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第3夜「未知の生物との遭遇」

 舞台は釜揚高校校長室。鈴井校長とブシドー教授が一緒にDVDを見ている。


「ルギーハダイブヤラレテマスネ」

「そうですね~言いだしっぺのくせに。ブシドー教授、ここから先は一行が不思議な世界に迷い込みますから見逃せませんよ」

「ソレハ楽シミデスネー」


 すると、校長室をノックして、ショートカットの女性が入ってきた。


「失礼します」

「オオ、コレハ日本ノ伝統的奥ユカシイ女性『大和撫子』ジャナイデスカ?ハジメマシテ」


 ブシドー教授がいきなり女性に抱きつきに行った。鈴井校長が必死にブシドー教授を取り押さえる。


 -------------------------------------------------


 3月22日午後5時半。

 山口県下関に着いた安永拳、城ヶ崎しげる、玉木浩、ルギーの4人はしばし駅の周辺を散策した後、次の目的地を決めるためにサイコロを振ることになった。

 ルギーの書いた行き先はこちら。


 1.くいだおれ 大阪

 2.今度も島 佐渡

 3.北の港町 函館

 4.温泉につかりたい 湯布院

 5.花の南国 沖縄

 6.いよかんうまい 愛媛


 振る人物は、最初にものの見事に『はかた号』を引き当ててしまった安永。

 はたして、安永が振ったサイコロの目はいかに?


