プロローグー完ー
牢を抜け、盗賊達の包囲網を突破した政宗達。
二人の前には、再び盗賊の親分らしき者の姿があった。
幸いにも部屋には他に誰も居なく、まだ二人には気が付いていない様子だった。
『ん〜ん〜♪』
親分らしき男は酒を飲みながら鼻歌を歌っていた。
『わたしはいだいなかみさまよ〜♪ っと』
先程ドロシーが地下で歌っていた曲だ!!
男は残念な事に頭からあの忌々しい歌が離れなくなってしまったらしい……。
『何? あの歌……?』
政宗が呆れながら尋ねた。
『私が考えたの。素敵でしょ? ねぇ聞きたい? 聞きたい?』
(コイツ時々めんどくせーな)と政宗は思ったが、
『今は遠慮しておくよ。今度ゆっくり聞かせてくれ。それより今のうちに逃げよう』
大人の対応で厄介事を見事回避したのだった。
『不意打ちしたら?』
神のお告げかそれとも悪魔の囁きか? ドロシーは突然政宗にそう告げた。
確かに今こそ最大のチャンス!!
しかし、もし一撃で倒せなかったら? 躱されたら? 伏兵が居たら? そんな事が頭をよぎる。
動けないドロシーを安全な所へ運ぶのが今は最優先だと判断した政宗は、そ~っとその部屋を後にした。
しばらくアジトを彷徨っていると、出口らしき物をようやく見つける事が出来た。
出口を抜けたその時、二人は思いもよらない場所へと辿り着いた。
『これ……どういう事?』
『俺にもわかんねーよ』
そこには辺りは既に夜に成っていたが、地面にいくつか大きな穴が存在していたのがわかった。
政宗達がさっきトンネルを作ろうとしていたドロシーを召喚した村長の家だ。
つまり盗賊のアジトと村長の家は繋がっていたのだった。
ドロシーを降ろす次の瞬間二人は凍りついた様に固まった。
『やれやれ、逃げ出すなんていけませんなぁ』
そこには、死んだはずの村長が目の前で二人を睨みつけていた。
『まるで幽霊でも見た様な顔じゃな』
更に二人を鋭く睨み付ける村長。
『アンタ死んだんじゃなかったのか?』
『死んでなどおらん、ワシの術で幻覚を見せていたまでよ』
政宗の問に村長は応えた。
『完璧じゃったろ? すぐ近くに居たのに、貴様等は気付きもせず人の庭に穴を次から次へと』
『いやぁ楽しくなっちゃって〜つい……なぁ?』
『うん、楽しかったね〜また一緒にやろう?』
ドロシーは政宗の腕を掴み、ブンブンと揺さぶった。
『んなこたぁ〜どうでも良いんじゃ!!』
この時、政宗とドロシーは【シリアスブレイカー】の称号を得た。
村長が手を上げると、村人が次から次へと集まって来た。
『オヤジ〜ごめんよ〜2人を逃がしちゃったよ』
後ろから盗賊の親分らしき者が、アジトから部下達を引き連れてやって来た。
囲まれた!!
『この馬鹿息子が! 大方、酒でも飲んでおったんじゃろう』
2人は親子だったのか? そして村人達も皆村長達の仲間だった。
全ては仕組まれていた。最初から逃げ場なんて物は存在しなかった。
『まったく……演技旨すぎだよ、お姉さん』
『ふふふ、ありがとう坊や』
村長の家に居たお姉さんはキラリと光る針を手に持っていた。
『貴方達の目的は何?』
ドロシーは問う。
『あの方に貴様らを捕えよと命じられてのぉ。神ドロシー。そして……英雄オズを』
『政宗が英雄!? それに何故政宗を!?』
ドロシーは村長が召喚したからわかるが、政宗はドロシーが召喚した。何故村長達が政宗の事を知っていたのか……。
『おしゃべりはここまで……。無傷で捕らえようと思ったが、そうもいかんようじゃな。皆のモノかかれー!!』
村人と盗賊達は、一斉に二人に向かって飛びかかってきた。
もう終わりだ……そう思ったその時!
二人は光に包まれると、その場から姿を消したのだった。