プロローグ
VRMMORPG「ワールド・クロス」
2064年、日本のとある企業が作り上げたフルダイブ型のゲームだ。
「フルダイブ技術」
これは専用のコンソールを頭にかぶせることで脳内で送られた電気信号を直接読み取り、ゲームの世界で自分の体を操ることができる技術のことだ。
このシステムが生まれたのは2040年代後半、当時は医療や軍事関係に使用する目的で作られたためコストが高かったが数年もたてば非常に簡素化して一般家庭でも所有できるほどになった。
しかしシステムの開発費が非常にかかったりするためゲームが開発されるのにはまた数年かかったが。
VRMMORPGの一つ、「ワールドクロス」のすごいところは自由度とデータ量であろう。
なれる種族は人間やエルフ、獣人などが代表的な人間種。ゴブリンやオーク、ハーピィなど外見は人間種と違って醜悪な亜人種。スライムやスケルトンなど多種多様な力を持った異形種など進化後も含め約800種類ほど。
これらの種族にはメリットもあればデメリットもある。
人間種は外見的な部分は本体、つまり現実と一緒にされるが能力は普通である。しかし伸びしろが一番高いため人気は高い。
亜人種は外見が醜悪だが基本的なスペックが人間種より高いため一部の人たちに人気がある。
しかし、一番人気があるのは異形種だ。理由は先程にも述べた通りなる種族によって特殊な能力を持っているためだ。例えばスライムなら物理攻撃半減と酸攻撃である。しかもこれだけでなく亜人種と異形種は進化という特殊な出来事がある。自身の種族レベルをある一定のレベルまで上げたり、特殊な条件を満たすとそのプレイヤーは一段階進化し新たな種族へと強化されるのだ。
ちなみに人間種には戦士や魔術師などの基本職業や賢者や聖騎士、僧正などの上位職業も含め約1000個もあり、これらもレベルや特殊な条件を満たすと転職の館と呼ばれる町ごとにある館で職業変化ができる。
ここまで聞くと異形種らのほうが有利ではないかと思うかもしれないが人間種の場合、職業を二つまでセットできるため最終的な実力部分はどちらも大差ない。例えば回復系の職業と戦士系の職業を持っていればソロでも十分活躍できるからだ。ちなみに今の限界レベルは90である。
そして面白いのはスキルだ。例えば「剣術」というスキルがあるとしよう。このスキルは剣で戦う際に敵に対してダメージアップ、そして剣の扱いに少し補正がかかるものだ。取得条件は剣を使って敵を倒すこと。しかしこのスキル最初は剣術のままだが、剣を振る練習や剣で敵を倒すなどといったことを一定数こなすと「剣術II」となる。こうしてスキルをⅩまで上げていくと今度は「剣術」から「高速剣術」や「魔剣術」などへ派生していく。こうした派生スキルはおよそ1500を超えるともいわれており今もなお発見されつづけている。
つまり、意図的を除き、同じキャラクターはほぼ作れないようなデータ量があるのだ。
また、作りこみ要素も半端ないレベルである。「創造」というスキルを使えば、武器・防具の外見や自身の外装。それに自らが所有する住居などの設定を細やかに変更できるのだ。取得条件が結構面倒くさいが。
例えばグリフォンを倒せばお金に経験値、そしてドロップアイテムをゲットできる。しかしこのドロップアイテムは運次第でグリフォンの卵や住居に飾る用のはく製、ポーション用の骨など様々なアイテムをゲットできる。
さらにゲーム内に一つしかない固有職業「死霊使い(ネクロマンサー)」の固有スキル「死者の軍勢」を使ったり、リッチーのスキル「死霊使役」などを使えばグリフォンの死体からアンデッドモンスターを作ることもできるし、グリフォンの骨からゴーレムを作ったりできる「ゴーレムマスター」というスキルもある。
モンスターの骨で作ったモンスターもデータであるためある程度なら「創造」スキルで外装をいじり自分だけのゴーレムを作ったりできる。
日本人のクリエイター魂を刺激したようなこのシステムはネット上で多くの支持を受け、翌年に発表された取得スキルランキングでは基本スキルである魔術系や武術系を大差で下し堂々と1位に輝いた。
神クリエイターと呼ばれる人物が現れたり、イラストレイターの提携によるスペシャル外装のプレゼントなどもあった。
「ワールド・クロス」は今までのゲームにはない自由性のあるゲームとして多くのファンを獲得していった。
VRMMORPGゲーム「ワールド・クロス」では、モンスターのドロップアイテムの武器もあれば、宝箱から出てくるアイテム。特殊なクエストをこなしたり、ある条件を達成させると手に入る神話級アイテムと呼ばれるゲーム内に30種類しかないアイテムもある。それ以外には鉱物を使って鍛冶や錬金術などで作った武器もあり、これらは装飾もできるし場合によっては普通のアイテムより強くできるので、モンスターを倒すだけでなく、資源を探したり、新しい発見を求めたまさに冒険者とも呼べるような楽しみ方を求めたプレイヤーが続出。
そんな秘境や道を求めて旅立ったプレイヤーを待ち構えていたのは、広大なマップだ。
アスガルド、アルフヘイム、ヴァナヘイム、ウトガルド、二ヴルヘイム、ヘルヘイム、ミッドガルド、ムスペルヘイム、ヨツンヘイム、そして隠し大陸のエルドラドの10個のそれぞれ特徴のある大陸がある。
これらの大陸は一つ一つが北海道4個分ほどの面積を誇る。
辺境にいたら、3週間誰にも会えなかったなんてことがたくさん起こる。
そんな「ワールド・クロス」の中で最強と呼ばれたギルドがあった。全プレイヤー合計2000万人中でLv90にたどり着いたのが約1000人いた中、たった21人でギルドランキング一位を取った最強のギルド。上位ギルド連合5000人の9割を倒し切った伝説のギルドの名は「フェンリル」。彼らを倒すためだけにほかのゲームからプロが2000人ぐらい参加したことも有名である。
このように日本のVRMMORPGゲームとして発売された「ワールド・クロス」は日本のVRゲームの代名詞といえるほどに成長した。
そして5年後・・・・・・・・
「お!なんだ?これ」
「ん?何の話?」
北海道の超優秀高校の屋上で二人の男の子がそのニュースを見て驚いていた。
「はぁ・・・・。やっとか」
都心にある暗い部屋の中で30歳近い男性が何かに渇望したようにため息をこぼした。
この時、日本にいるプレイヤーたちは喜びに震えた。
彼らの目はネットワークに出た一つの情報にくぎずけになっていた。
そこにはこう書かれていた。
新たなVRMMORPG「ワールド・クロス2」販売開始決定!
今回、VRMMORPGゲーム「ワールド・クロス」で有名なマージナル社から重大な発表があった。
それは新たなゲームの発売決定だ。
新たなゲームの名は「ワールド・クロス2」
なんと今回のゲームではもとの「ワールド・クロス」のデータを引き継げるし、新たなプレイヤーたちには特別なプレゼントが配布される。
日本のゲーマーのみんな!喜べ。お前らの楽しみが返ってきたぞ!
こうして全国のプレイヤーは新たなゲームの発売を待ち続けた。
1か月後のゲームが発売されるその日、世界に大きな事件が起きた。
しかしまだ、そのことを知るものはまだいなかった。