〜朝話〜
朝
何も知らないサキが隣で寝ている。
何も知らずに寝息を立てている。
(サキにだけは普通、言うよな……)
クリスはサキを起こした。
「早いね、クリス」
「色々考えてたらいつの間にか……
(本当はフェリの話が終わったとき
すでに日が昇ってて、寝るのが面倒なだけだったけど……)
話したい事があるんだ」
サキは眠い目をこすりつつ
クリスはサキのほかの人に聞こえないように小声で
「フェリが、この国を出て行くってさ」
サキは驚いて
「なっ、なんで!?」
クリスはサキの口を押さえて
「声がでかい」
サキは静かになって
「ご、ごめん。でも、どうやって?」
「なんでも、九回目の朝出て行くから、それを手伝えってくれって」
「どんな風に?」
「フェリが出て行ったら、王様がフェリを追えってことになる。
そこで俺達が、フェリを追うと言う
追わせてもらえて、そのまま出て行く
これがフェリの計画」
サキは、昨晩のクリスと同じように
「ばれないの?」
同じ事を聞いた。
「昨日、捕まったでしょ。なんでも、サキがフェリを逃がさぬように
縛っていたのが悪かったみたい」
「私のせいなんだ……」
「だから、王様は俺達を信じてくれるってわけ」
サキは向きを変えて、膝を抱え考えている
(捕まった事が自分のせいだと気づいて、悲しいのかな)
クリスは、膝を抱えるサキを、そんな目で見ていた。
しかし、サキの考えてる事は違った。
「わたしは認めない!」
その声にクリスは驚いた。
「な、何が」
「ここを出て行くことがよ」
クリスは驚きつつ
「なんで認めないの」
サキは訴えるように
「出て行く事即ち、国を捨てることだからよ」
「そんなの俺に言われても」
サキは正気を戻して
「ご、ごめんなさい」
「とりあえず、九回目の朝まで、普通に過ごそう」
サキは頷いた