表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

みじかい小説

『みじかい小説』046 / 妻とうどん ~1000文字にも満たないみじかい物語~

掲載日:2025/11/22


妻が風邪を引いた。


高齢者と呼ばれて久しい年齢になり、ひとつの風邪でも寿命が縮む。

私は心配で仕方がなく、妻の寝ているベッドのまわりでうろうろしていた。


すると、「そんなにうろつかれちゃ、治るものも治らないわよ」と病床からぼやきが聞こえた。

妻の声を聞いてどこかほっとしたのだろう、私は「そう言われても」と笑った。


「熱があるんだろう?」

「寝てれば治ります」


看護師だった妻は、病気に対する感度が鈍くなっているのか、誰が風邪をひいたと聞いてもそんなことを言う。


「何か食べたいものはない?」

と私が尋ねると、

「おつゆのおいしいおうどん」

と返ってきた。


まかせておけ!

私は腕まくりをして台所に立った。

しかし、いつも妻が陣取っているテリトリーなので、目当ての鍋ひとつ見つけられない。

仕方なく妻の枕元に行って、「ねぇ、ごめん、片手鍋ってどこにある?」と聞く始末である。

そんなことを数回繰り返して、やっとうどんをゆで上げることができた。

おつゆは2倍濃縮のやつをお湯で割って作った。

仕上げに卵を落として、小葱を散らして完成だ。


「おうどん、できたよ」

と妻に報告したが、聞こえてくるのは深い寝息である。


とその時、ぐぅ。と私の腹が鳴った。


目の前の出来立てのうどんに目がいく。

冷凍庫を確認すると、うどんの在庫はまだある。


「それじゃあ、失礼して」


私は妻を起こさないように、ずるずると勢いよくではなく、ちゅるちゅると小さくすすってうどんを食べた。

きっと明日には妻の熱も引いていることだろう。


いつおなかがすいて起きてきてもいいようにと、妻の分のうどんを新しくこしらえながら、冷え込んできた夜のリビングに、私はひとりストーブをつけるのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