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「貴様何をしている!?」
アーシェラがラスの所業に気付いてその手を掴んだ。
「ぅう……あ……あぁ!」
駄目だ、恐怖の表情が顔に貼り付いたラスは濁った瞳を左右に揺らしながら声にならない呻きをあげ続けた。
アーシェラの腕を振り払い闇雲に剣を振り回す。思わず飛び退いたアーシェラの後ろに村人の姿が見えた。
「アーシェラ!後ろだ!」
俺の声に反応して振り返るアーシェラ。
その腹に鋭いフォークが突き刺さる。
「ぅぐうっ……おのれ!」
それでもアーシェラは村人の首をはねる事に成功したが、そのまま二人ともくずおれてしまった。
俺は俺で目の前の相手に忙しい。アーシェラの倒れる姿を横目で見ながら、一人を体当たりで転がし、もう一人の首に剣を突き立てる。
「おい、そっちはどうだ?……くそっ」
気が付けばバースが横にいた。
「……これで終わり…か?」
どうやらラルヴァに憑かれた村人はもう残っていなかった。
……そして俺達も。
「……どれくらい経った?」
「じきに夜明けだ……見ろ」
バースの指差す先、鎧戸に覆われた窓の隙間から一筋の光がさしている。
俺は辺りを見渡した。
倒れた村人達の首からぬるりとラルヴァの身体が這い出してくる。
そこかしこからチチチ…と奴等の鳴き声が聴こえてくる。見上げれば天井にもラルヴァが何匹がへばり付き、こちらの様子を窺っていた。
もう終わりにしてやる。
俺は鎧戸に近寄ると、持っていた剣を振り下ろし叩き付けた。
二度三度と剣を打ち込まれた鎧戸はバキバキと壊れ、朝日の最初の光が寺院の中に広がる。
朝日を浴びたラルヴァどもが、湯気を立てながら溶けていく……
それを見たバースが他の窓を開けていった。
やがて薄暗い寺院の中は、焚き火の柔らかい光が弱まり硬質な朝の光で充満した。
「生き残ったのは……四人だけか」
四人?
バースの言葉に、ふと違和感を感じる。
俺はその違和感を無視して、倒れている男の前に立った。
「く……くそ…しくじった…ぜ」
その男、賞金稼ぎのヤザンはまだ息があった。
「て…てめぇ…を」
「それは無理だヤザン。どのみちお前とはここでおさらばするつもりだったからな」
俺は手枷に隠していた鍵をヤザンに見せる。呆気にとられたヤザンの見ている前で手枷を外して捨てた。
「くそが…てめぇ……なんで………」
それが奴の最期の言葉だった。
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