1人は怖い?
『』は英語ってことで宜しくお願いします。
「ちゃんと勉強するから勘弁してください」と春都君に言われたので、ちょっとだけ英語での会話をやめました。
「春都君、私二週間後の水曜日からインドにBusiness tripしてくるから。Souvenirは何がいい?」
「ちょ、ちょっと待ってくださいっ」
いわゆるルー語である。ぶっちゃけ恥ずかしいが、羞恥心を押し込めて使っている。ユー、スタディしちゃいなYO!(コレハチガウ)
重要な単語だけを英語にしているので、春都君は聞き取って、スペルを考えて、電子辞書で翻訳している。そうしないと意味が全然わからないからだ。
「インドに出張! ですねっ。 お土産はインド綿のおそろいのパジャマがいいです!」
こっ恥ずかしい土産をリクエストしてきたが、翻訳がきちんと出来たので買って来てやろうと思う。うん、甘いのは分かってる。
「随分 Progress(上達)したね。駅前留学のTeaching(教え方)がいいのかな」
「・・・・・・つかささん、疲れました。全部日本語でお願いします・・・」
もうギブアップらしい。こうなるとスキンシップで誤魔化してくるので、私は平常運転オンリーに切り替えた。春都君に甘いのは百も承知だ。
私は彼の右腕と左腕にマジックでラクガキをする。
『トイレはどこですか?』
『これなんて言うの?』
「薄くなる前に脳みそに叩き込んでねv」
「わかりました」
これはとても重要! トイレの場所が分からないと困るし、分からない単語は実物を指差して聞けばいいのだ。
「それにしてもインドの出張多くないですか?」
「急激に発展している国だからねぇ」
「IT大国でしたっけ?」
「そう。でも治安とか清潔感はアレなんだよねー。この間インダス川に死体が浮いてたのに、横で行水しているおっさんが居てねぇ」
え? 気付いていないの?って思っちゃったよ。
「・・・俺の留学先、インドじゃなくて良かった・・・」
「アメリカも場所によっちゃ治安悪いからね。まあ、そのあたりは現地で体験しないと分からないし」
「つかささん、大丈夫ですか?」
「ん?」
「本当に・・・一緒にアメリカ来てくれます?」
「1人じゃ怖いーって?」
私がからかうと、春都君はションボリとした顔をした。
「・・・・・1人じゃ怖いっていうか、つかささんが離れそうで怖いです」
「・・・・・・・・・」
なにこの乙男な美青年!?
シリアスなところ申し訳ないが、私は悶えていた。リアル萌えがここにいるよ!
「大丈夫だって。期間は前後するかもしれないけど、私も行くよ?」
「本当?」
ぐっ、かわいいな。青年期に入る狭間の幼い表情が溜まらん可愛さです。
「本当。あっちの知り合いにも、行くことは伝えてる」
「そうなんですか!」
「うん。だから、私に対しての心配は無用。英語とバスケの心配してなさい」
「はいっ」
マリッジブルーならぬ、留学が近づいて少し神経質になっている?
つかさの前だから可愛いフリしているけど、同学年の男子の前だと当り散らしてそうだ。
「トイレはどこですか?」は某テレビ局の某語学講座で毎年の如く教わるフレーズ。生理現象は大事。




