初戦闘……レベル差のご注意を?
主人公弱。
まあ、頑張った方だね。
きっと強くなってくれる……はず!
目の前にドラゴンがいる。
いやいやいやいや、冒険の最初はスライムとかじゃないんですか?
戦闘すらした事ないのに、どうしろと?
「突っ立てると食われるぞ!」
「え?うわぁ!?」
ライドさんの一喝で、頭から捕食される事は無かった。
もう、逃げても良いじゃないですか!
「しっかり戦え!」
「無理です!」
「なんか、武器とか使えないの~?」
武器?
村の武器屋での事を、思い出す。
たしか、鉄の剣を持ったら……いや、持てなかったか。
持つには持ったが、重すぎて一回も振る事が出来なかった。
なので、宣言する。
「看板なら持てます!」
「……つかえない奴だ」
「役立たず~」
「村人に何を期待してたんですか!?」
村の入り口に突っ立て、旅人が来たら村の名前を教える。
それを毎日の仕事にしていた僕に、何を求めると!?
「なら、邪魔にならないように逃げておけ」
「分かりました!!」
自分でも、凄い速さで動いたと思う。
ライドさんは、怒りをぶつける様に、ドラゴンに向かっていった。
ミアさんは、木の上でジャンプしながら矢を射る。
僕は、木の影に隠れる。
「しょうがないですよね?僕、一回も戦った事無いですし」
自分にいい訳をして、座り込む。
すると目の前に……青くて丸い体をプルプル揺らすスライムが……現れた。
「……………こ、こんにちわ」
僕の挨拶を無視して、襲い掛かってくる。
武器になる物は!?何かないか!?
固めの木の棒が、目に入った。
それを握り、スライムにぶつける。
軟らかい感触が、棒から手に伝わってくる。
スライムが地面でワンバウンドして、お互いに向き合う。
「クッ!戦いなんてやめましょう!お互いの為になりません!」
無駄だと分かっていても、戦闘を回避できないか説得をする。
やはり、その言葉を無視して突っ込んでくる。
それほど速くないが、一般人からしたら結構なスピード。
例えるなら、小型犬が走ってくる速度。
手に持った棒を横薙ぎにして、スライムを吹き飛ばそうとするが、スライムは……ジャンプした。
「な、なん、うぎゃ!?」
額にタックルを喰らって、倒れる。
スライムもぶつかった勢いを利用して、距離をとる。
……………痛い……頭が、クラクラする。
てか、このスライム強くないか?
いや、賢いと言った方が良いのか?
「うっ……こ、これ以上は、やめませんか?僕を倒しても、あの二人にやられるだけですよ?」
痛くて涙出てきた。
多分、今の僕では、このスライムに勝てないので、何とか戦闘をやめさせようとあくまで説得する。
しかし、二人にやられると言った時に、動きが止まった。
理解、しているだと!?
生憎、スライムに口は無いので会話は出来ないが、このスライムの賢さが分かる。
もしかして、助かる?
「確かに、僕は弱いですけど……あっちの二人は、すごい強いみたいですよ?」
僕とスライムの低レベルな戦闘の向こうでは、魔法戦士、弓兵、ドラゴンの高レベルな戦闘がおこなわれている。
時折、雷が落ちたり、爆発したり、矢の雨が降ったり、木が薙ぎ払われたり、ほんとに人間かどうか疑う戦闘を繰り広げている。
スライムは、考えているのか動かない。
襲い掛かってくるかもしれないので、僕はスライムを見続ける。
「どうです?僕を無理して倒すより、もう少し長生きした方が良くないですか?」
するとスライムは、ゆっくりと僕に近付いてくる。
僕の足にくっ付き、上に上がってくる。
攻撃してくるわけではないので、僕は何もしない。
頭に乗った所で、停止する。
何がしたいんだろう?
「あ、あの~何故頭の上に?」
プルプル体を揺らして、何かを伝えようとする。
「え、えっと……一緒に、行く?」
なんとなく言ってみたら、当たりだった様で、だら~んとし始める。
ベタつくわけでもないし、溶かしてくるわけでもないし、むしろ、涼しい。
「……よ、よろしく」
こうして、初めての戦闘を敵を仲間にする事で、乗り切った。
あと、木の棒が僕の武器になった。
ライドさんとミアさんに、殺されないよね?
~合流~
スライムが、仲間になったことを伝えると……
「まあ、いいんじゃないか?魔物を仲間にする奴なんて、始めて見たが……お前の特訓相手としても、丁度良いだろ」
「スベスベ~プニプニ~ふよふよ~スライムって、よく見ると可愛いね~」
意外と受け入れられた。
……良く考えると、皆、僕より強い?
……いいんだよ、所詮、僕は村人だもの。
あ、ドラゴンは逃げたらしい。
こうして、予想外の仲間を連れて、魔王城に向かう。
僕……途中で、死ぬかもしれない。
~スライム~
(平和主義の甘ちゃんだと思ったが、適応力と度胸はある……それに、魔王を倒す事になった元村人の勇者、これほど面白そうな奴と一緒に行かないなどありえん……ライドとミアと言ったか、まだまだ実力を隠しているようだが……さて、リラがどう生きるのか……これから楽しみだ)
実は凄いスライムだという事を……まだ、誰も知らない。
何スライムだよ。
てか、戦闘か?
まあ、良いよね。