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世界を超える紫  作者: 素人
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裏の駆け引き

 その日の夕方過ぎ。とある飲み屋。

 そこにある完全防音の特別個室で、今宮と毒島は食事をしていた。

「全く、君の手際の悪さにはヒヤヒヤさせられるな」

「い、今宮執行官殿。誠に申し訳ございません。まさかあの小娘が気付いていようとは。全くどこで嗅ぎ付けたのやら」

「紫のカードが絡むのだ。決して油断してはならない」

「は、はい…。申し訳ございません。しかし、今宮執行官殿のお手際はさすがですな。あの小娘を始末するのではなく、執行官の権限を停止させる事で黙らせるとは」

「彼女の力は相当なものだ。直接的な手段では被害が大きい」

「そして考案された作戦により、我々は一切被害を出さず、あの小娘の動きを完全に封じられた。見事なお手際です」

「彼女が執行官のままでは、下手をすれば代表執行官などに相談される恐れもゼロではなかったからな。執行官ではなくなった今、代表執行官は確実に取り合ってはくれん」

「我々のトップ、代表執行官。おお怖い怖い。代表執行官に知られてしまえば我々も一巻の終わりでしたな」

 毒島は、今宮にお酌をする。

「彼女は一人でも妨害に来る可能性がある。その時は君らに任せるよ」

「はっ! 情報収集は随時実施しております。奴には数名の仲間がおり、中でもシロと呼ばれる女は極めて危険ですが、残りは取るに足らない存在です。よって、シロと夢町の二名さえ抑えてしまえばこちらの勝ちは確定ですが、既に対策は完了しております。万に一つも負けは無いかと」

「ほう。それは頼もしい。確か彼女にはもう一人、よく付き添っている人物がいると聞くが、そちらは問題無いのかね?」

「は。エクスワイトとかいう男なのですが、全く取るに足らない存在です。こちらをご覧下さい」

 毒島は一枚の調査書を今宮に差し出す。

『エクスワイト。本名不詳。公認ランク不保持。推定ランクはEランク相当。戦闘能力はランクの分相応といったレベルだが、逃げ足には定評があり、逃げ足だけはSランカークラス』

 それを見た今宮は思わず嘲笑を浮かべる。

 毒島はゲラゲラと高笑いしながら言った。

「カードを落とさないように注意しませんとな! 拾われたら二度と返って来ませんぞ!」

「まあ、赤のカードを取られないよう十分注意したまえ」

「この男の実力ではカードに触れる事すら出来ません。万が一高級な箱を持っていたとしても赤のカードには彼が付いております。この男など、彼の前では数秒と持たんでしょう」

 今宮もそこには異論なく、ただ薄ら笑いをするだけだった。

「それよりも今宮執行官。エルメ=レッドホークの事が、気になります。奴はやはり我々のカードを……」

「恐らくそうだろうな。しかし、彼女は赤のカードが紫化するまでは決して手を出して来ない。自分で紫化をしてしまえば、カード使いにとって最大の禁忌、一般人の大量虐殺に手を染めた事になってしまうからな。よって紫化が完了するまでマンションの下で待機、紫化が確認できた瞬間、突っ込んでくるつもりだろう。いかに彼でもエルメ=レッドホークには勝てんだろうが、逃げるだけなら話は別だ。こちらの方に地の利がある。マンションの外壁を登ってくるような真似をすれば撃ち落とせるし、中を駆け上がるならさすがにこちらに追い付けんだろう。屋上からヘリで逃げればまず問題なかろう。ひょっとしたら何人かに犠牲になってもらう必要はあるかもしれんが」

「屋上で待機される、という事は考えられませんでしょうか?」

「それならば、赤のカードの設置位置を屋上寄りにしてしまってエルメ=レッドホークも巻き込んでしまうというのも一つの手だな。エルメ=レッドホークなら無効化のカードで凌ぎ切ってしまうかもしれんが、それはさすがに彼女にとっても賭けの部分が大きすぎる。成功したとしても力を大量消費してしまう可能性が高い。そうなれば彼にやられてしまう。よって……」

「さすがです今宮執行官! よってエルメ=レッドホークは屋上で待機することは無い、と! そして下で待っているなら、逃げ切れる。完璧ですな!」

「ふふ。まぁ最後まで何があるかは分からない。決して油断しないようにな」

「はっ! どのような紫のカードが誕生するのか。今から楽しみで仕方がありません」

 毒島が下卑た笑いを浮かべると、今宮も薄く笑い、二人は軽く乾杯をした。

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