接吻
つかささん、決心した模様。
この子はどこまで大きくなるのか?
いやいや、三週間でそこまで成長しないだろう。と思考を否定した私だけど、沖原までも「でかくなってないか?」と言ってきた。
「また成長期みたいで、この1ヶ月で3センチは伸びたみたいです」
また?
成長期ってまた来るの?
1ヶ月で3センチ? なにそれイリュージョン?
「成長痛、キツくないのか?」
「慣れました」
慣れただと?
私なんて、そんな痛み経験したこともないぞ。
初めて逢った時は美少年だった春都君は、もう美少年ではないんだな、と成田空港の到着ロビーで思った。
今回は空港までマイカーで来ていた私は沖原と別れて春都君と車まで向っていた。
「おい、レポートの締め明後日だからな」と沖原の世知辛い一言がフライトに疲れた身体に追い討ちをかけるぜ。
「つかささん、まっすぐ家にもどります?」
「ん~。書店によってもいい?」
「もちろんです」
春都くんも締め切りも大事だが、オタク心も大事なのだ。
三週間も日本を離れていたら、いろいろ新刊も出ているだろう。
私は服は30分が限界のくせに、書店で1時間半を過ごした。
あ、ゲームとかも置いてる場所だからだよ。
そして自宅。
入り口でコンシェルジェが「上平さん、おかえりなさい」と大きな荷物を持ってきた。
私がニューヨークから送ったものだ。
「俺が運びますよ」
春都君の好意に甘え、荷物を上げてもらう。
台車があるとはいえ、ワインが5ダースに絵が一枚。オタグッズ多数。結構な量だ。
「これ、絵ですよね。つかささん、絵にも興味あったんですか?」
「クリムトとミュシャとビュッフェとベックリンが好きなのよ。今回、以前から欲しかったクリムトの模写のいいのがあったから」
「・・・・・すいません、全部知りません」
「普通知らないから。私に何か贈ってくれるなら、絵葉書にラブレター書いてくれるのが一番かな。飾れるし」
「沢山書きます!」
本当に沢山書きそうだよね・・・。
私は丁寧に絵の梱包を外した。
金色に圧倒される一枚の絵が出てくる。
「これが、クリムトですか?」
女性に覆いかぶさるように男性がキスをしている絵。
男性はクリムト自身であるとも言われているとても情熱的な絵でタイトルは・・・。
「『接吻』っていうタイトルなのよ」
私は春都君に、『接吻』を壁にかけてもらう。
以前から欲しかった絵が、ようやく私の部屋にやってきた。
「ありがとう」
私は、可愛い恋人に『接吻』の前でキスを仕掛けた。
つかささんもね、どこで手を出す(出させる)べきか色々考えていたと思うのですよ。
で、絵を見つけて「丁度いい」と思った次第。
クリムトの『接吻』は実際にある絵です。好き嫌いのある画風だと思う。
ちなみにベックリンの代表作「死の島」の絵葉書でラブレター書いたら呪いの手紙みたいだと思う。




