フッたつもりでしたが…。
シゲモンを自宅付近まで送ったあと、私は自分のマンションに戻ってきました。
ん? パーキングの私の場所になにやら黒い物体が・・・。かなりデカくね? なにあれホームレス?
確認の為、車のライトをハイビームにするとホームレス?が顔を上げた。
・・・・・・野々宮君じゃないか! ンなとこで何やってんの!
サラリスラリニコリな美少年をホームレスと勘違いしちゃったよ。本人にはダマっておこう。
「どうしたの、野々宮君!?」
私は車から降りて、座り込んだままのその子の前に屈みこんだ。
「神は死んだ・・・」
なんかどっかで聞いたことある台詞を野々宮君は呟いた(この子私に毒されてない?)
「私、無心論者なんだけど宗教的な相談なのかな?」
「つかささん、あの男だれ?」
「あのおとこ・・・」
「チビでデバラでブサイクなあの男だよ!」
シゲモンのことか。
まあ、確かにシゲモンは背は低く、運動不足で腹が出ており、顔もお世辞にもいいとは言えない。
が、基本礼儀正しいこの子が敵意丸出し・・・・・・って、ああそうか。
シゲモンを私の恋人と勘違いしてるね?
おい、冗談じゃないぞ!
シゲモンが悪いとは言わない。あいつはイイヤツだ。マブダチだ。
が、私の趣味じゃない。背が低くても低所得でもいいが(酷)、ブサブヨ(ブサイクでブヨブヨ)はダメだ。ブサムキ(ブサイクマッチョ)であれば考えてもいいんだけど。
(女友達曰く、私の男の趣味は、かなり低いらしい)
「あれは、茂野・・・なんとかで」
しまった、シゲモンに「あんたの下の名前なんてーの?」って聞いとけばよかった。
(別に失礼じゃない。きっとヤツも私の下の名前なんて忘れてる)
「シゲモン・・・・・・。シゲモンっていう、私の友達なんだけど・・・」
「つかささんとはシゲモン、ヒラリンって呼び合う仲なんだね」
「そういう仲かといえば、そうですが・・・」
別に二人だけ☆の特別な呼び方ってわけじゃないんだけどね。
「つかささんの車に乗ってた。俺も乗ったことないのに」
乗りましたね。ヤツは自前のバックからアニソンのCD取り出して歌いまくってましたよ。
私も一緒になって歌ったが。
「本が増えちゃってね。私じゃ持ちきれないから手伝ってもらったのよ」
「なら俺に言ってほしかったです」
「・・・・・・・・」
他県から高校生を呼び出して、荷物を運ばせる大人ってどーよ?
(土産をエサに、都内のマブダチに有給を取らせるのは、本人も納得しているからセーフ)
しかも、自分に片思いしている未成年だよ?
「それは、出来ないかな」
私はハッキリ言った。もう潮時。
「好意が嬉しい、とは言えないし。ありきたりだけど、キミにはもっと相応しい子がいると思ってる」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「とりあえず、もう遅いし、家まで送ろう」
私は助手席のドアを開けると、座るように促した。・・・・・・・んだけどさぁ。
「わあ。ステキな内装ですね!」
「・・・・・・どうも」
「天井のコレ、なんて言うんですか?」
「サンルーフ」
「顔出していいです?」
「捕まるからダメ」
「じゃあ、なんで付いているんです?」
「・・・なんでだろうね」
泣いたカラスが笑ってやがるよ!
なんだよ、さっきの演技かよ!?
バスケだけじゃなくて、演技も超高校生級!?
「あ、家についたら親に挨拶させます」
「・・・・・・・・・・・」
大人のマナーとして、挨拶すべきなんだろうけど、これって明らかに罠だよなーと思いながら私は高速に乗った。
つかささんは、美形に引くタイプ。
美少年だともっと引くタイプ。