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俺の昔話が終わるとリーダーは溜め息をついた。
「……なるほど、つまり戦が終わった後にアレは湧いてくる訳か。なら俺達傭兵が目にする機会が無いのも頷ける……ところで」
と、リーダーは話を変える。
足許に転がるデンを指差した。
「これは?この男は確か賞金稼ぎの一人だな、ラルヴァの死骸がついてるが……やられたのか?」
「見ての通りだ」
見ての通り、それは死体だとも。
誰がデンを殺ったのか、とは訊かれていない。そいつが転がってるのは『見ての通り』だ。
「片付けるのを……ああ、枷が付いてるから無理か。おぉい!ピート!こいつを運ぶぞ」
傭兵の一人がリーダーに呼ばれ、二人でデンを担ぎ上げる。
「……なんにせよ今夜は助かった。礼を言う」
律儀だな。
まぁ、律儀でもなければ傭兵達を束ねられないか。
もっとも、礼を言うのはまだ早いぜ?
まだ日没から数えておよそ三時間、といったところだ。
俺の昔話をちゃんと聞いていれば夜が明けるまで礼を言うのは早い。
「何を考えているんですか?」
おっと、まだこいつが残っていたか。
俺は隣に座る司祭見習を横目に見た。
「……この『雨宿り』を始めてからどれくらい経つかと思ってな」
「凄く長く感じますけど、大して経っていない様にも感じますね……数時間前は倍以上の人数が旅をしていたのに」
事が起こればあっという間。
「下の妹の云う通り、時間の経過はその時々によって感じ方はまちまちですね」
「下の妹?」
「え?……えぇ、妹が二人います。でも上の妹とは折り合いがあまり良くないですけど」
司祭を目指しているのに心が狭くていけません、と娘は自戒した。
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