1.脳筋少女、村を出る。
脳みそが疲れていたのです。
細かいツッコミは無しで、頭を空っぽにして読んで下さい。
ある村に可愛らしい女の子がいました。
光を紡いだような金髪、春の空のような瞳、薔薇色の頬。
誰が見ても可憐な少女です。
しかし、少女は脳筋だったのです!
***
「ん? 扉が開かないわね。立て付けが悪いのかしら?」
ガタッガタガタ
玄関の扉が悲鳴をあげています。
不吉な音に父親が部屋から飛び出してきます。
「ちょ、待ちなさい!」
「ふんっ!」
バキィ!!
「うわぁぁ! 今月5回も直した扉が!」
「開いたわ」
「開いたわ、じゃねぇぇぇ!! 娘よ、何故いつも壊す! お前が引き扉を押していつも壊すから押し扉に取り替えたのに!」
「それのせいね」
「何で今回だけ引いた!」
「そういうこともあるわ」
「ぬぉぉぉぉ! 今日という今日は勘弁ならん! 出てけ! 修繕費稼いでこい!」
「わかったわ。父さん、いってくるわね」
少女は手慣れたように旅支度をし、家を出ます。
どうやら、よくあることのようです。
***
村の門には村の自警団員が交代で立っています。
今の時間はパン屋の息子のようです。
眠そうに門にもたれかかっています。
「よう。どうしたんだ?」
「修繕費稼いで来いって言われたの」
「またか……。今月何回目だよ」
「というわけで、いくわ」
「あ、ちょい待て! 今開け──」
バキィィィィ
制止はちょっと遅かったようです。
少女は閉まっている門を思い切り開けてしまいました。
「ぎゃああああ! 今月3回目、村の門壊しやがったー!!」
「開いたわね」
「開いたわねじゃねぇよー!! どうしてくれんだ!もう村の共同費ねぇんだぞ!? 俺の給料から天引きなんだよー!!」
「稼いでくれば問題ないでしょ。ではいくわ」
「俺の給料ーー!!」
青年の悲哀のこもった叫びが空に響きます。
こうして、少女は村を出たのでした。
読んで頂きありがとうございました。