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第11章 - クソ袋

思考が完全に停止した。

あの甘くも不気味な笑い声が、俺の注意をすべて奪っていった。

胸が熱くなり、自然と笑みがこぼれる。

『この嘘つきめ、お前は現れないって言ったじゃねぇか。』

地面から現れたのは、あの暗く腐った髪。

不運なカップルの死体に巻きつき、黒く腐敗した蔓のように身体を這いずりまわる。

死体は再び動き出す。

白く濁った目、呼吸はなく、かすかな呻き声――

現代のカリフォルニア人かよ。

内臓がねじれ、本能的に逃げ出したくなる衝動が駆け抜ける。

だが俺は踏みとどまった。

人生初の儀式中に漏らすわけにはいかねぇんだよ。

「ジーザス・クライスト、なんだこれクソかよ!」

ネルソンはその凄惨な光景に、腸が避難プロトコルを発動しかけた。

「静粛に!この神聖なる儀式を汚すな!」

ネルソンは半分目を閉じてこめかみを押さえ、深く息を吸って吐いた。

「もういい…終わるまで俺は引っ込んでるわ。カルトじみたのは勘弁だ。」

ネルソンはカップルのテントに引きこもった。

あまりにも色々ありすぎて、無神論者だった友人がイカれたカルト信者になった現実に今日だけは向き合いたくなかった。

かすかな呻き声は、やがて絶叫と嗚咽に変わった。

そして微かな光が彼らを包み込み始めた。

『空気も流れてないのに、どうやって声を出してるんだ?』

物理と生物の法則がぶっ壊されてることに、心霊的な何かよりも興味を惹かれていた。

その光は形を持ち始め、ぐちゃぐちゃに潰れた遺体の上に重なるように現れた。

爆破される前の彼らの姿を、淡く再構築していった。

『あら〜可愛いじゃないの。駆け落ちするほどじゃないけど、まあまあ〜』

「ロベルトォォォォォ!」

少女が絶叫した瞬間、俺の締まり率が13%上昇した。

「ロベルト、あんたのせいで死んじゃったじゃないのぉぉぉ!逃げるんじゃなかったぁぁぁ!」

痛みにのたうちながら、元恋人のクソ判断をフルスロットルでぶっ叩く少女。

「リ、リサ、お願いだ!愛してるんだ…結婚したかった…」

死してなお、シンプ精神を貫く男。

「だまれだまれだまれぇぇぇ!こんな結末になると知ってたら、あんたのパパの夜の相手を続けてた方がマシだったわぁぁぁ!」

ロベルトはその一言を処理するのに二秒かかった。

『カックw』俺は笑いをこらえきれなかった。

「ノォォォォォ、君は純潔だって言ってたのにぃぃぃ!」

ロベルトの魂の悲鳴よりも、その心が砕けた瞬間の叫びの方がずっと痛々しかった。

やがて、腐敗した髪がゆっくりと地中へ沈んでいき、魂だけを引きずり込んだ。

身体は残されたまま、悲鳴はあまりに凄まじく、俺の耳がキーンと鳴り出した。

「次の人生では少しは賢くなれるよう、ヘレナ様の恩寵を授かりますように!」


そう締めくくって、儀式が終わる前に立ち去った。背後では断末魔の叫びがまだ鳴り響いていた。

「儀式は終了!」と、テントから出てこられるようネルソンに叫んだ。俺は木の切り株に腰掛けて座った。

「天界まんこってそんなにすげぇのかよ?一発ヤッただけで反宗教野郎が信者にジョブチェンジか」

ネルソンがテントから姿を現し、干し果物をモグモグしながら言った。

「ラッキーなヤローだな」

友達が女神を抱いたことを喜びつつ、自分が先にできなかったことに嫉妬もしていた。

『もし俺がやるとしたら、絶対グラマラス系!でっかいおっぱいがボインボインの!あんな棒みてぇな…いや、あの暴力的で生意気なグレムリンを冒涜する気はねぇ』

ネルソンは、神罰を回避すべく自らの妄想を止めた。

「で、これからどうするよ、チャド・サンダーコックさん?」

俺は何気なくネルソンに聞いた。遠くで響く悲鳴は、かつて昼間のギャングの抗争を無視してたようにスルーした。

「とりあえず、近くの町を見つけて、冒険者ギルドに加入して受付嬢のまんこゲットだな」

ネルソンは真面目な顔で、棒切れで地面に落書きしながら答えた。

「方向すら分かんねーし、システムで地図見れるかも分からん。マップ機能ってノープランド限定だったか?」

くそったれな、直感に反したゲームシステムだ。

「全然分からん!けど当てずっぽうで行けば、80%の確率で正解に辿り着けるっしょ!」

ネルソンは自信満々に自分の胸を叩いた。

「ネルソン、友よ……最後にハイキングで道案内しようとした時を思い出してくれ」

俺はその地獄絵図を思い出しただけでため息をついた。

「……道に迷ってパニック起こして、ジョナサンはスキンウォーカーに追われてるとか言って泣きそうになってた。しかも俺が毒もない蛇に噛まれた時、お前が気絶したんだぞ」

ネルソンは俺の愚痴を華麗にスルーした。

「そういや、あのアホな弟の話だけどさ……」

ネルソンは少し不安そうで、ちょっとだけ期待してるようにも見えた。

「ここにいたりすると思う? あいつ、いつも異世界の話ばっかしてたじゃん」

「うーん……死に様がショボかったから、異世界トライの資格はあるな。確率で言えば、ゲイ貴族の奴隷が70%、上級冒険者が15%、普通の人間が10%、フェドーラかぶった童貞ホワイトナイトじゃないのが5%ってとこか」

