魔王ルシフェル
暗い森の中、冷たい霧が漂い、木々の影が不気味に揺れている。
その森の中で、俺はぼんやりと立っていた。
「主様…とりあえずこの森を出ましょう。」
エリスの声が静かに響く。
彼女は俺の側に寄り添い、その言葉には緊張が滲んでいた。しかし、突然その緊張が増幅した。
「…誰!?」
エリスの目が鋭く光り、周囲を警戒する。
すると、闇の中から妖艶な声が聞こえてきた。
「あら、魔王ルシフェル。久しぶりじゃない。私の事忘れてないわよね? ちょうどランチの時間なのよ、さっそく殺し合いをしましょう?」
闇の中から現れたのは、長い黒髪をなびかせた獣人の女性だった。
彼女の鋭い目は、まるで獲物を狙う捕食者のように俺たちを見据えていた。
ルシフェル、どうやらそれがこの世界での俺の名のようだ。
「お前は誰だ」
「あら、忘れちゃったの? 残念だわ。私の名はレオネ。体で思い出してもらうしかないわね?」
「主様、お目覚めのところ申し訳ございませんが、戦闘は避けられません!」
エリスの声が緊張に満ちる中、俺はその場の緊張感を感じ取りながらも、内に秘めた力が自然と湧き上がってくるのを感じていた。
「ふん、ならば俺がお前の相手をしてやろう。」
突如、頭の中に魔王ルシフェルの意識が流れてくる。これがこの世界の魔王の力なのか?
周囲には炎のような魔力のオーラが立ち上った。レオネの目が一瞬驚きに見開かれる。
「面白いわね。でも、私に勝てるかしら?」
レオネは挑発的に笑い、鋭い爪を振るって襲いかかってきた。
その動きは獣のように速く、そして力強かった。しかし、ルシフェルは動じなかった。
「エリス、下がっていろ。」
ルシフェルは手を前にかざし、強力な闇の魔法を放った。
その一撃はレオネの動きを止め、彼女を数歩後退させた。
「何て力…!」
レオネは驚愕の表情を浮かべ、さらに激しく攻撃を仕掛けてきた。
しかし、ルシフェルはその攻撃を軽々とかわし、逆に強烈な魔法の一撃を次々と放った。
「これが俺の力だ。」
魔法はレオネの動きを完全に封じ込め、その場に膝をつかせるまで追い込んだ。
「降参だわ……、あなたの力は衰えていないようね。」
レオネは息を切らしながらも、ルシフェルの前に膝をつき、降参の意を示した。
ルシフェルはその姿を見下ろしながら、二人は森の出口に向かって歩き出した。