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最終夜

 舞台はなぜか釜揚高校校長室。鈴井校長とブシドー教授が一緒にDVDを見ている。


「ポニョニョン、カワイイデスネ」

「そうですね~、ブシドー教授。不思議な仲間も加わった釜揚サイコロの旅も最終夜。果たして一行の旅の結末は?」


 すると、ブシドー教授が壁に掛けられた掛け軸を見つけた。


「オオ、コレハ日本ノ忍者ガ使ウ巻物ジャナイデスカ?」


 ブシドー教授が掛け軸を取って丸め始めた。慌てふためく鈴井校長。


 -------------------------------------------------------


 3月23日午後4時。沖縄で謎の生物「ポニョニョン」が加わった安永拳、城ヶ崎しげる、玉木浩、ルギーの一行は長崎県のハウステンボスにいた。ハウステンボスで意外な人物を発見した一行は異国情緒、いや異世界体験を堪能したのであった。


 しげる(以下、し)「うーん、まさかあそこでのり先生がいたとは。びっくりしたね」

 玉木(以下、玉)「ああ、しかも奇抜なファッションをしたオランダ人の彼氏も」

 安永(以下、安)「あの人、釜揚港に来たらどうする?」

 玉「俺直視できないね」

 し「俺も直視できんね。普通の格好してても笑っちゃうよ」

 玉「ブシドー教授といい、あの人といい、外国人というのはみんなあんな感じなんですかね?」

 ルギー(以下、ル)「ちょっとちょっと、ブシドー教授とあの人だけで外国人全体把握しちゃダメだよ。もっと普通の外国人もいるから」

 安「本当ですか?」

 ル「本当だって!」


 しばらく沈黙する一行。そして、ルギーが口を開いた。


 ル「みんな楽しんだかな?」

 し「ああ」

 玉「堪能したな」

 安「帰りましょうか」

 ポニョニョン(以下、ポ)「ポニョニョン、堪能してない!」

 安「ポニョンニョンは物足りないかもしれないけど、俺ら4日間もハードな旅してたし」

 し「帰るってことは俺らの町に行くってことだから」

 ポ「そっか、ミフイ様のところに行くのか!ポニョニョン楽しみ!」


 すると、ルギーがホワイトボードに何か書いていた。


 玉「あれ?ルギーさん何書いてるんですか?」

 ル「選択肢」

 し「ちょっと、帰るだけだから選択肢も何もないだろ?」

 ル「フフフ、まあ見てなさい」

 安「その顔、怖い・・・」


 しばらくすると、ルギーが選択肢をみんなに見せる。


 1.安永家

 2.居酒屋ナンシー

 3.城ヶ崎家

 4.玉木家

 5.三日月家

 6.ルギーの実家


 ル「最後の選択肢はこれ!」

 玉「1から4は無難ですね」

 安「5の三日月家ってなんですか?モモッチ、家にいないし」

 ル「ちょっとスリルがないと。あえて行ってみるのもアリかなって」

 安「そんな・・・」


 し「それよりか、6だよ!ルギーの実家って、あぁた神奈川じゃないっけ?」

 玉「神奈川って横浜の」

 ル「ああ。神奈川というとすぐ『横浜』と同じと思われるからな」

 安「横浜じゃなかったらどこなの?」

 し「細かい場所はどうでもいいよ」

 ル「人の故郷を『どうでもいい』って。そりゃないだろ?」

 し「とにかく遠いだろ?」

 ル「ま、まあ・・・そうだけど・・・」

 し「何しどろもどろになってんだよ」

 ル「とにかくお前が振れよ!」


 ルギーが怒りながらしげるにサイコロを手渡す。


 ル「何が出るかな?何が出るかな?それはサイコロにまかせよ!」


 ルギーの掛け声とともにしげるがサイコロを放り投げる。


 玉「2、居酒屋ナンシーですね」

 安「これなら飯がすぐ食えそうだ」

 し「うん、一番無難な目だな。ってなんで嫌そうな顔してんの、オッサン」

 ル「ん、別に気まずくはないよ・・・」

 ポ「お金使い過ぎたんだ!」

 ル「ガクっ!」

 し・玉・安「ポニョニョン、意外と鋭い」


 新幹線に乗り静岡に向かった一行。居酒屋ナンシーに着いたのは午後11時を過ぎていた。

