〜森歩〜
鬱蒼と茂る樹々。
光が届かせないほどの、高く育った樹。
左右には海まで生える樹々。
入り口と言えるだけのポッカリ開いた隙間。
そして、この森だけが夜だった。
こう言うのを、
[迷いの森]
そう呼ぶのだろう。
一度入ったら二度と出られない雰囲気を漂わしていた。
森の入り口手前でいったん止まる。
「高・・・」
クリスは見上げる。
「暗・・・」
正面を向いたクリス。
サキは沈黙中。
クリスも沈黙していた。
ようやく沈黙が解除され、口を開いたサキは、
「と、とりあえず行こっか・・・」
そう言って馬を歩かせる。
踏み入れた先は闇。
遠ざかっていく光。
聳え立つ樹々。
サキは踏み入れたときに何かの違和感を感じた。
(あれ? なんでこの森の樹、
こんなにまで育っているんだろう?)
サキの違和感の正体は何だったのだろう・・・
後ろの光が見えなくなったころ、
足元が解る位の光が差し込んだ。
それでもまだ危険があった。
ただ、クリスは危険なんてどうでもよかった。
それは
[暗き場所での恐怖]
それがクリスの脳裏に流れた。
冷や汗が走り、体が震えた。
そして、無意識の内にサキをつかんでいる手、
それを 強く 握り締めた。
「どうしたの? クリス」
クリスの異変に気がついたサキ。
クリスは強く握り締めてた手を緩めて、
「あ、なんでもない」
だんだん小さくなっていく声で言った。
「なんか怖いものでも見たの?」
だが、クリスは何も答えない。
だから、サキも何も言わなかった。
この暗闇はしばらく続きそうだった。
それ故、クリスの恐怖も止む事は無く、
サキの心配も止む事は無かった。




