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バース達が壊れた扉に荷物を積み上げてバリケードをこさえ、また俺達は焚き火に集まった。
「……ディック、あの集落から…来るのか?」
「先の戦で潰れた村だ。誰も弔っていない、皆殺しだからだ。死体を埋めていればラルヴァに憑かれないんだが」
「埋める奴がいなかった、か。なるほど」
バースや傭兵達の顔色が悪くなる。
「元々あの集落が皆殺しになったからラルヴァが湧いたんだ。一人二人死んだくらいじゃラルヴァは現れない」
誰も口を開く事無く時が過ぎていく。
焚き火のはぜる音だけが辺りに響いた。
冒険者の成れの果てが襲ってきてから二時間ほど過ぎた頃、沈黙に堪えられなかったらしい傭兵の一人が口を開いた。
「な、なぁ、ディック。さっき埋められた死体はラルヴァが憑かないって言ったよな?」
「……ラルヴァや、他の魔物もそうだが、神々の治める領域には近付けないものだからな。土の下は地母神ダーラの領域だからだろう」
「だ、だったら何故寺院に現れたんですの!?おかしいではありませんか!」
おっと、珍しく俺の話を聞いていたな御嬢様?
まぁ、普通寺院に魔物が現れるなんて思わないんだろうが。
「勘違いしてるぜ?」
「勘違い?何がですの!?」
「ここは、いや寺院というのは人が祈りを捧げる場所だ」
「当たり前じゃありませんの」
「……だがな御嬢様。それは人間の都合で建てられただけで、神様にはどうでもいいものだ」
サーシャはぽかんとした表情で俺を見た。
「ここだって地母神ダーラの寺院だというなら、地下に造ればいい。なんで農村の近くの森に造る?それは村人の都合だろう?」
「そんな……では私達の祈りというものは」
「なんで神々が俺達の祈りをいちいち聞く必要がある?」
そう、地母神ダーラなら大地を豊かにしたいだろう。
だがそれは畑だけの話じゃない。
森の木々を切り倒して、代わりに畑を作る事がはたして地母神にとっての『豊か』なのか?
なかなか難しいところだな。
俺の話に女神の名前を持つアーシェラは鼻を鳴らし、隣に座る司祭見習の娘は口許の笑みを手で隠した。
そしてサーシャ御嬢様は……
まるでうっかり何かを落として壊してしまった時の様な顔をしていた。
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