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25.脳筋少女、ペットを手に入れる。

あるじ



 今まで黙ってお座りしていた黒狼が声をかけてきました。


「ん? なに? クロ」

「主? クロ?」


 盗賊Cはなんとなく予想はつきますが、疑問に思ったことを尋ねます。


「あぁ。この子黒いから、クロって名前を付けたのよ」


 可哀想なくらい単純な名前です。


「……あんたはその名前でいいのか? 元の名前とかは?」

『我は構わん。元々の名前は棄てたのだ!』

「そうか……」


 狼の表情などはわかりませんが、どこかドヤァとした雰囲気に、盗賊Cは複雑な顔で納得しました。


「主ってのは?」

「躾した結果ね」

『我の上位者として認めたのだ』

「……。えー……俺もクロって呼んでいいか?」

『うむ。許可しよう!』


 そこはかとなく漂う似た者オーラに、盗賊Cは深く考えることを放棄して、魔女からもらった胃薬を一気に飲みました。



***



「で、クロはこのあとどうするんだ?」



 魔女から依頼された薬の素材も採取し終わり、村長の奥さんが作ってくれたお弁当を山頂の景色のいいところで食べていたとき、ふと盗賊Cがクロに聞きます。


「え? 一緒に行くわよ?」

『主と一緒に行くが?』


 少女はともかく、クロも一緒についていく気満々です。

 盗賊Cはキュッとした胃の上に手を置きます。

 どう考えても自分が振り回される未来しかみえません。

 盗賊Cは諦めのため息をつきつつ、話を続けます。


「……まぁ、それはいいんだが、そもそもどうしてこの場所にいたんだ?」

「あ、そういえばそうね。クロはなんでここにいたの?」


 少女も疑問に思ったようです。



『うむ。魔王に喧嘩を売ったら、返り討ちにされてしまってな。それで、ちょっとこの地に避難してきたのだ』


「ちょ、おいぃぃぃぃい!!!!!  何してんの? 何しちゃってんの!!? 軽いよ!!」



 クロはあっさりと爆弾発言をします。

 盗賊Cはあまりに軽く言われた台詞に、全力でツッコミます。

 しかし、少女は特に気にせず、さらりと話を続けます。


「あら、負けちゃったの?」

『うむ。誠に遺憾ながら、負けたのだ。いいところで四天王に邪魔されてな』

「邪魔されたの? 一対一の喧嘩に割って入るなんて、無粋ね!」

『だろう!? 次に会ったら噛み殺してくれるわ!』


 少女とクロは盛り上がります。

 盗賊Cはぼんやりとその様子を眺めます。

 “え?俺がオカシイの?”“何でコイツらこんな盛り上がるの?”“魔王に喧嘩を売るって、そんな軽い話だっけ?”盗賊Cは自分の常識が間違っているのかと一瞬でも考えてしまいました。


 しかし、おかしいのは確実に少女の方です。

 クロが魔王という恐怖の代名詞に喧嘩を売ったことに対して、特に何も思っていないようです。

 むしろ、一対一に割って入った四天王に憤っているみたいです。


 盗賊Cは、もう深く突っ込むことは諦めました。

 この少女と付き合っていくには、常識とおさらばしないとやっていけません。

 盗賊Cは強引に話を戻すことにしました。


「……それでだ、このあと一緒に付いてくるってことだが、そんなに大きいと目立ってしょうがないぞ? どうするんだ??」

「そうね。食費もかかりそうだし」


 盗賊Cは“お前が言うな”と思いましたが、黙っていました。


「んー、小さくなったり出来ないの?」

「オイオイ。無茶言うな──」

『出来るぞ?』

「出来るのかよ!」


 盗賊Cは少女の無茶ぶりについツッコミを入れようとしましたが、クロにあっさり頷かれました。



ポン!



『この通りだ』


 五メートルほどあった体長が、二十センチくらいの仔犬サイズになりました。

 くりくりっとした瞳で上目遣いに少女を見て、シッポをふりふりしています。


「か」

「か?」

「可愛いわ!!」


 少女はガバリと抱きつきました。


『キャン!?』

「毛がサラサラ! 上目遣いがあざと可愛い!! モフモフ!!!」


 どうやら少女の心の琴線に触れたようです。

 一心不乱にクロをなでなでしています。

 クロが段々ぐったりしてきました。

 盗賊Cはクロに心のなかで合掌しました。



***



 存分にモフモフしたのか、少女はツヤツヤしています。

 反対にクロはげっそりしています。

 ツヤツヤな少女が口を開きます。



「じゃあ、クロはこの姿でいいわね! そろそろ村へ帰りましょ」



 すでに結構な時間が経っていました。

 あまりに遅いと村長夫妻が心配しているかもしれません。

 少女と盗賊Cとクロは、村へと帰ることにしました。


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