読んでおいてほしい』
「どういう事? 期限は明日の午前中だったのにそれを曲げてまで一次報告を出してくるなんて」
「こいつはそういう所も信頼出来るんだよ。とにかく読んでみてくれ」
キーノは報告書に目を通していく。
『六月○日。毒島勇人と謎の男がやり取りしていた内容は、赤のカードの取引だ。毒島勇人が持ちかけた赤のカードの取引に謎の男が応じた形だ。その取引内容だが、稀に、赤のカードが特定の条件を満たすと、『紫』のカードに進化する場合があるのはご承知の通りだと思う』
「紫!」
「ああ」
キーノが思わず声を上げる。
「紫のカード。全てのカードの最高峰にして、究極のレアカード。カード使いなら例外なく欲するものであり、私達執行官ですら、まずお目にかかる機会は無い究極のカード」
「ああ。その効果は……」
キーノがワイトの言葉を補完するように言葉を紡ぐ。
「物理法則を無視するカード」
「そうだ。瞬間移動、錬金術、死者の蘇生、タイムスリップ。カードによって効果は違うが、その効果はどれも奇跡を可能にすると言われている究極のカード。裏世界では文字通り桁違いの価格で取引され、世界中の高位ランカーがこのカードを狙ってやってくる」
「そんな……。そんなカードを毒島執行官が……」
「それよりその先だ。その先を読んでくれ」
キーノは言われるままに読み進めていく。そして先を読んでいたキーノの顔がみるみるうちに青ざめていく。
『今回、毒島勇人が取引しようとしているのはこの特定条件下で紫のカードへ進化する赤のカードだ。その特定の条件を満たすべく、打ち合わせをしていたものと考えられる。その特定条件とは…………』
キーノは最後の一文を見て、めまいを起こしてしまった。
『――二千人規模の人間の命を一度に吸うこと』