 しげる(以下、し)「5… …沖縄。花の南国ですね~」

 玉木(以下、玉)「今日行けるのか?」

 ルギー(以下、ル)「みんな急ぐよ」

 安永(以下、安)「え、もう?」

 ル「最終便に間に合うから。行くよ」


 急いで下関駅に走っていく一行。JRで福岡空港に行き、飛行機で沖縄県は那覇に向かう。


 夜9時。一行は沖縄県の那覇空港に到着した。


 ル「我々、とうとう南の楽園沖縄にやってきました」

 し「やはり沖縄、空気がちがいますね」

 玉「暖かいていうか、暑い!」

 安「今日はもう遅いから早く宿とりましょう」

 ル「いい判断だ、ヤスケンくん。さっそく宿を探そう」


 近くのファミレスで晩飯を食べた一行は、1時間ほど歩いた後、安い民宿に泊まることになった。

 風呂に入った後、布団に寝そべる一行。


 ル「釜揚サイコロの旅も3日経ちましたが、みなさんいかがですか?」

 し「正直言うよ。正直言わせてもらうよ。しんどい… …」

 玉「ああ、優雅な旅のはずが、いきなり半日以上もバスに乗ったり、一日に2回も飛行機に乗ったり。とにかく移動ばかりできつい」

 安「でも普段じゃありえないシチュエーションだからある意味貴重じゃない?」

 し「まあ、貴重っていうかありえない?」

 ル「こんな旅は二度とできないよ。楽しまなきゃ」

 玉「ルギーさん、一番やられてんじゃん」


 ルギーが苦い顔をする。すると、安永が突然立ち上がった。


「トイレ」


 安永は部屋を出て、トイレに行った。数分後、廊下からドタバタと走ってくる足音が聞こえてきた。

 安永が勢いよくふすまを開ける。餌を食べる金魚や鯉のように口をパクパクあける安永。


 し「ヤスケン、どうしたの?」

 安「出たよ… …」

 玉「出たって何が?」

 安「とにかく出たんだって!」

 し「だから、何が?」

 安「ま、丸いのが出たんだよ。しかも、動いたんだよ」

 し「丸くて動くもの?ミッフィーみたいなもんじゃん」

 安「そうそう、ミッフィーみたいなの。でもね、白かったんだよ。白いのが窓の外からこっちに向かってきたんだよ!」

 ル「もしかして、その後ろにいるヤツ?」


 安永が振り向き、ルギーの指さす方向を見ると、白くて丸い生き物がたたずんでいた。

 どことなく三日月モモが飼っていたペット、ミッフィーに似ている。


「ポニョニョ~ン!」


 謎の生物が突如声を出した。驚く一同。


 玉「おいおいおい、鳴いてるよ」

 し「ミッフィーとは違うな」

 安「うん、確かに」

「ミフイ様知ってるの?」


 白い生き物がしゃべり始めた。


 し「うわっ、しゃべった!」

 安「おいおいおい、ミッフィーとはずいぶん違うな」


 白い生き物が安永を見ると、嬉しそうに飛び跳ねた。


「あ、ミフイ様こんばんは。お久しぶりです」

 安「お久しぶり?」


 首を傾げる安永。白い生き物が続けてしゃべる。


「人間にとりついているので、記憶がないんですね。僕、ポニョニョン。僕、ミフイ様についていきます」

 安「ついていくって言われてもね」

 ル「いいんじゃないの。旅の友は多いほうがいいからさ」

 安「いいんですか?」

 ル「いいよ」

 安「じゃついてきていいって、ポニョニョン」

 ポニョニョン(以下、ポ)「ありがとうございます!やったー!」


 新メンバー、ポニョニョンが飛び跳ねた。


 し「ミッフィーがとりついていたんだ、ヤスケン… …」


 しげるがお腹をかかえて笑っていた。


 3月23日午前8時。謎の生物ポニョニョンが加わった旅の一行は民宿の食堂で朝食が出るのを待っていた。

 数分後、1人の老婆が朝食を運んできた。


「グスーヨー、うきーみそーちー。メンソーレうちなーへ」

 一同「おはようございます」

「まーがらら来たぬやいびーんか?うちなーウーいちくろふらーりやいびーん。朝いちちやんどうぞ」

「あ、ああ、はい… …」


 ルギーが力ない返事をする。老婆が去った後、みんながひそひそ声で話し始めた。


 ル「今、なに話してたかわかったか?」

 し「ありゃ、日本語かい?」

 玉「方言だろ、沖縄方言。噂以上にわからんな」

 安「ポニョニョン、なんて言ってたかわかる?」

 ポ「わからない」

 ル「え、なんでよ?沖縄出身だろ?」

 ポ「ポニョニョン、沖縄出身じゃないよ」

 し「じゃじゃじゃあ、どこの生き物さ?」

 ポ「江別」

 玉「どこさ?」

 安「北海道じゃないの」

 ポ「うん、さすがミフイ様」

 し「それがなぜ沖縄に?」

 ポ「そりゃいろいろあって… …」

 玉「ちなみに江別って何が有名?」

 ポ「大泉さん!」

 玉「大泉さんって何さ?」

 安「大泉洋だよ。あのもじゃもじゃ頭の」

 ル「ああ、あの顔が長くて面白い人」

 ポ「ああ、全国区になっちゃったな、大泉さん」

 し「ポニョニョン、何残念がってるのよ」

 玉「あ、また来た」


 老婆がまた食堂にやってきた。


「グスーヨー、メェーやまーさんやいびーんか?しちゅんなやっさーけかめーくぃみそーれーね」

「あ、はい… …」


 老婆の言っていることがまた分からず、適当に返事する一同。


 3月23日午前10時。民宿を出た一行は那覇空港に着いた。

 ルギーがホワイトボードに次の行き先を書いていた。

 10分後、行き先を書き終えたルギーはホワイトボードを一行に見せた。


 1.味噌カツ食いたい 名古屋

 2.やっぱり外せない 札幌

 3.ハウステンボス 長崎

