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オズと召喚士  作者: 森ハム
第1章 〜 異世界召喚編 〜
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プロローグ其の弐

 元の世界に帰る方法を探す為にドロシーを召喚した召喚士を知る者を捜索することにした。

 手がかりを求めドロシーと政宗は、ドロシーが最初に召喚された場所へと向かった。

 しばらく歩いていると、村らしき物が見えてきた。

 そこには大きな木造の建物でRPGの村などでよく見かける異世界感たっぷりといった感じの建造物に辿り着いた。

 中へ入ろうとしたその時の事。中から人の気配を感じた。

 召喚士の家族かもしれない。しかし、見知らぬ者がいきなり現れても警戒されるだけだろう。むしろいきなり襲い掛かってくる可能性も否定出来ない。だからといってこのチャンスを見過ごす訳にもいかない。そうこう考える間もなく、

『すみませーん、ちょっと入らせて貰いますよ〜』

 なんて事だ……。後先考えずにこの神様は建物へと真正面から侵入したのだ!

 慌てる政宗をよそに、ドロシーは人の気配を頼りに奥へと進んで行った。

 そこには召喚士と思われる老人の死体とその家族だろうか、見た感じ20前後の女性の姿が有った。

 女性は後退りして身構えた。薄暗く見辛かったが、少し身体が震えている気がする。警戒するのは当然だ。知らない人がズケズケと家にはいってきたのだから。

『貴方達一体何者ですか!?』

 予想通り超警戒されているんですけど……。きっと、正直に言った所で信じてもらえないだろう。どうにかしてこの場をやり過ごさなければ……。

『私はドロシー、このお爺さんに召喚されたんだけど』

 (おーい、何言っちゃてるんですか? この神様は!?)と思いながら思わず口が開いてしまった。空いた口が塞がらないとはまさにこの事だ。

 神というのは堂々としすぎている気もする。まぁ、こんなモノなのだろうか……。

『あ、そうだったんですかぁ』

 あれ? すんなりと受け入れられている? この世界では召喚術は珍しくないのだろうか?

 そして、この世界に召喚されたこと。このお爺さんが死んでしまった経緯。有ること無いこと全てを女性に話した。

 いや、無いことは困る!!

『つまり神様方ご夫婦は村長に召喚されこの世界に来て、帰る方法を探していると……』

 この老人は村長だったのか。立派な家に住んでいる訳だ。政宗は気が付いた。

 お察しの事だと思うが女性が口にした【夫婦】というキーワード! 無いこととはこの事だ。

 しかし、相手が相手なだけに悪い気はしなかったから政宗は快くスルーする事にした。

 もう一度召喚された者が帰る方法について振り返ってみよう。

 ・1つ目は召喚士の意志で帰してもらう。

 ・2つ目は召喚士の目的を達成する事で帰る事が出来る。

 今わかっていることはこの2つだけ。そして召喚士は既に亡くなっているので自動的に選択肢は1つに絞られる。

『最近この村付近では盗賊による被害が増えていると聴きます。村長はそれをとても心配していました。普段は村の女性のお尻を触ったりするスケべなお爺さんなんですけどね……』

 女性は何処か寂しげに微笑んだ。

 スケべなお爺さんはさておき、盗賊の事が気にかかる。政宗とドロシーは顔を見合わせて大声で叫んだ。

『きっと、盗賊討伐が村長の目的だ』

 帰る方法がわかってハイテンションになる二人。だが、政宗は1つ疑問に思った。

『で、どうやって盗賊を倒すんだ?』

『そんなの普通にドーンと倒せば良いのよ』

 固まる政宗をよそにドロシーは満面な笑みを浮かべる。

『素手で?』

『うん』

『真正面から武器も無しに?』

『うん』

『誰が?』

『政宗君が』

 終わった……。政宗は悟った。

 今更だがこの駄女神の性格には問題が有る。とてもじゃないが常識で考えられる思考を持たないらしい。

 普通の学生がどこかの世紀末の救世主の様に盗賊に素手で勝てる訳が無い。それなのにこの女神様はとても楽しそうだ。

『何か策とか無いのか?』

 政宗が尋ねると女神は普通に応えた。

『無いけど、多分大丈夫じゃないかな?』

 平然とそんな言葉を言いますか!? 普通の思考ならば、こんな事はまず言えません!!