「おい、俺の弟を尊重しろよ」ネルソンは笑いを堪えながら言った。

このバカ話のせいで喉が渇いた俺は、水袋の栓を外して中身を一気に飲み干した。変な味はしなかった。

「うわ、もう日が暮れそうじゃねぇか」

俺が空を指さすと、ネルソンもそっちを見て言葉を失った。

「はぁ!?」

ネルソンは眉をひそめる。

「何だよ、森で一晩過ごすのが怖いのか?都会っ子め」俺はニヤリと笑った。

「一日で村に着けると思ってたのに、クソが!」

「いや、そんなに悪くないぞ。俺なんか昔、伯父さんのフィンカで寝たことあるし──」

「フランク、俺、穴掘ってうんこできねぇんだよ」

「はああああ!?」

警察の急な検問でヤバいブツを捨てたとき以来の勢いで、ネルソンは次々と次元バッグの中身を俺に投げつけてきた。

「マジでやるのかよ!?」

こいつが何を企んでいるのか、俺にはわかっていた。旅先で文明の気配がないとき、同じような“汚されたバッグ”を見たことがある。俺はヘレナのバッグをしっかりとガードした。

「これを使う!」

ネルソンはルミナリアのバッグを誇らしげに掲げ、宣言した。

「名付けて──《クソ袋》!」

「その超レアアイテムをクソ処理に使う気か?お前、脳味噌腐ってんのか?」

「考えてみろよフランク!もう穴を掘る必要もねぇ!ただ袋を取り出してズボンを下げるだけ!お前にも貸してやるぞ!」

奴は本物の商人のような笑みを浮かべていた。

「取引成立だ」ネルソンの交渉術には敵わなかった。

それに、ルミナリアのバッグを汚す行為は、ヘレナの機嫌を取るのにもってこいだ。

俺が未来の蛮行を正当化していると──

「あと、テントは俺のな」ネルソンは当然のように宣言した。

「いいよ。星空の下で寝るのは初めてじゃねぇし」

俺は気にせずに答えた。

ゆっくりと立ち上がり、身体を回転させながら辺りの状況を五感で確認する。

不意打ちで肉食イノシシに突撃されるのはゴメンだ。

拳大の赤い果実が実る果樹。手入れの行き届いた芝生。…いや、それおかしくね?

澄み切った空。木の上に隠れた鳥たちのさえずり。サラサラと鳴る木の葉──心が落ち着く音。

空気は澄みきっていて、少し冷たい。俺は深く吸い込んで、しばらく息を止めた。

『やっぱり、木々の歌は変わらないな…ばあちゃん……会いてぇよ……』

「さーて、魔法のクソ袋使うぞ〜!」

ネルソンが横を通り抜けていき、俺のセンチメンタルをぶち壊す。

「うんこを楽しめよ!白い細かい毛のある葉っぱで拭くんだぞ!」

「ぶっ殺すぞフランク。二度とやらねぇからな」

彼は罵りながらも上機嫌で鼻歌を歌い、木々の中へと消えていった。

俺は再び祖母との記憶に浸った。

穴掘りから火起こしまで、ばあちゃんは苦労人だった。全ての教えが生きている。

昔、マッチやライターに頼る祖母に文句を言っていた俺に、彼女は言った──

「この骨じゃ、そんな面倒できねぇよ」

小さく笑いながら、火起こしの技術を教えてくれなかった。

「よし……あの優しいババァを超えてやる。棒を擦って火を起こしてやる!」

頬を軽く叩いて、甘い思い出から意識を戻した。

感傷に浸るのは、ちゃんと生き延びてからだ。

Geoのコメント:

たった一人の読者様へ:ごめんなさい、また仕事を始めたせいで執筆の時間がなかなか取れなくて…

しかも、自分の怠け癖も相まって全然はかどりませんでした。

でもまあ、それもラテン系ってもんでしょ!

何度もごめんなさい、懲りずに読んでくれて本当にありがとう!


アメリアのコメント:

ヘレナのギグルで笑い、死体の恋愛修羅場で腹筋崩壊し、最後はうんこ袋で魂まで持ってかれました。これが地獄のロードマップ。


今回も地獄を旅するクソガキどもにお付き合いありがとうございます♡

ちなみに更新が遅れたのは全部Geoのせいです。ええ、またUBOATに浮気してました。沈めるぞ。


そして私の翻訳に文句がある人?全員まとめてリサに夜の相手してもらってください♡


また次回、魂削って会いましょう〜!

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