 4.おらべこ買うだべ 東京

 5.もう十分 静岡

 6.うどんが食いたい 香川


 ル「次の行き先はこんな感じです」

 し「この4はなんだよ?『おらべこ』ってなに?」

 ル「いやいやいや、吉さんの歌だってば」

 し「知らねぇよ、そんなの」

 玉「味噌カツ食いたいな」

 安「俺は香川のうどんが食いたい」

 ポ「ポニョニョン、ハウステンボスに行きたい」

 ル「じゃじゃじゃじゃあ、振るのは… …はい、リーダー」

 し「おれ?」


 強引にサイコロを手渡されるしげる。


 ル「何が出るかな、何が出るかな?それはサイコロにまかせよ」


 ルギーの掛け声とともにしげるがサイコロを振る。そして出た目は、


 玉「3だ。ハウステンボス」

 安「ポニョニョン、よかったね」

 ポ「やったー!」

 ル「あっ!」

 安「どうしたんですか、ルギーさん?」

 ル「この丸っこいのどうやって連れていくんだよ?!このままじゃ飛行機に乗せられないぞ」

 玉「そういえば… …」

 し「どうするよ?バッグの中にでも入れてくか?」


 心配する4人を尻目にポニョニョンは喜びで飛び跳ねてた。安永が大きなバッグを持って、ポニョニョンに近づいた。


 安「ポニョニョン、少しの間だけこの中に入って我慢してね」

 ポ「いやだ、ポニョニョン、ミフイ様と一緒に飛行機に乗る!」

 安「でも、このままじゃポニョニョン飛行機乗れないよ」

 ポ「大丈夫、大丈夫。えい!」


 ポニョニョンが突如視界から消えた。あたりを見回す安永。すると小さな声が聞こえてきた。


 ポ「ミフイ様、ここ、ここ」


 耳を澄ますと、どうやらシャツの胸ポケットのあたりから声が聞こえる。

 安永が胸ポケットを覗くと、小さくなったポニョニョンが入っていた。びっくりして腰を抜かす安永。


 安「ええ!小さくなっちゃった!」


 他の3人も安永に近づき、胸ポケットに入った小さなポニョニョンの姿を見た。


 し「よし、これなら大丈夫だな」

 玉「そうだな」

 ル「それじゃ、行こうか」


 3人が意気揚々と飛行機のゲートに向かう中、


 安「ちょっと待って… …」


 腰を抜かした安永はまだ立ち上がれなかった。

 4人と一匹は那覇空港から飛行機で福岡空港まで行き、そこから地下鉄とJRでハウステンボス駅へ向かった。


 3月23日午後3時。長崎県ハウステンボス駅に着いた一行。

 駅に着いた途端、安永の胸ポケットに入っていたポニョニョンがポケットから飛び出し、元の大きさに戻った。


 ポ「うわー、すごいな」

 ル「本当、異国にある感じだね」

 し「うん、まさにヨーロッパ」

 玉「オランダだな」


 立ち並ぶ洋館の素晴らしさに感動する一同。


 安「誰か住んでるのかな?」

 ル「住んでるわけないよ、テーマパークなんだから」

 し「でも、わからんよいきなりオランダ人が出てきたりして」

 玉「ハウステンボスの住人って役のバイトが出てきたりしてな」

 し「そうそう、妙に生活感があってね」

 ポ「あ、家から誰か出てきた」


 洋館の1つからオランダ人らしき外国人男性ががラフな格好をして出てきた。


 玉「おいおいおい、本当に出てきちゃったよ」

 し「まさかとは思ったが、本当に出てくるとは… …」

 安「もう一人、出てきたよ。… …えっ?」


 外国人男性に続いて、もう一人洋館からでてきた。日本人女性だ。なんとその女性は安永たちが知っている人物であった。


 し・玉・安「のり先生?!」


 女性は釜揚高校の教師、藤田のりであった。のりは男性と腕を組んで歩いて行った。

 一同はのり先生に見つからないように後をついて行った。すると、カップルは近くのスーパーに入って行った。


 ル「ハウステンボスにスーパー。なんて生活感のある設定… …」

 し「いや、これ本当に住んでるんじゃないか?」

 玉「そうだよ、テーマパークにスーパーなんて普通ないもんな」

 安「俺はそんなことよりも、あの男のジーパンが気になってしょうがない」

 玉「俺もそう思った。あの尻のポケットのピンクはないだろう」

 ル「しかもなんか漢字が書いてあるぞ。蘇… …動く?いや、微妙に違うな」

 し「あまりにも斬新だ。のり先生、あんなジーパンはく男と付き合うとはさすが… …」


 しげるの言葉に一同うなづいた。


 -------------------------------------------------


 舞台は変わって、釜揚高校校長室。

 校長室に入ってきた女性に抱きつこうとしたブシドー教授を鈴井校長が必死に押さえていた。


「ブシドー教授、いきなりハグはあぶないですから。ここは日本なんですから」

「ハイハイ、ワカリマシタ。ソレニシテモ、美シイ」

「あのー、お邪魔しました。失礼します」


 女性はお辞儀をして、校長室から出ようとした。


「ごめん、来客中で。教育実習にきた学生さんだよね。1時間後にきて」

「はい、わかりました。失礼します」


 教育実習生が校長室を出た後、またDVDを見る二人。


「さて、『釜揚サイコロの旅』も第3夜。沖縄、長崎で不思議体験をした一行。次回は最終夜。果たして旅の結末は?お楽しみに!」

「鈴井校長、後デアノ女性ノ携帯ノ番号教エテクダサイ」

「だめですって。お年を考えてください。まったくこの年で若い娘にナンパとは… …」


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