 すると、店の明かりは無く、入口には「貸切中」の看板が。

 4人と1匹が裏口から静かに入っていくと、店のカウンターで安永のおば、ナンシーがビール片手にテレビを見ていた。


 ル「ただいま」

 ナンシー(以下、ナ)「あ、お帰り」

 安「おばさん、入口に『貸切中』ってあったけど。お客さん誰もいないよね」

 ナ「ああ、これから来るから」

 ル「これから?」

 ナ「そう、これから祭りが始まるから」

 ル「あ、そう。で、なんか飯ある?」

 ナ「無いわよ。適当に作って。あ、これから来るお客さんの分も作っておいて」


 一行はナンシーの発言に唖然とした。店の厨房に入り、ルギーの指示で遅い夕食を作り始める一行。


 し「ヤスケン、4月から料理学校行くんだろ?トマトくらいちゃんと切ってくれよ」

 安「自分、不器用ですから」

 玉「それ高倉健の物まね?ケンつながりってことで」

 ル「玉木くん、あぁたそんな古いネタ知ってるなんて・・・」


 3月24日火曜日午前零時。ルギー達が居酒屋ナンシーの厨房で料理を作っていると、扉を開ける音が聞こえた。


「ナンシーちゃん、来たわよ」

「いらっしゃい、あすかちん。それとひかりちんも」

「おじゃまします」


 やって来たのは釜揚高校の教師、戸塚あすかと越ひかりだった。

 二人ともなぜかジャージ姿。あすか先生とひかり先生が厨房をのぞく。


「あれ、君たちなんでいるの?」

「ルギーくんのお手伝い?」

 し「あ、あすか先生にひかり先生」

 安「なんでお二人がいるんですか?しかもジャージ姿で」

 ポ「あ、あすかの巫女様にひかりの巫女様!」

 安「こらっ、ポニョニョン」


 ポニョニョンがあすか先生とひかり先生に近づいた。ポニョニョンを見て目を輝かせる二人。


「かわいい!」

「ほんとかわいい!でも、うちじゃマロンが6匹もいるから・・・」

「あすか、あぁた飼うつもりだったの?」

「だって、かわいいんだもん。ね、ひかり、あぁた飼いなさいよ」

「え、でも、これヤスケンのペットでしょ」


 安永に申し訳なさそうな顔をするひかり先生。


 安「いや、別にペットじゃないですし。うち、魚介類以外だめですから。ポニョニョン、ひかり先生のところでお世話になれば?」

 ポ「うん、ポニョニョン、ひかりの巫女様のところでお世話になる。よろしくね、ひかりの巫女様!」


 ポニョニョンがひかり先生の胸に飛び込んだ。ポニョニョンを上手にキャッチするひかり先生。


「こちらこそ、よろしくポニョニョン」


 あすか先生とひかり先生は座敷に戻って、ポニョニョンと一緒に遊んでいると、またもや扉を開ける音が。


「店長、こんばんは」

「ナンシーさん、こんばんは」

「あ、なっちゃんにアキトちゃん、いらっしゃい」


 あらわれたのは日向夏子と城ヶ崎アキトであった。


「みんな、連れてきましたよ」


 すると、なっちゃんの後ろから数人の男女が現れた。


「どうも、お世話になります」


 なっちゃんを含むこの集団もなぜかジャージ姿である。ルギーが厨房から顔を出すと、集団に気づき驚いた。


「なんで、お前らも来てるの?」

「ルギーさん、こんばんは。いや、店長に呼ばれて」


 集団はルギーマーチングバンドのメンバーであった。すると、また居酒屋ナンシーの扉を開ける音がした。


「おお、来たぞ、ナンシーちゃん」

「お、来たね、ロビンソン!それに校長と和彦くんも。いらっしゃい!」

「どうもどうも、面白そうなので来ちゃいました」


 ロビンソンと鈴井校長、苺和彦もやってきた。そして、3人ともなぜかジャージ姿である。


 十数分後、厨房で夕食を作っていたルギーたちが、料理を運んできた。座敷に料理を運ぼうとする4人を制するナンシー。


 ナ「ちょっと、食いものはとりあえずカウンターに置いて」

 ル「はい?こんなに集まってるのに?」

 ナ「これからイベントが始まるんだよ。ほら」


 ナンシーが指さした先には大きなテレビが設置されていた。


「ナンシーちゃん、そろそろ始まるよ」

「あ、早くつけなきゃ」


 ナンシーがテレビのスイッチを入れる。


