第4章 - 『逃がさないですよ~、フランクさん♡』
俺はじっとその場に留まり、友人が落ち着くのを待っていた。彼の嘔吐と苦しげな呼吸が聞こえてくる。
そんな俺の静けさを察知したグリミちゃんーは、俺の肺をギュウッと絞めつけ、無理やり空気を押し出し、飛び跳ねるか叫ばせようとした。俺は咳き込み、息を切らしながらも耐えた。
『つまんな~い』彼女はふてくされた声で言いながら、内側から背中を引っかいてきた。
俺の頭はすでに限界で、まともに考えることすらできなかった。そこで俺は悪魔をなだめることにした。『後で付き合ってやるから!なんでも言うこと聞くから、今はちょっと休ませてくれ!』この取引は、あのグレムリンには都合が良すぎたようだ。
『契約成立~』グリミーちゃんとの『遊ぼうの時間』を予約しちまった…クソッ!
「だ、大丈夫…大丈夫だ…」ネルソンのかすれた声が聞こえてきた。
俺は足を引きずりながら近づき、震える手を差し出した。「紳士よ、どうか私に手を貸させてくれ。」
『哀れな奴だ…神にオモチャにされちまって。』俺の方がもっとヤバい状況なのは、考えないことにした。
ネルソンは二度も足をもつれさせながら、ようやく立ち上がった。口を開こうとしたが、すぐに手で覆った。数秒の沈黙の後、やっと絞り出すように言った。「あ、ありがとう…どうやら俺たちは…」
彼は必死に言葉を探した。ホログラムが現れた場所をチラリと見て、ようやく答えを見つけた。「特別な状況…(サンキュー…クソッ、何が起こってるんだ?)」
長年の怪しげなビジネス取引で鍛え上げた、最上級の言葉遣いを駆使して、たった一つの汚い言葉が命取りになるかもしれないと恐れていた。
「まったくその通りです!尊き神によって復活されるのは、まさに 特別 な経験ですね。(クソ、マジでお前の悲鳴で鼓膜が破れるかと思ったぞ)」
『フランクさん、あなたたち適応力高いですね~』グリミーちゃんの甘い声が頭に響く。『スターリンすら騙せそうですね~』彼女はまるで可愛いエルドリッチカラスのように、楽しそうに囀っていた。
『イエス・キリスト、グリミーちゃん、黙れ!』俺は拳をこめかみに押し付け、頭の中から声を消そうとした――だが、むしろ嘲笑がひどくなるだけだった。
ネルソンは深く息を吸い込むと、「まったく、その通りだ」と虚空を見つめながら言い、ゴクリと唾を飲み込んだ。「それは…と、特別な体験だったな。」彼は震えながら自分を抱きしめた。「あの…感触がまだ…(お前には分からねぇよ、まだ骨まで疼くんだよ!)」
震える手を俺の肩に置き、親指がグイッと食い込んできた。
俺たちは、まるでソ連市民がグラグ送りを避けるかのように、丁寧な会話を続けた。その様子を、期待に満ちたバーブーシュカがクスクス笑いながら見守っているような気分だった。
「尊き神は本当に特別だな(あの化け物、マジで怖すぎる)」ネルソンが言った。
「彼が我々に授けてくださる特別な恵みを、心より楽しみにしております。」(あのクソ野郎、絶対呪ってくるぞ)俺はそう言った。
俺たちは、神を心の中でボロクソに言いながらも、こうして会話することで少しずつ落ち着きを取り戻していた――が、
圧倒的な圧力が戻ってきた。空気は冷たく固まり、首にかかる縄のように差し迫った危険が俺たちを締め付ける。
ネルソンは震える声で「やめてくれ…」と呟いた。奴の顔から血の気が引いていくのが見えた。『イエス・キリスト、戻ってきやがった!』
「おやおや、不遜な者が大人しくなっているようだな。」
そして、あの天のクソ野郎が現実の姿を見せやがった。
冷たく嘲るような声が、恐怖に凍りつく俺たちの顔を嘲笑った。
ネルソンはついに失禁した。俺もだ。
奴は存在そのものが純粋な軽蔑を漂わせていた。その目は明らかにこう言っていた――『マジでこんなところにいたくねえ』
俺たちは、ただの迷惑で脳みそ空っぽのヒトデみたいな存在でしかなかった。奴の滴る侮蔑を、ただただ吸収するだけのスポンジだ。
ネルソンは迷わず地面に崩れ落ち、まるでチワワのように震えていた。
『おぉ~!学習してますね~!』グリミーちゃんが上機嫌に囀る。
俺もすぐさま這いつくばり、「コーヒー三日切れ」の震える姿を演じた。
「立て、くだらぬ生き物どもよ。」神の声は、純粋な侮蔑に満ちていた。
ネルソンは、重力に抗うバネ人形のようにグラグラと揺れた。
