プロローグ其の壱
初めまして。初めての小説です。文章とか苦手ですがチャレンジしてみました。未熟者ですが読んでもらえたら喜ばしく思います。
見たことの無い空、見たことの無い景色……そして、見たことの無い生物に追われています。
青年は走る。 ひたすら走る。 硬い甲羅の様な物で覆われたゾウくらいの大きさの謎の巨大生物から逃げ回っている。
さっきまでいつもの様に学校に行き、その帰りの途中だったというのに。
青年が走ったその先は大きな崖に阻まれていた。 どうやら逃げ回っているうちにとんでもない所へ追いやられていたようだ。
崖の約10m先には向こう岸が見えるが、走り幅跳び世界記録保持者マイク・パウエルでさえ8m95cmだ。 人間にはとても飛び越えられる距離ではない。 只でさえ青年は如何にも普通が似合うただの高校2年生だ。身長168cm、成績も良くも悪くもないし、これといって優れたものもないのだ。
青年が絶体絶命だと思った時、どこからか女性の声が響き渡った。
『跳んでっ!!』
青年はその言葉につい反射して飛び跳ねていた。
すると、どうだろうか……。 青年にまるで羽が生えたかのように軽やかに中を舞っているではないか。 向こう岸へ無事に青年は辿り着く事ができたのだ。
青年が息を切らせながら振り返ると、そこには謎の生物の姿は無かった。どうやら崖から落ちたらしい。
青年が一息付いていると、どこからか少女が現われ青年に言った。
『大丈夫? やっと会えたね政宗君』
青年は驚いた。 青年の名は『尾津 政宗』。
知らない女性が自分の名前を知っていたから……ではなく、金色のセミロングのストレートヘアーにブルーのリボン、透き通るような白い肌、アクアマリンの様な綺麗なブルーの瞳、とても似合う白のワンピース。 その美しい姿にだった。 見た目は少し幼い顔立ちで身長も少し低め、ざっと150cmに満たないくらいだろうか。そして出るとこは出て………ゴメン出てなかった。
しかし、ほんの一瞬の事だが長い時間見とれていた様に感じた。政宗は、ふと我に返る。
『何故俺の名前を? 君は誰だ? ここはどこなんだ? 何がどうなって、あー……わけわかんねぇー』
クスリと笑い少女は細く綺麗な手を胸に当て言う
『順番に説明するね、私はドロシー。 神様よ』
政宗は首を傾げた。お構いなしに神様? は続けて喋る。
『ここは異世界、そして私を救ってもらうべく君を召喚しましたぁ〜パチパチパチ〜』
『何で俺なんだよ!! 俺じゃなくたっていいじゃんかよ!! 危うくこっちは死にかけたんだぞ!?』
政宗は、血相を変えドロシーに文句を言うと目を潤ませ少しうつむきながら小さく言った。
『だって他に頼れる人が居なかったから』
ドロシーは目を潤ませ、口を尖らせながら両手の人差し指を擦り合わせた。
その言葉と表情にドキッとしながら頭の後ろを掻く。
『君がまだ小さかった頃の事憶えてる?』
『………いや、全く』
『君は言ったんだよ。 神様は誰にお願いするの? ってね』
そんなこと言った様な言ってないような……。 政宗は腕を組みながら少し考えると、突然目を大きく開き、ポンッと手を叩いた。
『思い出した!!』
あれは小学2年生の初詣に家族で行った時だった。
『ねぇお母さん、神様は誰にお願いするの?』
『神様は誰にもお願いしないと思うよ? もし、神様がお願いしたら政宗がお願い聞いてあげたら?』
母は微笑み語りかけた。
そして御参りの時にこう願ったんだ。
「いつか大きくなったら神様のお願い事を叶えてあげたいです」と……。
でもそんな小さな時の事を今更言われても困る。
しかし、子供の戯れ言を真に受けてずっと信じてくれていたとなると胸が痛くなるのも事実だった。
『そんな君の為に好きな娘の隣の席にしたり、同じクラスにしたり、宿題忘れた時には先生が休みになったり、部活でレギュラーにしたり、本当ならとっくに階段から落ちて死んでいた所を軽傷で済ませたり、強盗に殺される所を事前に防いだり色々頑張ってきたのに……』
『あれ? 今サラッと最後の方恐ろしい事を言っていたような……』
『君の事が大好きだから今までず〜っと頑張ったのに〜』
泣きじゃくるその姿がとても可愛く思えた。それにそんな恩が有ったんじゃ断る事も出来そうに無い。
『ゴメン、俺が悪かった。神様の為に何でも協力するよ。』
『……本当?』
潤んだ上目遣いで聞き返してきた。
『うん、本当』
相手が神様なのに馴れ馴れしく答えてしまった。でも、そこには笑顔を取り戻した少女の姿があった。
『ありがとう政宗君。やっぱり君は優しい人だね』
『オズで構いません。みんなからはそう呼ばれています神様』
政宗は今までの非礼を何とかして誤魔化そうと必死になっていた。
『改めてかしこまれると照れるなぁ。 私と君の仲じゃないか、もっと気楽にドロシーで良いってそれと敬語もね。 でも、私はやっぱり政宗君が良いな』
『わかったよドロシー』
そう言うと、さっきまで泣いていたのが、まるで嘘の様にニコニコと、とても機嫌が良さそうだ。
『それはさておき、何で俺を召喚したの? 神様なら何でも出来るんじゃないの?』
気さくに話した。何故なら政宗は順応性にたけているからだ!!
『私もこの世界に召喚されたんだけど、何故か力を無くしちゃって残ったのは多分、召喚する能力だけで……』
照れながら笑う顔も可愛い。
突然政宗には1つ疑問が浮かんだ。
先程は、何故崖を跳び越えることが出来たのか不思議だったのだ。
ドロシーは空を指差した。そこには太陽や月の姿はなく代わりに見た事の無い、何やら惑星らしき物がいくつか見える。
『どうやらあの惑星の引力により地球の重力とは違うみたい』
確かに少し身体か軽い気がしなくもない。
『それでねお願いが有るんだけど、元の世界に帰る方法を一緒に探してほしいんだ』
『何か帰るための手掛かりとかは有るのか?』
『う~ん、今のところは全然』
全然ときた!!
『えっと、とりあえず召喚術について教えるね』
ドロシーは召喚術について語ってくれた。 どうやら召喚術には契約が有って召喚士の意志で帰るか、召喚士の目的を達成する事で帰れるらしい。 しかし召喚される側にはメリットが無いため禁術に近い扱いらしい。
『待てよ? じゃあその召喚士に頼めば良いんじゃん!』
良い案が浮かんで政宗がはしゃいでるとドロシーはズーンと落ち込んでこう言った。
『私を召喚した時に力尽きて死んだわ……』
場の空気が一気に重くなった。 何も知らずに浮かれていた自分が馬鹿みたいだった。 しかし、その場の空気もすぐに変わった。
『なら、その召喚士の知り合いを探しに行こうぜ! 何か知っている事も有るかもしれないし』
『うん、そうだね……そうしよう。 これから宜しくね政宗君』
こうして帰る方法を探す事にしたんだ。
先に過酷な運命が待ち受けている事も知らずに……。