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「……おいデン、奴を見張っとけよ」
間の抜けた話だが賞金稼ぎの頭目が俺に見張りを付ける気に今頃なったらしい。
いや、逃げないと踏んでいるんだろうが、冒険者どもの一人に嫌みを云われた様だ。
先程まで司祭見習の娘が俺にくっついていたのも馬鹿にされた理由になっていた。人質にされていたらどうしていたんだ、とか。
……まぁ、真っ当な台詞だ。
もっとも、牽制する為に云ったんだろう。
冒険者ども、機会があれば次の隊商と云わず、今商人を襲うのも悪くないと考えている。一人一人が傭兵達の動きに気を付けている感じだ。
もし奴等がその気になったら、不確定要素は賞金稼ぎ三人と……俺だ。
「俺かよ!?さっき馬車を仕舞っただろ」
「いいから、近くで見張ってな。奴をここに連れてくるなよ、御嬢様が癇癪起こすぜ」
乗り合い客や商人達にしてみれば、自分達の近くに俺が居るのはいい気分じゃないだろう。
デンと呼ばれた奴が不平面でぶらぶらと俺の近くに寄った。
ここまで焚き火の熱はこない。ずぶ濡れで馬車の面倒をみたデンにしてみれば嬉しくない話だ。
賞金稼ぎども、冒険者にはめられたな。
俺みたいに独りでいる賞金首を罠に掛けて捕まえるのは出来る様だが、山賊まがいの連中とまともにやり合えるかは疑問だ。
もっとも、冒険者は先に傭兵達を片付けないといけない訳だが。
「よぉ、変な真似すんじゃねぇぞ」
そう言いながらデンは焚き火の方を向いた。
……一応、見張りのつもりらしいが、俺に背を向けて突っ立っているのはどうなんだデン?
俺は両手を軽く動かし、手枷を繋ぐ鎖が邪魔にならない様にした。
鎖が少し鳴ったが、嵐の音でデンには聴こえていない。
半分壊れた窓から、稲妻の閃光が薄暗い寺院の中を一瞬照らす。
その一瞬で俺は状況を確認した。
……冒険者ども、やる気になるのがちょっと遅かったらしいぜ?
他には誰も気付かなかったが……
……一瞬の閃光に映し出されたのは、天井に貼り付くラルヴァの群だった。
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