「じゃあ、みんな準備して!」


 ナンシーの掛け声とともにジャージ姿の大人たちがテレビの前に並び始めた。

 そして深夜12時半、テレビから陽気な声が流れてきた。

 テレビ画面にはスタイルのいい外国人女性が数人、腰を振りながら踊っている。

 女性たちの踊りに合わせてジャージ姿の大人たちも一緒に踊っている。


「みんな、もっと腰を振って!」


 その中でもナンシーは人一倍気合いが入っている。


 一方、しげる、玉木、安永、ルギーの4人は自分たちで作った夕食を食べながら、大人たちの踊りを見ていた。


 し「これって、噂の」

 玉「コアリズムか」

 安「芸能人がこれでダイエットに成功したって有名だよな」

 ル「最近、ナンシー姉さんハマっちゃって。缶ビール片手にいつも踊ってんだよ。まさか、他人を巻き込んでこんなことになるとは・・・」


 30分後、コアリズムの紹介番組が終了した。ルギーたちが料理を座敷に運ぶ。踊り終えた大人たちが缶ビール片手に飲み食いしている。


「みんな、これ食い終わったら、またやるからね」

「おお!」


 この後、大人たちはふたたびコアリズムをやるようだ。やる気十分である。

 一人を除いては。やる気のない大人に近づくナンシー。


 ナ「ちょっと、ルギー。あぁた踊ってないじゃない」

 ル「おいおいおい。俺は長旅から帰ってきたばかりだよ。それなのに飯は作らされるわ、コアリズム踊れ言うわで。あまりにも無茶振りじゃないの?」

 ナ「おみやげは?」

 ル「はい?」

 ナ「旅行に行ったんでしょ。おみやげの一つや二つくらいあるもんじゃない」

 ル「あ、忘れた」

 ナ「忘れただって?!バカ野郎、罰ゲームでコアリズムだぁよ!」

 ル「わかった、わかったから。せめてこいつらだけは寝かせてあげてくれ」

 ナ「そうね。もう夜も遅いし。子供3人、2階の居間に蒲団があるから、そこで寝ていいよ」

 し・玉・安「ありがとうございます」


 しげる、玉木、安永の3人は2階に上がり、居間に布団を敷いて寝ることになった。


 3月24日火曜日午前4時。居酒屋ナンシー2階の居間。

 しげる、玉木、安永の3人は布団に寝そべっていたが、眠れないままであった。


 し「ただいま午前4時。バカな大人たちはまだ踊っています」

 玉「うるさくて眠れないよ」

 安「おばさん、気合い入れすぎだって。ここまで声が聞こえてくるよ」

 し「しかも十人以上が足ふみしてるから意外と震動が来るんだよな」

 玉「ああ、ある意味『はかた号』よりもハードだわ」

 安「ハードといえばさ、踊らされてるあの人は大丈夫かね?」

 し「いや、ダメでしょ」

 玉「過酷な旅の締めくくりがあれだもんな。寿命が10年縮んだね、きっと」

 安「ああ。生きてたらすごいな」

 し「ああ」


 すると、下から悲鳴が聞こえてきた。


 ル「た、たすけてぇ!」

 ナ「ほら、ルギーまだまだだよ!」

 し・玉・安「ルギーさん、お疲れ様です・・・」


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 舞台は変わって、釜揚高校校長室。ブシドー教授は丸めた掛け軸の巻物を口にくわえて、手を組んでいた。


「オカシイデスネ。何デ忍法ガデキナイノデショウ」

「あのー、それ忍術の巻物じゃありませんから」

「ソウデスカ。残念デス」


 ブシドー教授が掛け軸をもとに戻した。


 十数分後、DVDが終了した。ソファでくつろぐ鈴井校長とブシドー教授。


「『釜揚サイコロの旅』もやっとのことで終了しました!あの居酒屋ナンシーでのコアリズム祭り、私も参加しましたが、夜明けまでやってました」

「鈴井校長、アナタ、若イデスネ」

「いやいや、ブシドー教授ほどじゃありませんよ。では、みなさんまたの機会にお会いしましょう!」

「次回カラ『三日月モモ ウィーングルメ制覇』ガ始マリマス」

「いや・・・それはありませんから・・・」


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