死神のカード
異能の力を持つカード。
これらのカードは人間が作り出したものではなく、本当に道端にふと落ちていたりするものだ。どこからやって来たのかも一切不明なため、神のカードとも呼ばれたりするカードだが、これらのカードの情報は一般社会からは秘匿されている。こんなとんでもない効果を持ったカードが存在することが知られてしまえば世間は大パニックになるからだ。
例えばスポーツの記録などは全て無意味になってしまうし、超視力などのカードを使えば、どうとでも悪用できるのは想像に難くない。
しかしそうは言っても秘匿できる範囲には限界がある。
どうしても裏世界の人間には情報は行ってしまうし、それによって悪用されることもままある。また、カードはその効果故に裏世界ではとんでもない値段で取引され、それに関連するトラブルも後を絶たない。
そんな裏世界の人間によるカード絡みの犯罪やトラブルを取り締まるのがキーノの所属する組織だ。
組織と言っても機密を守るための国家の組織であり、当然公の組織ではない。
扱いも特殊で、内閣総理大臣直轄の組織という事になっており、その存在は、政府の中でもごく一部の者にしか知らされていない。
ワイトは、キーノの運転する車の後部座席であくびをしていた。
車は周りが山だらけの高速道路を走っている。
「で、今回取り締まるのはどういう取引なんだ?」
「海外のブローカーと日本の暴力団が麻薬の取引をするらしいの。それだけでも充分取り締まれるんだけど……」
キーノは少し間を空けて続ける。
「そこで、『赤』の取引をするみたいなの」
「やっぱり『赤』絡みか」
「うん。助手席に資料置いてあるから見てみて」
ワイトは助手席に置いてある、A4用紙三枚の資料を手に取り目を通す。
『六月十二日。S県S市のM村で行われる麻薬取引。その場で赤色のカードが取引されるとの情報あり。今回の赤色のカードは、固定空間いわゆる結界を展開するタイプであり、発動した場合、一番最悪条件で、十数人規模の死者が出るほどの強力な効果を持っているものと推測される。よってカード取締局・執行官・夢町絹衣乃の権限において、これを没収する』
資料には、今回の取引の主役と思われるブローカーと暴力団の写真や地図なども事細かに記載されている。
「赤……。死神のカード、か。このカードだけはほんと存在が納得出来ねぇ。相手を攻撃する黒のカードですら、カード自体が原因で人が死んだりすることは絶対にないのにな……」
「まぁ、昨日も言ったけど、君たちにはその他大勢の人達を相手にしてほしいだけだから。その点は心配しないでね。あ、必要ならそこにあるカード使っていいよ」
そう言われワイトは助手席に置いてあったポーチを開け中を確認する。
「っは~。さっすが執行官様。国民の税金を使っていいカード取り揃えてやがる。永続型の希少カードが大漁大漁」
「君が言うな~! 言っとくけど絶対返せよ! 返さなかったら即逮捕だからな~」
「へいへい」
ワイトは適当なカードを自分のポーチに納める。そして、改めて資料をぼんやり見つめ考え事をしていると、突然横からシロが身を寄せてきた。
「ワイト! 私にも見せて!」
「だぁぁぁ! くっつくな! 見せてやるから!」
ワイトは顔を真っ赤にしながら、横から突然べったりとくっついてきたシロを引き剥がそうとする。
「何で恥ずかしがるの?! 私達結婚するんだから別にいいじゃない!」
「誰が結婚するだこるぁぁぁ!」
「ひどい! 私を弄んだの?!」
「そういう問題じゃねぇぇぇ! いいから離れろ!」
「君達さぁ……。人が運転する車でバカップル発動するの止めてくれないかなぁ……」
「おいぃぃ! どう見たらこの状況がそう映る!」
「見せてったら! ワイト!」
「まずは離れろぉぉ!」
「はいはい。お熱い事で」
キーノは左手で顔をパタパタと仰ぐような仕草をしながら運転を続ける。
車はますます深い山へと進んでゆく。




