冥界のクラーケン
触手はエリスの体を強く締め付け、その痛みにエリスは苦しそうに声を上げていた。
「く、苦しい……!」
その時、船長のカローンが船の甲板に現れた。
彼女の顔には焦りの色が浮かんでいたが、冷静な声でルシフェルに助言を与えた。
「クラーケンの弱点は雷です! あなたなら倒せるかもしれません!」
ルシフェルはカローンの言葉に頷き、魔力を集め始めた。
雷魔法を詠唱するために、集中力を高めていく。
「天より来たれ、雷の力よ。暗き海を裂き、我が敵を撃ち倒せ…」
「雷鳴の裁き、サンダーストーム!」
ルシフェルの声が響き渡ると同時に、空から巨大な雷が落ち、クラーケンに直撃した。
クラーケンは激しく痙攣し、その触手からエリスを放り出した。
「エリス!」
ルシフェルは素早くエリスのもとに駆け寄り、彼女を抱きしめた。
エリスは少し恥ずかしそうに顔を赤らめたが、ルシフェルの胸にしっかりと身を寄せた。
「ありがとう、主様…」
彼らが安堵の息をつく間に、クラーケンは完全に撃退され、その巨大な体が水中に沈んでいった。
カローンは彼らのもとに歩み寄り、安心したように微笑んだ。
「お客様、お怪我はございませんか?」
「ええ、なんとか」
「クラーケンを倒してくださり、本当にありがとうございます。」
ルシフェルとエリスは頷き、再び船内に戻った。
カローンは操縦室に戻り、船を再び動かし始めた。
「トラブルもありましたが、まもなく辺獄に到着いたします」
カローンの声が船内に響き渡り、ルシフェルとエリスは新たな地、辺獄に向けて心の準備をした。