主従契約
南の国のカドリングの魔女グリンダの元でしばし滞在する事になった政宗とドロシー。
今までの経緯を説明し、これからの事を話し合う事にした。
『つまりドロシー様を元の世界へとお還しする事があなた方の目的なのですわね』
理解が早くてなによりだ。
『そういえば、あのジジイ俺達を捕まえて誰かに献上するとか言ってたな』
『私、許せませんわ』
それを聞いたグリンダは激怒した。
『御老人をジジイだなんて言ってはなりません』
『そっちかよ!!』
二人はついツッコミを入れてしまった。
気を取り直して再び話し合った。
『あのお爺さん(怒られたから)は俺達を誰かに献上するとか言ってたな』
『うん、言ってたわよ』
『つまりだ。あのまま捕まっていれば俺達は献上された瞬間に目的を達成した事により元の世界に帰れたんじゃね?』
『あ!』
凄く落ち込み肩を落とす二人。
『そうとも限りませんわ。私なら、ドロシー様を召喚する際に本来の目的とは別の目的で呼び出しますわ』
『確かにお爺さんの目的は達成するが俺達の目的は達成しない…………ヤバイッ!!』
突然政宗が立ち上がるとドロシーは慌てて問う。
『ヤバイって何が!?』
『もう一度召喚されたらどうするんだ?』
『私にお任せください。お二人共手を前に出していただけますか?』
二人は言われるがままに手を前に差し出した。
グリンダが手に触れると光が現れすぐに光は消えた。
『なるほどね』
理解出来ていない政宗をよそにドロシーは理解した様子。
『俺にも解るように説明してくれ』
『主従契約よ』
『主従契約?』
『つまりこの魔女が私達のご主人様って事』
ふくれっ面でドロシーは言った。やはりこの魔女を気に入らないようだ。まぁ、確かにけしからん体型だった。
『私と主従契約を結ぶ事で契約を破棄するか、死なない限り他の方には召喚出来ない様にしましたわ』
政宗は今のでようやく理解できた。落ち着いたからか一気に力が抜け落ち眠ってしまった。まるで遊び疲れた子供のように。
『あらあら、よっぽど疲れてらしたのですね。今毛布をお持ち致しますわ』
グリンダが毛布を取りに部屋を出ようとしたその時、
『ちょっと待ちなさいよ』
珍しく真面目な顔でグリンダを睨み付けていた。
『はい、何でしょう?』
『成り行きで主従契約を結んでしまったけど、結局のところアンタは敵なの? 味方なの?』
グリンダは少し考えて笑顔で答えた。
『敵では有りませんが、あなた方の味方をする義理もございませんわね』
何かを閃いた様で、手をポンと叩いた。
『そうですわ。私があなた方に力を貸す代わりにあなた方も私に力を貸してくださいな』
そう言ってグリンダは部屋を後にした。
『まったく、最初からそのつもりだったくせに。本当食えない魔女ね』
ドロシーは政宗の元へと近付き頭に軽く手を乗せた。
『君は心配しなくて大丈夫。私が守るから』
そう言ってドロシーも眠りについた。