第3話 トラマツ達との出会い
今回はトラマツ達との出会いです!
「う……」
零夜が再び目を覚ますと、そこはアパートの居間で目覚まし時計がピピピと鳴っていた。時刻は午前6時半だ。
零夜の服も寝巻き姿に戻っていて、カーペットの床、壁紙の天井、更にはテーブルやキッチンという普通のアパートの空間となっていた。
「夢だったのか……けど、それが現実なら俺達は戦わなければならないな……」
零夜は夢で起きた事を真剣な表情で確認した後、すぐに頭を切り替えながら起き上がる。
どうやら彼にはやるべき事があるだろう。
「さてと、今日はプロレスの大会があるな。その前にランニングをして精一杯頑張らないと!」
そう。今日は自身の好きなプロレスの大会がある為、彼はのんびりせずにはいられなかった。
零夜はすぐに布団を片付け始め、そのまま押入れの中に入れておく。それと同時に休日の日課である朝のランニングの準備を始めた。
※
「ほっ!ほっ!ほっ!」
零夜はジャージ姿に着替えた後、アパートを飛び出してランニングをしていた。彼は山口県の出身で就職と共に文京区に住んでいる。
朝日を浴びている街中の並木道を走りつつ、目的地である後楽園ホールの前に辿り着く。
彼は呼吸を整えたと同時に、真剣な表情で前を向く。その目の前には後楽園ホールが建てられていて、風も穏やかに吹いていた。
(ここでプロレスの大会が行われる……俺の憧れの団体であるドリームバトルレスラーズがある以上、俺はその目標に向けて頑張らないといけない。必ず……最後まで諦めずに突っ走るのみだ!)
零夜は数ヶ月前にこの後楽園でドリームバトルレスラーズを観戦していた。特に倫子の活躍に心を打たれていて、自らもこのリングで戦いたいと決断。
今ではサラリーマンの仕事をしつつ、ドリームバトルレスラーズのプロレス道場に通っている生活をしている。
彼が真剣な表情をしつつ、心から自らの夢に向かって突き進む決意をしたその時だった。
「なるほど。君が東零夜だね」
「えっ?」
零夜が突然声のした方を向いていた途端、トラマツとノースマンがいつの間にか姿を現し、彼の元へ近付く。
零夜は若干驚きを隠せずにいたが、すぐに冷静になって彼等の方を向く。
「メディア様から話は伺っているのかい?」
「メディア様……ああ。夢で会った女神様の事か!トラマツとノースマンと聞いていたが、もしかして君達がそうなのか?」
「その通り」
零夜の質問にトラマツは頷きながら答える。彼等は冷静な表情をしていて、自身の目的をそのまま話し始める。
「僕達は君達を探しに来たからね。話の内容はメディア様から聞いていて分かっていると思うけど、この事については……この地球でも説明しないといけないから」
「でも、何処で行うつもりだ?」
「このプロレス大会で」
トラマツが後楽園ホールを指差し、零夜は思わずズッコケてしまう。
地球の皆にも説明しなければならない真剣な展開となっていたが、まさかのプロレス大会で説明する事でシリアス展開が台無しになってしまった。零夜がズッコケてしまうのも無理はない。
零夜はゆっくりと起き上がり、ジャージに付いていた埃を両手でポンポンと払い落とす。
「マジかよ……まあ、良いけどさ……団体に迷惑を掛けるのは止めてくれよ。俺、この道場に出入りしているんだからさ」
「分かっているよ。迷惑になる様な事はしないからね」
「その事については事前に伝えたし、ルールは必ず守るからさ。後で会場で会おうぜ」
トラマツはノースマンの背中に乗った後、彼等はその場から何処かに向かって走り去り、その後ろ姿を零夜は真顔で見ていた。
(彼奴等がどんな説明をするのか気になるが、今は自分にできる事を頑張らないとな。後は嫌な予感がしなければ良いのだが……)
零夜は今後の展開に心から不安の表情になってしまうが、すぐに前を向いて気を切り替える。そのまま自分のアパートの部屋へと帰り始め、自身が通ったコースを走って行った。
※
そしてアパートの一室に帰った後、朝食であるパン、スープ、サラダ、目玉焼きを作り終え、テレビを見ながら食べ始めた。
「なるほどな……また、政界でとんでもない事をしていたのか……」
零夜はテレビを見ながら、真剣な表情でニュースを確認していた。普段のいつも通りの日常だが、この日は何かが起ころうとしている予感がする。零夜は心からそう思いながら朝食を食べ終え、私服に着替えたと同時に持ち物も確認し始める。
(忘れ物はないな。今日の大会では必ず何かが起こる……俺も最初から覚悟はしているからな……だが、夢を叶える為にも諦めないぜ!)
零夜は心から不安になるが、自らの夢を諦めずに立ち向かう決意を固め、すぐにアパートから出る。すると、アパートの大家さんである国平美津代が庭を掃除しているのが見えた。
彼女は三十二歳のバツイチで独身。細身の身体で白のTシャツと黒いストレッチジーンズ、更には赤いエプロンを着用している。寮内では彼女と結婚したい人が多くいるのでモテモテとなっているが、零夜はその中の一人ではないのだ。
「あら、東君。おはよう」
「おはよう御座います」
美津代の笑顔の挨拶に零夜も笑顔で返し、すぐに彼女の元に移動する。美津代は零夜と話をしている時が一番楽しさを感じていて、この事がいつもの楽しみである日課となっているのだ。
「今日はプロレス大会ね。零夜君はプロレスが好きだからこそ、今の貴方がいるんでしょ?」
「ええ。プロレスが無かったら今の俺は無いですからね。自身も夢を叶える為にも、道場に通いながら鍛えています」
零夜の説明に美津代がうふふと微笑んでいる中、アパートの一室から三十代ぐらいの男が姿を現す。黒い短髪で白いTシャツとカーゴパンツを着用しているのだ。
「よう、東。お前、いつも美津代ちゃんと話をしているだろ。仲の良い事だな、オイ」
「栗原さん!俺には幼馴染がいるのですから、嫉妬しないでくださいよ!」
栗原辰巳という男は零夜をジト目で見ながら嫉妬しているが、零夜は慌てながら必死で否定。それに関して美津代は頬を膨らますが、すぐに切り替えて彼に視線を移す。
「まあまあ。落ち着いて。じゃあ、今日も楽しんできてね」
「ええ。では、行ってきます!」
「いってらっしゃーい!」
零夜はすぐに会場である後楽園ホールへ向かい、美津代は手を振りながら彼の後ろ姿を見送る。それと同時に彼女に近付いてきた栗原と談笑をし始めた。
次回は闇サイド。果たしてどうなるのか!?
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