南の魔女と予言の書
ー南の国 カドリングー
天井にはきらびやかなシャンデリア、壁には細かい彫刻の装飾、気付けばまるで王宮の一室の様な所へ政宗達は居た。
『ここは……?』
『ようこそ、私の部屋へ』
背丈が高く、桜色のウェーブのかかった腰程までの長い髪、金色の瞳で薄黄色のドレスを着た、気品溢れる女性が立って微笑みかけてきた。
『アンタ何者?』
初対面でいきなり突っ掛かる神ドロシー。
『お初にお目にかかります。私、南の国カドリングを治める魔女グリンダと申します』
グリンダは、ドレスのスカートの裾を両手で摘みお辞儀をした。
政宗は驚いた。
魔女と言えば黒いローブを身に纏い、水と粉を混ぜ合わせて食べるお菓子のコマーシャルに出てくる様な老婆を普通なら大体想像するが、何処かの女神よりも遥かに女神らしい魔女だったからだ。
『で? その魔女が私達をここに呼び出して何の様かしら?』
ドロシーはかなり警戒していた。とても優しそうに見えるが実際はどんな相手か分からないから当然なのかもしれない。
『ウフフ、正確には「連れてきた」ですわ。私が使用したのは召喚術ではなく転移魔法ですもの』
本人は悪気は無いのかも知れない。しかしその発言は火に油を注ぐだけだった。
『はいっはいっ! じゃあ何で「連れてきた」んですかぁ〜?』
『ちょっとは落ち着けって』
そう言い聞かせるが狂犬の如く凄く睨み付けるドロシー。心無しか顔より僅かに下の方へ目線が行っている気がした。
(あぁ……ナルホド)
政宗は納得した。肉付きの良くないドロシーの嫉妬だと。
グリンダは全く気にしていないのか、それとも余裕なのか、ニコニコしている。
『この予言の書に貴方達を転移せよ! と書いて有りましたの』
そう言ってデカデカと「予言の書」と手書きで書いてある本を差し出した。
二人は目が点になり
(うわっ! うさんくせー……) と思った。
今ので毒気が抜けたのかドロシー落ち着きを取り戻していた。
『つまり、予言の書に書いてあったから転移したのであって用事が有った訳では無いってこと?』
どうやら少しドロシーは呆れているようだ。
『はい、その通りですわ。後、こんな事も書いてありましたの?』
そこには「△△時□□分が見せ場的には丁度良い」 と書いてあった。
『見せ場って何だよ! ふざけんじゃねーよ!』
大人しかった政宗も流石にこれにはご立腹の御様子。
『ドロシー様、オズ様。ここでお会いしたのも何かのご縁。しばらくゆっくりしていかれると良いですわ』
『何で私達の名前を知ってるのよ? 自己紹介した覚えないわよ?』
『それも予言の書に書いてありましたわ』
(この予言の書って一体何!?) と思う二人だった。