かれは木であった
縦長の雲と深い青の空とのコントラストが美しい
引かれる様に歩み寄った大樹の太い根元には、その木の葉が遮って透けるような魅力的な木陰ができていた
かさばった木肌に頬を寄せ、見上げてみれば黄緑の雨
さわさわ語りかけてくる音に耳を澄ませば、偉大なかれの鼓動まで聴こえてきそうで、僕は慌てて目を閉じた
今ふんずけている根っこが被さる土からよいしょと起き上がるのを、見てしまわないように
熱い空気に焼かれ、汗を噴いた肌
滑って顎までいって、落ちた
僕の汗まで吸って、かれは生きるのかな?
かれに取り込まれかれの一部になり生きる僕を想像したとき、その途方もなさに、僕は少しだけ感動した
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