5.脳筋少女、商人と話す。
全員起こそうと思いましたが、少女は少し考え、まずは商人を起こしました。
「う……ここは?」
「大丈夫ですか?」
「あ、貴女はさっきの……!」
商人は飛び起きました。
少女に殴られたのを思い出したのでしょう。
反射的に身を守ります。
「ごめんなさい」
少女は商人に謝りました。
「え……?」
商人はポカンとしています。
少女はもう1度「殴ってごめんなさい」と謝りました。
可憐な少女が目を伏せて謝る姿はなんだか胸にくる光景です。
盗賊Cなんかは目を擦って「機能障害か……?」と呟いています。
「えっ! いえ! 大丈夫ですよ。こちらこそ助けて頂きましたし!」
そんな少女の姿に商人は慌てて許します。
少女はちょっと考えが足りなくてちょっと力押しでちょっと手が早いですが、謝ることのできる良き脳筋なのです。
だけど、殴られたにもかかわらず、許してあげる商人はとても心の広い良い人でしょう。
「許してくれてありがとう」
少女は晴れ晴れと笑いました。
商人は少女の村とは別の村から色々な商品を買い付けて、この先の町で売るつもりだったようです。
良心的な商人は自分の利益も勿論出しますが、村の人達も儲けられるように、なるべく高く買い取っているらしいです。
そのため、この商人が来ると皆いっぱい買い取ってもらおうといっぱい作ったものを持ってきます。
それで今回はいつもよりも荷物が増えてしまい、荷馬車のスピードが落ち、盗賊達に目をつけられてしまったみたいです。
少女は商人の話を聞いて、何やら考え込んでいます。