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39.脳筋少女、火竜退治について話し合う。


 役人の男性が火竜について説明をしてくれました。

 南にある火山のどの辺に棲んでいるか、一番近い町はどこになるのか。

 天才剣士の少年と少女一行は、必要だと思われる情報を一通り聞きます。

 情報を話したあと、役人の男性は「では、仕事に戻ります」と言って帰りました。



***



 「まずは、火竜が棲んでいる南にある火山に一番近い町に行きましょう」


 少女は役人の男性の話を聞き終わってから、開口一番にそう言いました。盗賊Cとクロが頷きます。そして、とりあえず少女たちはお互いに自己紹介したあと、宿に帰ってから詳しいことを話し合うということで合意しました。

 未だに納得出来ていない天才剣士の少年は“もう一度説得してみよう”と内心で決意し、少女たちと一緒に宿屋への帰り道を歩きます。


 到着した宿では、濃い宿屋のオヤジと儚い看板息子に熱く出迎えられ、少年が目を白黒させていました。盗賊Cは、その熱い歓迎ぶりに遠い目をしています。

 宿に入るだけで少年はぐったりしていました。

 なんとか席につき、食堂でそれぞれ好きなものを頼んでから作戦会議に入ります。


「……僕は未だに納得出来ない。やっぱりキミたちはやめておいた方がいいんじゃない?」


 少年がぼそりと言いました。とても真剣な表情をしています。


「まだ言っているの?」

「そりゃそうでしょ。お金を稼ぐといってもそんな危険な事をしなくても稼げるでしょ」


 少年は真面目に言います。盗賊Cは“なんて真面目でイイヤツなんだ……”と内心でほろりとしています。

 だけど少女は少年の言葉に胸を張って反論します。


「何を言ってるの? 無理に決まっているでしょ」

「? どういうこと?」


 あまりに自信満々な様子に少年も少し態度を和らげました。そして聞く体勢になります。しかし少女は少女でした。


「私、村では働く分物も壊す女ってことで雇ってもらえないのよ」

「え! なにそれ!?」

「だから……仕方ないのよね」


 少女は“フッ。完璧だ……”という風情ですが、少年の顔には“理解不能だ”と書いてあります。あまりに可哀想なので、盗賊Cは先輩として優しくフォローを入れてあげました。


「これがお嬢だ。諦めろ」


 なんのフォローにもなっていませんでした。

 可哀想ですが、これが現実です。少年には慣れてもらうしかありません。

 ガックリとする少年をクロだけが慰めていました。



***



「では、火竜退治について話し合うわよ」


 美味しいご飯を食べて満腹になったあと、食後のお茶を飲みながら少女が口を開きます。

 盗賊Cは即座に言いました。


「とりあえず、食料の買い出しは俺が行くから」

「え、まずソコ!?」


 少年がビックリしています。確かに食料は大事です。無いと生きていけません。

 しかし、話し合いの最初に来るとは少年も考えていませんでした。普通は火竜の特徴や弱点、自分達の得意とすることや連携について話し合うものだと思っていましたので、完全に予想外です。

 しかし、盗賊Cはそんな少年を見て悟りの境地に達したような表情を向けました。少年は盗賊Cが何故そんな表情をするのかわかりません。


「俺は、お嬢と一緒にいることで食料の危機に瀕したことは両手両足の数でも足りないんだ」

「…………」

「お嬢に三人分を用意してもいつの間にか無くなっているんだ」

「………………」

「そして、俺たちの分も無くなっているんだ」

『クゥン』

「……………………」

「な? 食料が一番大事じゃないか?」

「……うん。そうだね」


 理解してもらえて良かったと盗賊Cは頷いています。

 少年はこの人たちと“一緒にいても大丈夫なのか?”とさっそく不安になってきました。

 そして、少女がニッコリ笑って宣言します。


「作戦はもう考えているわ。安心して」

「ちなみにどうするんだ?」


 この先の展開はなんとなく予想がつきますが、盗賊Cは一応聞きました。


 

「ガンガンいきましょ」


「……あぁ、うん。そうだと思った」



 期待してなかった盗賊Cは、軽いため息を吐いたあとすっかり冷めてしまったお茶を飲み干しました。


「……大丈夫なの? コレ」

「……まぁ、コレで意外と大丈夫なんだ」

 

 

 

 

 

 少年はイマイチ不安そうでしたが、とりあえず今回の話し合いはこれにて終了しました。

 

ここまで読んで頂きありがとうございました。


後で少し手直しするかもです……。

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