35.脳筋少女、噂の天才剣士に挑戦する。
「よっしゃあ! 勝った!!」
「勝ってくれると信じてたぞー!」
「くそー! 負けた!! オレの小遣いがぁぁぁ!!!」
試合が終わった広場は、歓声と絶望の声に溢れかえっています。どちらに賭けたかによって、お財布の中身が大幅に変化したようです。
「いやー、凄い試合だったな! どちらも強かった!!」
隣にいた男が、盗賊Cの肩をバシバシ叩きながら、興奮したように話しかけてきます。中々の接戦で、周囲の観客は一喜一憂しながら、両者を熱く応援していました。
技術と経験のある傭兵の男も勿論強かったですが、最終的に天才剣士の少年が勝ちました。
お財布の中身が減った人は残念ですが、とても見応えのある試合になりました。
興奮する観客たちに、賭けの胴元は声を張り上げます。
「さて、ここからは飛び入り参加が出来る特別試合だ!! 我こそはと、この王者に挑戦するものはいるかぁ!? 勝ったら賞金はお前のものだぞ!!!」
どうやら飛び入りで天才剣士の少年に挑戦出来るようです。
しかし、先程の試合を見ていた観客たちは、ザワザワするだけで、尻込みして誰も前に出ようとしません。
しばらく見回してから、挑戦者が現れなさそうだと判断した賭けの胴元は、もう一度声を張り上げます。
「おぉっと、挑戦者は誰もいないか? そうすると、この賞金百万Gは、勝者の────」
「待ちなさい」
ざわり、と空気が揺れました。
賭けの胴元の勝者宣言の言葉を遮る者がいたからです。
「私が勝ったら、その賞金は私がもらえるの?」
「は? あ、あぁ。そうだが……」
賭けの胴元の困惑する声が広場に響きます。
なぜなら、待ったの声を掛けたのが……可憐な少女だったからです。
荒事とは無縁そうな少女に「もしや、飛び入りする気か?」と、この場にいるものは皆困惑します。
天才剣士の少年も目を見開いて、少女を見ています。この同年代の少女が何を言い出すのか……という表情です。
クロはカパリと口を開き、びっくりした顔で少女を見上げます。
盗賊Cは「ああぁぁぁ……」と盛大に溜め息を吐いたあと、天を仰ぎました。
ここまで読んで頂きありがとうございました。
ど……どうしてこうなった。




