〜決意〜
四つの大国からなる国『クワトロン』
丸を描いた大陸の東南に位置する『イスダン領』
その中心に位置する城下街『イスダンブルク』
昼は街の人たちの楽しさでいっぱいの愉快な街
夜は誰も居ない、そんな雰囲気を漂わす。
この城下町、イスダンブルクの正体を知ってしまった少年が一人、
背を向けて歩いている。
それも、北や西ではなく、南へと・・・
まるで自殺をしようとしてるかのように
イスダンブルクを南に数キロメートル行った所にある岬
断崖絶壁の崖の上、真っ暗闇の空間、
草花が生える地面に少年は腰を落とす。
そのうち、少年の肩は小刻みに動き始める。
泣いてるのだろうか? 笑ってるのだろうか?
寒いのかは解らない。
この少年の名は〔ネグリス=イスダル〕通称ネイ
王族の子供で何不自由なく暮らしていた。
唯一不自由だったのは、街の人の存在だった。
街へと出かけるたび「殺せ」の掛け声
城を抜け出すのには違う理由があったのだろうか、
それは、ネイにしか解らない。
そのうちネイはつぶやき始めた。
「親父・・街の人・・自分」「親父の正体」「街の人たちの存在」
数時間、いろいろとつぶやいていた。
そして、朝日が見えてきた。
ネイの左頬を朝日が照らす、それに勇気付けられたように
ネイは立ち上がり、朝日へと向く。
「そうさ。
親父さえいなくなれば
街の人もあんな事されていたのを許してくれるはずだ」
そう言ってネイは朝日に背を向けた。
少しずつ昇る太陽の日を背中に受けながら、ネイも
少しずつ歩き続ける。
当てがあるのだろうか。ただひたすらに西へと歩き続ける。
ただ、ひたすらに・・・
草花の生えていた地面は、
涸れた大地に変わっていた。
ここまで歩き続けたネイは一瞬、蜃気楼のような村の姿を目にした。
見つけたと同時に、ネイは疲れが一気に来たようで、その場に倒れこんだ。
〈ドサッ〉
一回だけ響いたネイの倒れこむ音。
ネイは城で過ごしていた日々を走馬灯のように思い出した。
こんなところに居る原因の、昨日の夜の事も。
その走馬灯に浸っていると、後ろから何か聞こえた。
それは、鉄のようなものが地面とこすれる音。
〈ザクッ ザクッ ザクッ〉
その音はネイの近くで止まる。
とたんにネイの体が浮き上がった。
ネイは薄れていく意識の中、さっきまで倒れこんでいた地面
さっきの音の正体、それにまたがる人を見た。