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息子よ、謝るな。

作者: 夢溟/否定屋

 息子からLINEが来た。 深夜前に。

 

 息子は、21歳に大学を勝手にやめて、家を出た。

 現在30歳過ぎ。 定職につかず、当然結婚もしていない。 元妻のところに身を寄せている。

 数年前に、身内の不幸の時に会ってから、殆どやり取りをしていない。

 そんな息子から、LINEが来た。 こんな時間に。


 見ると、私の時間が空いているかの問い合わせ。

 ドラマだと、この後、重たい内容が来る展開。

 

 少々身構えて、[空いていると]返信する。

 それと、[電話をしようか]とも。

 帰ってきた内容は、電話はしないでほしいと、???何これ?


 謝罪と、何についての謝罪かと、そうなった原因。 

 文脈的に、病気が見つかったようだ。

 問題は、謝罪の内容。


 なぜ、()()()()(息子は中高一貫校)の時からになっている?

 

 確かに息子は不登校が多く、通学(電車1時間)途中から、休ませてほしいと連絡してきたけど。

 けど、それは、イジメられた事も有るから、息子は悪くない。 謝る必要は無い。

 

 大学だって、浪人せずに、医療系の大学に入学。

 入学後も、留年せずに頑張っていた。


 なのに、なぜ謝罪? 中学の時から。 


 返信で、謝る必要は無いと書く。 私の思いも添えて。

 続いて、病気になったのか、いや、持病が見つかったのかと質問する。


 息子からの返信は、持病と言ったらいいのか、わからない内容。 息子も悩んでいる。

 赤血球の大きさが、最低値より小さかったらしい。 1桁分。


 解らない。 判らない。

 息子に、詳しく尋ねる。

 息子は、医者(血液内科)から、赤血球の数が、基準値に達していれば問題無い。 としか、教えてもらってない。 とのこと。

 それと、最低値より小さいのは、10年前にも判明したが、その時は、若いから問題ないと言われたと、書かれていた。


 ここから、息子から怒涛のLINEが来た。

 息子は錯乱しているようだ。

 纏めると、症状は、中高一貫校の時から出てたらしい。

 私に相談しなかったのは、症状がおかしかったから、とのこと。

 その言葉を素直に信じたらいいのか。 だが、否定すると、息子に信頼されてないということになる。


 私は返信をしていない。




 あれから半年過ぎ、職場の同僚から、インターネットから、調べた。


 調べて、愕然とした。

 私は、私達は、血液について無知すぎる。 無関心過ぎる。 こんなに身近なのに。

 そして、息子は今、どうする事も出来無いことも。 

 よっぽどの症状じゃないと、血液に関する症状は、40歳以降じゃないと、何もしてもらえないらしい。


 


 息子にLINEを、 決心が揺らぐ。

 息子にLINEを送る。 会おうと。


 後日、指定場所で、息子を待つ。

 

 息子の姿を、遠目で見つける。 ?おかしい。 シルエットがおかしい。 右手に持っているのは何だ? 何を突いている?


 カツン。 カツン。 と、音が近づいてくる。

 認めたくない現実が、近づいてくる。


 ああ。嗚呼。息子よ。何故、杖を突いている? 30歳代のおまえが。 杖を突くのは、私が先だろ。 前に会った時は、突いていなかったのに。 


 息子と互いに挨拶をする。 お互いにぎこちない。

 挨拶が終わると、息子が、

「親父。 ゴメン。」


 謝るな。

 息子よ、謝るな。

 お前は、悪くない。

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