22.脳筋少女、情報収集をする。
さて、西の村の村長にこってりと絞られた少女と盗賊Cでしたが、誠心誠意謝り、門を弁償するということで、話はつきました。
一息ついたところで、村長が少女に尋ねます。
「ところで、お主らは村に何の用で来たんじゃ? この村はとくに主街道沿いにある、というわけでもないじゃろ。珍しいものがあるわけでもないしの」
村長は少し厳しい顔つきです。
何の目的でやってきたかわからない二人を警戒しているようです。
少女は腹芸など致しません。直球勝負で言いました。
「実は白薬樹の魔女に頼まれたのよね。この村で採れる素材が薬に必要だから、採れそうなら採ってきてって」
「! なんと! 白薬樹の魔女様が……」
「なんでも、魔獣が出たとか? 詳しい話を知りたいのよね。教えてもらえないかしら」
「そうか。そこまで知っておるのか……。詳しい話をするならここじゃなんだ。ワシの家で話そうか」
村長は村人に簡易的なものでいいから、とりあえず門を塞ぐように言い、少女と盗賊Cを村の中に招き入れました。
村長について歩きながら、盗賊Cは聞きました。
「すみません、この村って宿屋とかありますか?」
「こんな小さな村にあるわけないじゃろ。安心せい。ワシの家に泊めてやるわい」
村長の言葉に盗賊Cは安堵しました。
小さな村だと宿屋がない場合も多いです。その場合家畜小屋か、それすら無理な時は野宿です。
それに比べれば、門を壊すという迷惑を掛けたにもかかわらず、泊めてくれる村長はとてもお人好しの部類です。
盗賊Cは村長にとても感謝しました。
「ありがとうございます。お世話になります」
「構わんよ。白薬樹の魔女様の知り合いを野宿させるわけにもいかんしの」
そうこう話しているうちに、村長の家に着きました。通るときに見た他の家と比べると一回り大きいようです。
「ここじゃ。さぁ、中へ入っとくれ」
「お邪魔します」
「お邪魔するわね」
村長の家は木造の二階建てで、木の温もりが心地よい雰囲気を醸し出していました。
村長の奥さんがいれてくれたお茶を飲みながら、続きを話します。
「さて、先ほどの続きじゃが……。まずお主らは戦えるのかの?」
「負けたことないわ」
「……。これをご覧ください」
盗賊Cは内心で“マジかよ”と思っていましたが、ツッコミは入れずに荷物からあるものを取り出します。
盗賊Cがゴトリとテーブルの上に“大牙猪”の牙を置いたのを、少女と村長が注目します。
そうです。少女が仕留めた“大牙猪”のお肉は食べましたが、牙は食べられないので、売るために持ってきていたのでした。
村長は目を見張りました。こんな立派な牙は早々お目にかかることなど出来ません。
「これは、もしや……」
「昨日狩ったばかりの“大牙猪”の牙です」
「やはり! 成る程のう……。これを仕留めることが出来るなら、実力は十分かの」
村長は納得します。
“大牙猪”は生半可な者では狩ることが出来ません。
二人は特に怪我をしている様子もないので、相応の力量はあるのだろう……と村長は考えました。
「この村には特筆すべきものはないが、唯一、山に生えてる薬の素材が特産と言えるものじゃ。まぁ、白薬樹の魔女様にしか卸してないがな」
「? なんであの子にだけ?」
「そう量が採れないのもあるが、白薬樹の魔女様には恩があるんじゃ」
「恩?」
「昔、村でタチの悪い病気が流行ったときに助けていただいたんじゃよ。だから、少しでも白薬樹の魔女様のお役に立てるならと思うてな」
「へぇ、そうなの」
「だが……あの魔獣が住み着いたせいで、なかなか採取が出来なくてな」
村長は悔しそうです。
出来ることなら自らの手で魔獣を追い出したかったようです。
少女はそんな村長の様子をじっと眺めています。
盗賊Cが続きを促しました。
「それで、その魔獣はどんな姿なんですか?」
「採取に行って、怪我した者の話では、一頭の巨大な黒狼だったそうじゃ」
「! 黒狼……この辺には生息していないはずですよね?」
「そのはず……なのだがのう。何らかの理由でここまで流れてきたみたいじゃ」
「……厄介ですね」
狼系の魔物はスピードも力も厄介極まりないです。特に群れると討伐難易度が跳ね上がります。
しかし、一頭だからといって油断できる魔獣でもありません。
盗賊Cは内心で呻きました。
しかし──
「大丈夫よ」
少女がきっぱりと言います。
とても清々しい笑顔で。
少女には魔獣を倒す秘策でもあるのでしょうか……?