俺は立ち上がり、敬虔な態度で「尊き神よ、ご慈悲を賜りありがとうございます」と礼を言った。だが、奴は鼻で笑うことすらしなかった。
『このクソ神がよ!』恐怖は次第に怒りへと変わりつつあった。ラテン系の血は、限界を超えると爆発するもんだ。
俺はネルソンに手を差し伸べ、立ち上がるのを手伝った。「さっさと動け、愚かな生き物よ。お前の情けない足掻きを見るために、永遠を無駄にするわけにはいかぬのだ。」
『こいつの問題は何なんだよ?』俺は心の中で吠えながら、ゼリーみたいに震えるネルソンを立たせた。今までこいつの酔っ払いの尻を散々運んできたから楽勝だったが、その震えっぷりのせいで負傷した太ももがズキズキと痛んだ。
神は、まるで時間そのもののような長いため息をついた。「至高なる父の拘束令により…」その名を口にした瞬間、奴の目に怒りが宿ったが、すぐにいつもの軽蔑へと戻った。まるで上司を嫌々話す社畜のように。『おいおい、神も社畜かよ?ヘッ。』
「我らが楽しむため、お前たちに転送先の世界に関する知識とルールを授けねばならんのだ。」神は高笑いした。まるでこの世で最も面白い存在であるかのように。
俺たちの無表情な沈黙は、奴をさらに不機嫌にさせただけだった。
「さらに、無駄に過ごした偽りの現実に基づいたクラスを授けてやる。惨めな人生から派生したスキルと、我が選ぶ祝福と共にな。」
奴の目は、「ぶっ潰してやる」とはっきり語っていた。
「ようこそ、ワールド17へ…」 ホログラムが発した言葉を、奴はまるで強制されているかのように繰り返し、狂犬のように歯をむき出しにした。
神がローブに手を入れた瞬間、俺の中に馴染み深い感覚が走った――かつてのクソみたいな第三世界で培った生存本能が俺を裏切ったのだ。
ギャングが銃を抜くあのかすかなシルエットが、俺の条件反射を呼び覚まし、気づけば神に俺の盗まれやすいスマホを差し出していた。
『ダメだ、ダメだ、ダメだ!』俺の心の叫びをよそに、グリミーちゃんは品のない悲鳴を上げ、興奮でプルプルと震えていた。
俺の顔は死人のように青ざめ、魂が体から抜けかけた――だが、可愛い拷問者がしっかりとそれを引き戻してきた。
『逃がさないですよ~、フランクさん♡』
神は俺を睨みつけた。「説明しろ、下等な生き物よ。」
その言葉は俺の心臓を凍らせた。ネルソンは必死に笑いをこらえている。
『さっきまでビビり散らかしてたくせに?!』俺はネルソンに向かって心の中で吠えた。グリミーちゃんは遠慮なく楽しんでいる。
俺は必死に言い訳ノ術を発動。「そ、尊き神よ、つ、つまらぬ身ではございますが…貢ぎ物を捧げたく存じます!」
神はスマホを一瞥し、手を軽く振っただけで粉々にした。「無価値だ、お前と同じくな。」
不吉な笑みを浮かべ、粉を俺の顔に吹きかけながら続けた。「さあ、大人しくしろ。さもなくば見せしめにしてやるぞ。」
「さて、お前の人生に基づくスキルだ。」神はネルソンを指差した。
「まずは、その笑い虫から始めるとしよう。」
その言葉と同時に、ネルソンの体から肉片が引き裂かれた。彼は歯を食いしばり、悲鳴をあげるまいと必死に耐えた――あのクソ神を満足させないためだけに。
引き裂かれた肉片は黒い球体へと変わり、神はそれを濡れたゴミのように手に取り、黄金の箱へ無造作に放り込んだ。
すると、箱から色とりどりに輝く球体が飛び出し、ネルソンの裂けた傷口に次々と吸い込まれていった。
「たいして痛くねぇよ。」ネルソンはぼそっと言った。
震えは完全に消え、そこにあったのは怒りだけだった。『は?』
だが、神は彼に一瞥もくれず、ネルソンの燃え上がる怒りにまったく気付いていない様子だった。
ジオのコメント
こんにちは、みんな!ついに少しずつ前進してるよ!カメの半歩くらいのペースだけどね!この章で少しでも笑ってくれたなら、それだけで十分さ。笑えなかった?それはアメリアが翻訳をやらかしたせいだ!(冗談だよ)
アメリアのコメント
やっほー!また会えたね!今回の章も、笑いと恐怖が絶妙にミックスされた内容だったでしょ?フランクとネルソンのやり取り、最高だったわね~。あと、あの「特別な存在」…うん、もうアイツに会いたくないわ。ところで、もし翻訳に変なところがあったら…それは全部ジオのせいだからね!私じゃないからね!次回もお楽しみに~!