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42.脳筋少女、怒られる。


 夕陽が照らす宿屋街。

 ざわざわ行き交っていた人々が、足を止めて少女たちを見ています。少女は、もげた扉を不思議そうな顔をして持ち上げます。


「あら、扉が取れてしまったわ。……もしかして、壊れていたのかしら?」

「違う!!」

「違うから!?」


 首を傾げる少女に盗賊Cと少年はツッコミます。

 少女に慣れている盗賊Cはまだしも、こんな往来で扉をぶっ壊した少女に少年は顔色を青くしました。

 とりあえず、宿屋の人を呼ぼうと少年がぽっかり空いている入り口をくぐろうとした、その時です!


「何事だぁあああああ!!」


 中に入ろうとしていた少年を撥ねながら、外へ人が飛び出して来ました。


 酒焼けしたしわがれた声。

 大きな体には強靭な筋肉がはち切れんばかりについています。

 そして、ムキムキの筋肉は夕陽に照らされて黄金に輝いています。

 そう。そこにはキラリと光る筋肉がいました。


「やっぱりか。やっぱりなのか……」


 盗賊Cは項垂れました。





 宿屋の主人らしき男は周囲を見回します。そしてある人物のところで視線が止まりました。


「アンタが犯人だな!!」


 そうして、思い切り怒鳴られたのは──盗賊Cでした。


「え!? 何で俺」


 盗賊Cは仰天しました。

 まさかの自分。

 今までにないパターンです。

 しかし、よくよく考えてみるとわかります。

 華奢で可憐な少女と線の細い優しげな顔立ちの少年、そして犬(に見える)のクロと中肉中背で少々人相の悪い盗賊C。

 たとえ少女が扉を持っていようと、パッと見では盗賊Cが一番悪いことをやっていそうです。

 

「誤解だ!」

「なにおぅっ!? しらを切る気か! ちょっとこっちこいや」


 なんということでしょう。

 勘違いで盗賊Cが連れていかれそうです。

 盗賊Cは助けを求めるように辺りを見回しました。

 野次馬はサッと視線をそらします。巻き込まれることを恐れているようです。

 天才剣士の少年は撥ね飛ばされた時に頭を打ったのか、のびています。肝心なところで役に立ちません。

 続いてクロを見ます。クロは果敢にも宿屋の主人らしき男に飛びかかります……が、筋肉に弾き飛ばされました。残念です。


「クロ!?」


 盗賊Cはクロの無事を確認しようとしましたが、目の前の筋肉に阻まれました。

 盗賊Cに向かってゴツい手がのびます。盗賊Cは顔に絶望を浮かべながら、その手をじっと見つめていました。

 しかし、その手が盗賊Cに触れることはありませんでした。


「待ちなさい」


 少女です。少女が宿屋の主人らしき男の手を止めました。


「なんだい、嬢ちゃん」

「あなたは誤解しているわ」

「なんだって? なら、犯人は……」


 少女は、真剣な眼差しで宿屋の主人らしき男を見つめます。

 時が静止したかのような錯覚に陥りました。

 少女は、口を開きます。


「私よ」

「……なんだって?」

「私が扉を壊したの」


 少女がきっぱりと自白しました。

 周囲がどよめきます。


「……。アンタか!」


 宿屋の主人らしき男はちょっと考えたあとで、思い切りツッコミました。


 この後、宿屋の主人らしき男は自己紹介をしたあとで「勘違いをして悪かった」と盗賊Cに謝りました。盗賊Cも「こちらこそ、すみません」と謝ります。

 そして、うんうん頷いていた少女は両方からこってり怒られました。その様子を目を覚ました少年が呆れた顔で見ています。



 ちなみに、お金が無かったので扉の弁償代は少年が立て替えることになりました。

 

ここまで読んで頂きありがとうございました。


あとで少し手直しするかもです。

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