〜憑走〜
「君たち二人にはこれから、あいつらを追うために東に歩いて南東に向かってもらいたい」
王様はとりあえず、サキにだけそう言った。
サキは王様からの願いを聞き終わると、合わせていた目をそらし、どこか遠くを見始めた。
まるで、西にある城を見つめるように……
「そうですか。ここから西にですか」
サキはつぶやき声でそういった。
「残り少ない兵士を集め総攻撃をしたところで、これ以上の兵士を一瞬で吹き飛ばした君たちには到底戦力が足らない。太刀打ちすらできない。だから、行ってくれるか」
王様は頼みつづけた。
その願いに答えてくれないサキ。
「このとおりだ」
王様が言い終えると部屋は静寂と化した。
その静寂に聞こえるかすかな声。耳を澄ませば
「わかりました」とサキの唇が動いていた。サキの答えは[了解]だった。
「クリス、行くよ」
サキの澄まされた声。その声に反応してクリスが動き出す。
「は〜い」
さっさと準備を済ませて、サキのあとを追うクリス。
早くも二人は急いでいた。何もない血なまぐさい土の上を、何かに取り憑かれたように走るサキをクリスがついて行く形で
「それで、なんでそんなに急いでんの」
急ぐサキに問いかけるクリス
「別に」
それを呆気なく返すサキ
「というかクリス、目大丈夫なの。それでよく走れるよね」
話を反らすように、今度はサキからクリスに対しての問いかけ
「ん? うん。まぁ話せば長くなることだから詳しくは言わないけど」
普通に返すクリス
「着くまで時間はまだまだかかるだろうから聞かせて」
そして、まだまだ走りつづけるクリスとサキ