『根拠は?』

『さっきも言ったけどこの世界の重力は私達の世界とは違って少し軽いの。だから生態系も違うってこと』

『つまり?』

『この世界の人からしてみれば重い重力で育った私達は超人的な力を持ってるわ。この世界の人を例えるなら火星人ね』

 火星人。それは地球人が勝手に想像したクラゲみたいなふにゃふにゃした宇宙人の事を言っているのだろうか?

 確かに女性の身体は自分達の世界のそれとは違いかなり細く見える。

『試しに外で地面でも殴ってみたら? 面白いんだから』

 言われるがままに半信半疑で政宗は地面を恐る恐る殴った。

 するとどうだろうか、政宗のよく知る異世界ファンタジーの如く、地面が割れ大きな穴が出来たではないか!

 生き物だけではなく、物まで脆くなっていた。

 政宗は驚いた。でも、それ以上に楽しかった。夢中なった。

『おーい、トンネル作ろうぜトンネル』

『うん、初めての共同作業ね』

 嬉しそうなドロシー。そう言って二人は穴に穴を空け始めたその時、ずっと黙り込んでいた女性が口を開いた。

『盗賊は?』

 まさに鶴の一声! 二人の動きは止まった。あまりの興奮に目的を忘れていた。しかし楽しかった。もし機会があればまたやってみたいものだと二人は思った。

 これならイケる! そう政宗は感じた。そして、駄女神と罵った自分の思考を反省した。

 気が付けば辺りには村人がわんさかと集まっていた。大きな音を立てながら穴を空けていたのだから当然だ。

 村人達へ向けて大声で政宗は叫ぶ。

『みんな安心してくれ! 盗賊達は必ず俺が倒す!』

 政宗の声は村中に響き渡った。ざわつく村人達の背後から更に野太い声がした。

『ほ〜う、誰が誰を倒すって?』

 村人達は一斉に声とは逆の方向へと走っていった。

村人達のいた場所には柄の悪そうな輩が大勢いた。普段ならその人相に圧倒されていただろう。しかし今は違った。どんな相手にも負ける気はしなかった。

『さぁ、掛かってきな雑魚共』

 政宗は更にテンションが高まった。人生で一度は口にしたいランキングベスト3に入る台詞を言ったのだ。これぞ男子の憧れと言わず何と言おうか!

 政宗は次から次へと盗賊達を薙ぎ払う。ヒーローが戦闘員を倒す時のように。

 だが次に悪が取る行動はだいたい決まっているものだ。

 お馴染みの人質作戦だ。村の子供が盗賊達に捕まってしまったのだった。

 盗賊の親分らしき奴が子供に刃物を突き付け言い放つ!

『コイツの命を助けたければ大人しくしてもらおうか』

 なんの変哲も無い台詞なだけに鉄板だった。それだけに、政宗はピンチにも関わらず内心嬉しかったりもした。

 ヤバイって感じで表向きはしているが、政宗の心の内は余裕に満ちていた。

 それもそのはず、何故ならこういう時はもう一人の仲間がなんとかしてくれるのだから。

 その場から動けない政宗をよそに、盗賊達は勝ち誇った顔をしている。(ニヤけていられるのも今のうちだけだぜ)そう思った矢先についにアイツは現れた! ドロシーだ!

 ドロシーが人質の村の子供を助け出し形勢逆転! と思いきや

『って捕まってるじゃねーか』

 子供を助けるどころか気を失って人質になってたよ。ただの足手まといだよ。人質が増えたことで政宗は更に動くことが出来ない。何故ドロシーは気を失っているのか? 政宗は思った。

 もしかしたら気を失っているフリをしているのではないだろうか? それなら勝機は有る。だが、そうでなかったら絶体絶命である。そして、その答えはすぐにわかった。

 政宗の腕にチクリと何かが刺さったような刺さっていないような違和感がした。案の定政宗の腕には何かが刺さっていた。【毒針】だ。みるみる目の前が霞んでいく。

『……しくっ……た……』

 政宗はその場にドサッ倒れ込んでしまった。

 次に政宗が目覚めたのは盗賊達のアジトの牢獄の中だった。

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